転移魔法に失敗したら大変な事に巻き込まれたようです。

ミカヅキグマ

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学園都市へ!(1)

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 マシューがじゃがいもを潰し終えたので、マヨネーズと具材を混ぜ合わせる。

「と、その前にフレンチドレッシングだ」
「ちょっと、すっぱいやつだね」
「そうそう」

 ヴァージニアがじゃがいもにフレンチドレッシングをかけると、周囲に食欲をくすぐる匂いが漂った。

「いいにおいだね」

 マシューはよだれを垂らしそうになっている。

「あ、冷まさないといけないんだったかな?」
「なまごろしだぁ……」
(また変な言葉を…)

 ヴァージニアはポテトサラダになる予定のじゃがいも放置し、昨晩のスープに具材を足すためにキャベツやウインナーを切った。

(まだ、見てる……)

 ヴァージニアはチラリとマシューを見てから、スープをどうするか考えた。
 どうせならホールトマトも入れて煮込んでみることにした。

「もっと何か入れた方がいいのかなぁ?あ、チーズを乗せてみようかな」

 ここで、ヴァージニアはあることに気付く。

「あっ、マシューの食べ物がじゃがいもまみれだ!」

 昼食にコロッケ、夕食にポテトサラダだ。

「おいもおいしいから、だいじょうぶ」
(じゃがいも少年……)
「栄養が偏っちゃうでしょう?うーん、もうちょっと何か足そうかなぁ?ピーマンは今から間に合うかな。あー、生でも食べられるからいいか」

 ヴァージニアは慌ててピーマンを切り始めた。

「やさいジュースをのめばへいきだよ」
「どこで貰ったの?ギルド?」

 ヴァージニアがマシューに野菜ジュースを与えた記憶はないので、ギルドで貰った以外考えられない。

「そだよ」
「野菜ジュースのお金払ってないや…。明日の朝払わないと」
「おばさんがくれたから、おかねはいいんじゃない?」

 おばさんとは看板娘のことだろう。

「おばさんって言うと怒るから、本人の前で言っちゃ駄目だよ」
「うけいれられないんだね」

 マシューは可愛くない表情で笑った。
 看板娘でなくても怒るだろう。
 ヴァージニアも言われたら怒る自信がある。

「……マシュー、絶対に言っちゃ駄目だからね。あの人、昔は王様に命じられて魔獣討伐に行っていたらしいからね?」
「…わかった。もういわない」

 マシューは真顔になった。
 ヴァージニアはジェイコブとマリリンから聞いたので被害に遭っていないが、前に看板娘に向かっておばさんと言った人は病院送りになったのを見た。

「じゃあ、混ぜるか。マヨネーズと具材を混ぜよう」
「ほしは?」
「これは最後に飾るから混ぜないよ」
「ぼくがやるから、ジニーはおなべみてて」

 ヴァージニアは何か違和感を覚えた。

「…食べちゃ駄目だよ」
「あじみだよ……」

 マシューは目を逸らした。

「図星か」
「なんでバレたんだろ……」
「よだれ垂らしそうだったからねぇ」

 ヴァージニアは鍋の火を止めて、スープを皿に盛り付けチーズを乗せた。
 マシューの様子を見てみると、真面目にサラダを混ぜていた。

「ぼく、これをパンにのせたいな~」

 マシューはチラチラとヴァージニアを見てきた。

「あ、はい…」
 
 マシューの分のポテトサラダは食パンに盛り付け、星型のハムを飾り付けた。
 準備が出来たので、二人は席に着いた。

「いただきます」
「いただきます!」

 二人は夕食を食べ始めた。
 マシューは口を大きく開けて、パンにかじりついた。
 顔に似合わず野性的に食べるなとヴァージニアは思った。

(食べ方を教えるべきかな?だけど、食器はちゃんと使えているんだよね)

 マシューは美味しそうに食べている。

(まぁ、いいか。子どもはみんな、こんなもんでしょう)



 翌朝、ヴァージニアは寝ているマシューを起こそうとベッドに近づいた。
 マシューは半袖にハーフパンツを着て寝ている。
 そして何故か、マシューの三つ編みは彼の目元を覆っている。

(天然のアイマスクかな?)

 三つ編みをどけると、マシューの長い睫毛が見えた。

(羨ましい!…ちょっと触ってみよう)

 ヴァージニアはマシューの長い睫毛をつついてみた。
 触ってみると睫毛には弾力があった。

(えいえい。つついてやる)

 ヴァージニアが睫毛をつついていると、マシューが顔をしかめた。

「んあー!めがー!めがムズムズしたよ!」

 マシューは瞼をパチパチとさせている。

「おはよう。顔を洗ったら治るかもよ」
「そっか!ジニーおはよう!」
(バレてない)

 ヴァージニアはニヤリと笑った。



 朝食をすませ、二人はギルドに向かった。

(マシューが大きくなるまで、こんな感じなのかな?)

 マシューには水筒とコロッケ定食代を持たせている。

「おひるにはかえれる?」
「相手の都合もあるから分からないよ」
「ちかくなのに?」
「そう、近くなのにね」
「はこぶだけなのに?」
「品物の確認もあるからね」
「ふーん。こっそり、おいしいものをたべているのかとおもったよ」

 先日お土産を持って帰ったのに、何故こんな思考になるのだろうか。

「なんでそうなるのかなぁ?マシューも美味しいコロッケ定食を食べてるでしょう?」
「おたがいさまかー」
「そうだよー」

 ギルドに入ると昨日会った剣士達がいた。
 入り口に魔獣使いのアリッサと熊のブラッドがいなかったので、いるとは思わなかった。

「おはようございます」
「おはよう!ブラッドは?」

 マシューはアリッサに駆け寄った。
 マシューはどうやらブラッドを気に入ったようだ。

「おはようございます。ブラッドなら裏庭にいるよ」
「なでてもいい?」
「いいんじゃないかな?」

 マシューはやったーと言いながら裏庭に走って行った。
 アリッサは歩きながらマシューについて行った。

「ジェイコブと合流するまで俺たちが見てるよ」
「助かります。マシューをお願いします」

 ヴァージニアはケヴィン達に礼を言い、受付に向かった。

「おはよう!これを運んでね。後これもね」

 看板娘から紐で縛られ1つにまとめられた2つの箱と、昨日の鑑定魔導具と紙を渡された。

「これも一緒にですか?」
「ええ、同じ研究所だからいいでしょう。部署は違うみたいだけどね」
「分かりました」
「ここら辺の地区で鑑定魔導具のモニター依頼はうちだけだったみたい。他の地区はいくつかあったみたいなのにね」
「まぁ、のどかな所ですから……」

 ヴァージニアが所属しているギルドがある地区はそんなに危険な魔獣は出ない。
 ちなみに、剣士達はフリーランスなのでギルド員ではない。
 売れっ子になるとギルドに所属していなくても依頼が来るのだ。
 依頼者の最寄りのギルドに行って依頼を受けるらしい。

(私には関係ない話だね)

 国に登録すればギルドに所属していなくてもフリーランスでも活動出来、さらに名が売れると国際的に活躍出来るとかなんとか。
 ジェイコブもかなり優秀だが、各ギルドには緊急時に対処出来る人がいないといけないのでギルドに所属している。

「他に荷物はないですよね」
「ええ、ないわよ」
「では、いってきます」
「いってらっしゃい」

 ヴァージニアがギルドから出ようとしたら、足音が聞こえた。

「わー!ジニーまってー!」

 マシューが三つ編みをなびかせてやって来た。

(凄い速さだ)
「どうしたの?」
「ハグしないと!」
「ハグ?ああ、こうね」

 ヴァージニアは少し身を屈めてマシューに抱きついた。

「はい、ぎゅーっとね。どう?これで満足かい?」
「ふふっ!ジニーったら、そんなにぼくと、はなれるのがさみしいの?」

 マシューは目尻が下がっている。

「…マシューから言ったんだよねぇ?」
「ジニーてれてるの?」
「照れてるのはマシューだよね。じゃあ行ってきます」
「はやくかえってきてねー」

 ヴァージニアはギルドを出てすぐに、学園都市に転移魔法テレポートした。


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