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第12話
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「じゃ、今日はひたすらこれを折りまくりましょう」
清水さんはそう言ってまだ印刷機から出てきたばかりの温かみのある紙束を会議室の机の上にドンと並べてきた。
「おぉ。」
その膨大な量に思わず感嘆が漏れる。
表紙に今年の文化祭ポスターがカラー印刷されたA4のコピー用紙。清水さんが手本に一枚折って見せた。見開きの即席冊子が完成する。中には文化祭の舞台観覧スケジュールと各クラスの出し物が書かれていた。
「これを校門前の受付で来場者さんに配るんです」
本当は文化祭実行委員の仕事なんですけれど....。
「分かった」
「ごめんなさい。雑用みたいなものを押し付けてしまって」
「いや。いいよ。俺、こういう地道に積み重ねていく仕事嫌いじゃないから」
エンドレスで色紙サイン書き殴りとかも昔から、大変だけれど嫌いじゃなかったし。ダンスの基礎トレーニングとかも、疲れるけど同じことを何度もする事は苦じゃなかった気がする。
俺、先の未来に価値ある行動だと思えたらなんでも持続出来る性格しているかもしれない。
「そうなんですか?それなら丁度良かったです」
頑張って折りまくりましょう。
ふぁいとーです!
サラサラな髪を揺らして清水さんが拳を突き上げた。
■■■■■
会議室に俺と清水さんだけの空間が広がる。
俺達は向かい合わせで紙束を挟んで座る。
そして、黙々と2人でA4のパンフレットを半分に折る作業を進めていった。
窓から秋口の生暖かい風が吹き抜ける。教室のレースカーテンが大きく舞った。
誰も何も喋らない。
聞こえるのはどこかのクラスの何かの合奏。そんな音色に乗せるように、清水さんは顔を上げた。
「そういえば...。竹中君?」
「ん?」
俺は折り目と折り目を合わせながら返事を返す。
「もう、体調のほうは大丈夫なんですか?」
きっとあの日の事を言っているんだろう。
「ああ。もうすっかり元気だ」
チラリと彼女の目を見てニッと笑って見せる。
「これ、聞いていいのか分からないのですが...。失礼だったらすみません。もしかして、編入してきた理由、ご病気か何かですか?」
これまで、通信制の高校に通ってたって自己紹介の時に言っていたので...。
まさかそんな質問をされるとは思っていなかった。図星だとバレる訳にはいかない。彼女の前では強い男でいたい。そんなプライドが仮面に仮面を塗りたくっていく。
「ははは。そんな訳ないだろ」
俺は笑って誤魔化した。そして適当に話をでっちあげる。
「あー。普通に親の仕事の都合でこっちに来ただけ。俺の家族、転勤族でさ...」
「あの日は普通に風邪引いててさ....。まぁ、言ってなかったこっちが悪いし.....。あんまり気にしなくて良いから」
また一つ、彼女に嘘を付いた。
「そうなんですね。良かった。私の早とちりですみません」
竹中君が元気ならそれでいいです。清水さんはほっとしたように頬を緩めた。
「全然いいよ。心配かけたみたいでごめん。でも、ありがとな」
俺は清水さんを安心させるために笑顔を見せた。
このまま話を続けると空気が重くなる。それは嫌だな。そんな事を思って俺は違う話題を振った。
「そいや、さ。清水さんって好きな人とかいるのか?」
俺は面白半分に茶化すつもりで尋ねた。
「好きな人?ですか?」
俺の知っている彼女なら『いるとしても、貴方に教えるつもりは無いわ。それに、今は仕事《これ》で手一杯よ。そんな事考える暇もないわ』と答えるに決まっていた。
けれど、今の彼女は少しだけ辛そうに顔をゆがめてうつ向いた。
「清水...さん?」
俺は彼女の反応に戸惑う。
俺の想定内だったら、『好きな人?いるわけないじゃないですか。私はアイドルなので特定の人を好きになんてなりませんよ』
『だよなぁ。悪い悪い』
って場を和ます話題になるはずだったから。
「好きな人...私は...」
清水さんはそう言ってまだ印刷機から出てきたばかりの温かみのある紙束を会議室の机の上にドンと並べてきた。
「おぉ。」
その膨大な量に思わず感嘆が漏れる。
表紙に今年の文化祭ポスターがカラー印刷されたA4のコピー用紙。清水さんが手本に一枚折って見せた。見開きの即席冊子が完成する。中には文化祭の舞台観覧スケジュールと各クラスの出し物が書かれていた。
「これを校門前の受付で来場者さんに配るんです」
本当は文化祭実行委員の仕事なんですけれど....。
「分かった」
「ごめんなさい。雑用みたいなものを押し付けてしまって」
「いや。いいよ。俺、こういう地道に積み重ねていく仕事嫌いじゃないから」
エンドレスで色紙サイン書き殴りとかも昔から、大変だけれど嫌いじゃなかったし。ダンスの基礎トレーニングとかも、疲れるけど同じことを何度もする事は苦じゃなかった気がする。
俺、先の未来に価値ある行動だと思えたらなんでも持続出来る性格しているかもしれない。
「そうなんですか?それなら丁度良かったです」
頑張って折りまくりましょう。
ふぁいとーです!
サラサラな髪を揺らして清水さんが拳を突き上げた。
■■■■■
会議室に俺と清水さんだけの空間が広がる。
俺達は向かい合わせで紙束を挟んで座る。
そして、黙々と2人でA4のパンフレットを半分に折る作業を進めていった。
窓から秋口の生暖かい風が吹き抜ける。教室のレースカーテンが大きく舞った。
誰も何も喋らない。
聞こえるのはどこかのクラスの何かの合奏。そんな音色に乗せるように、清水さんは顔を上げた。
「そういえば...。竹中君?」
「ん?」
俺は折り目と折り目を合わせながら返事を返す。
「もう、体調のほうは大丈夫なんですか?」
きっとあの日の事を言っているんだろう。
「ああ。もうすっかり元気だ」
チラリと彼女の目を見てニッと笑って見せる。
「これ、聞いていいのか分からないのですが...。失礼だったらすみません。もしかして、編入してきた理由、ご病気か何かですか?」
これまで、通信制の高校に通ってたって自己紹介の時に言っていたので...。
まさかそんな質問をされるとは思っていなかった。図星だとバレる訳にはいかない。彼女の前では強い男でいたい。そんなプライドが仮面に仮面を塗りたくっていく。
「ははは。そんな訳ないだろ」
俺は笑って誤魔化した。そして適当に話をでっちあげる。
「あー。普通に親の仕事の都合でこっちに来ただけ。俺の家族、転勤族でさ...」
「あの日は普通に風邪引いててさ....。まぁ、言ってなかったこっちが悪いし.....。あんまり気にしなくて良いから」
また一つ、彼女に嘘を付いた。
「そうなんですね。良かった。私の早とちりですみません」
竹中君が元気ならそれでいいです。清水さんはほっとしたように頬を緩めた。
「全然いいよ。心配かけたみたいでごめん。でも、ありがとな」
俺は清水さんを安心させるために笑顔を見せた。
このまま話を続けると空気が重くなる。それは嫌だな。そんな事を思って俺は違う話題を振った。
「そいや、さ。清水さんって好きな人とかいるのか?」
俺は面白半分に茶化すつもりで尋ねた。
「好きな人?ですか?」
俺の知っている彼女なら『いるとしても、貴方に教えるつもりは無いわ。それに、今は仕事《これ》で手一杯よ。そんな事考える暇もないわ』と答えるに決まっていた。
けれど、今の彼女は少しだけ辛そうに顔をゆがめてうつ向いた。
「清水...さん?」
俺は彼女の反応に戸惑う。
俺の想定内だったら、『好きな人?いるわけないじゃないですか。私はアイドルなので特定の人を好きになんてなりませんよ』
『だよなぁ。悪い悪い』
って場を和ます話題になるはずだったから。
「好きな人...私は...」
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