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魔法で作る!(1)

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「わっ!だれ?」
「誰でしょう?」
「わー!しゃべったー!」
「そりゃ喋るよ!生きてるんだもん!」

 魔導師の帽子の中から、小さな犬のような生き物が出て来て喋っている。
 ヴァージニアとマシューは驚きを隠せない。

「ほら、挨拶しないと!」

 魔術師が言うと、謎の生き物は魔術師の肩にちょこんと乗った。

「えっと、君は男の子だよね?」
「そうだよ。ぼくはおとこだよ!」

 マシューはいつも通り怒っている。

「ふぅん?綺麗な顔をしているから分からなかったよ」
「え?ぼくきれい?ふふっ」
(マシューは単純だなぁ)

 マシューは褒められて嬉しいらしい。
 怒ったり喜んだり忙しい。

「私はエミリーが作った魔導生物のスージーっていうの!君は?」
「ぼくはマシューだよ!」
「マシューよろしくね!」
「スージーよろしく!」

 魔術師の名前がエミリーで、彼女が作った魔導生物はスージーと言うらしい。

「あの、作ったというのは?」
「ああ!魔力と言うかオーラを練って作ったの」
「練る?」

 ヴァージニアは頭に疑問符を浮かべていたら、剣士と武闘家が苦笑した。

「人によって感覚が違うから、真に受けない方がいい」

 武闘家が言うと剣士が頷いた。

「オーラの性質は人によってサラサラの奴もいればネバネバの奴もいて、それぞれ違うだろ?」

 剣士が説明してくれた。

「ネバネバだったら練りやすそうですけど、サラサラだと難しそうですね」
「そういうことだ。魔導生物を作るのには人によって、オーラをかき混ぜると言ったり、一点に集中させると言ったり全然違うんだ」

 今度は武闘家が教えてくれた。

「参考にならないですねぇ」

 ヴァージニアは想像してみたが、全然分からなかった。
 より不明瞭になった気もした。

「自分のオーラの性質を知れればコツを掴めるんだろうがな」
「私のオーラの性質ってどんな感じなんでしょう?」
「ジニーのオーラはサラサラでもネバネバでもないよ。フツーだよ」
「そうだな。普通だな」

 マシューが言うと剣士が同意した。

「癖がないと言ってやれ」
「あはは……」

 どうやらヴァージニアのオーラは普通の性質のらしい。
 癖がないとも言うらしい。

「魔力量もそこそこ、オーラも普通かぁ」
「ぼくがいるから、だいじょうぶだよ!」

 マシューは胸を張っている。

(何が大丈夫なんだろうか)
「あ、はい…」
「でも、まぁ、転移魔法テレポートが出来るんだからいいじゃないか。かなり移動が楽だろ?」
「えー、空を飛べる人に言われてもねぇ」

 エミリーと武闘家は茶化すように剣士を見ると、剣士は渋い顔をした。

「え?」
「そらをとべるの?」
「まぁな。すぐに疲れるからあんまりやらないが……」
「それでもすごいよ!」

 マシューは頬を赤くして喜んでピョンピョン跳んでいる。
 確かに空を飛べるのは凄い。

 皆でわいわいと話していたら、ギルドの出入り口から女性が顔を出した。

「毒きのこを届けるだけだよね?どうしたの?何かあった?」

 ショートカットの若い女性だった。

「ああ、悪い。毒きのこを運んでくれる人達と話していた」

 どうやら剣士達の仲間のようだ。

「そうなんですか。よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」

 ショートカットの女性が丁寧にお辞儀をしたので、ヴァージニアもつられてお辞儀をした。
 そして何故かマシューもお辞儀をした。

「ねぇねぇどうして、そとにいるの?」

 マシューは一人だけ外にいるのを不思議に思ったようだ。
 実はヴァージニアも気になっていたが、色々な事情があるのかと思い聞けないでいた。
 こういう時、子どもは便利だなぁとヴァージニアは思った。

「それは、こっちに来れば分かるよ」

 ショートカットの女性は笑顔でマシューを手招きしてギルドの外に呼んだ。
 ヴァージニア達もマシューの後ろに付いていった。
 先に外に出て行ったマシューが声を上げた。

「わっ!おおきいのがいる!」

 ギルドの前にはかなり大きな生き物が横たわっていた。

「熊ですか?」
「くま?」
「そうですよ。ただの熊ではなく魔獣ですけどね。私は魔獣使いなんです」

 それで先ほど剣士から使役という言葉が出たのかと納得した。

「さわってもいい?」
「駄目だ」
「わー!しゃべったー!」
(マシュー面白いな)

 熊型の魔獣は地響きがしそうなくらい、とても低い声をしていた。

「さっきから騒がしいガキだな」
「きこえていたの?」
「高い音には敏感なんだよ」

 魔獣使いが教えてくれた。

「ふぅん。それで、なんでさわっちゃダメなの?」
「汚い手で触るな」
「きたなくないよ。ホラ!」

 マシューは熊に両手の平を見せた。

「嘘をつくな。匂いで分かるぞ。そこら辺の物をベタベタ触っただろ」

 熊はとても嫌そうに言った。
 確かにマシューはそこら中の物を触りまくっていたと思う。

「……マシュー、手を洗いに行こうね」
「むぅ…」

 ヴァージニアとマシューは手を洗い、熊の元に戻った。

「小さい子に意地悪しちゃ駄目でしょ!」
「うるさい。頭の上で騒ぐな」

 スージーが熊の頭上に乗り、熊の頭を前足で叩いていた。

「ぼくのためにケンカしないで!」
(やっぱりマシューは面白い)

 マシューは二頭に駆け寄った。

「誰がお前のために喧嘩などするか!」
「マシューお帰り!手を洗ったなら、遠慮なく触っていいよ!」
「やったぁ!」

 熊はスージーに言われるがまま、マシューに撫でられている。
 熊は相変わらず嫌そうな顔をしている。

「おおきいねぇ。ジニーもいっしょにさわろうよ」
「そうそう!貴女もこっち来なよ!」
「では、お邪魔します」

 マシューとスージーに誘われてヴァージニアも熊を撫でた。
 実は撫でてみたかったのだが、言い出し難かったので黙ったままでいた。

「あ…思っていたより固くない……」

 もっとゴワゴワとしていていると思っていた。
 ほどよい固さで気持ちがいいと思いながら、ヴァージニアは熊の背を撫で続けた。

「毎日ブラッシングをしていますからね」
「おおきいから、たいへんだね」

 マシューは両手で熊をワシャワシャと撫で回しており、熊はとても迷惑そうな顔をしている。
 最初は怖いと思ったが、口が悪だけのようだ。

「たまに俺たちも手伝わされるんだ」
「私は魔法でやっちゃうけどね」

 エイミーはニコッと笑い、人差し指を立てくるりと回した。

「ブラッドは嫌がっているけどな」

 武闘家がフッと笑いながら、誰かの名前を言った。

「ブラッドってだれ?」
「俺の名前だ」

 熊の名前はブラッドだそうだ。

「ブラッド、ぼくはマシューだよ。よろしく!」
「知っている」
「私はヴァージニアです。マシューからはジニーって呼ばれています」
「ああ」

 ブラッドは唸るように言った。

「自己紹介がまだだったな。俺はケヴィン、見ての通り剣士だ」
「私はエイミー、魔導師ね。そしてこの子はスージー」
「よろしく!」
「俺はブライアンだ。武闘家をしている」
「私は魔獣使いのアリッサです」
「みんなよろしく!」
「よろしくお願いします」


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