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第0.1話
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およそ2時間の収録も終盤に差し掛かってきた。
「それでは、最後に日生さんからお伝えしたい事があるそうなので...。お願いします。」
咲菜が司会を俺に合わしてきた。
来た。この瞬間。俺はずっと来ないで欲しいと思っていた。俺の今までの頑張りが塵となって消える瞬間だから。
俺はあえて、この公開収録の日を自分の終わりに選んだ。
ファンの子に間近に会えるチャンスだから。
本当は今度のライブで言うはずだった事。
それが、少し早まっただけのはずがまだ、割り切れてない自分がいた。
すーはぁー。
俺は気持ちを落ち着かせようと深く深呼吸した。
そして、前を向いた。
「皆。今日はこの場を借りてお話したい事があります。本当は今度のライブまで引き延ばしてもらうはずだったんだ...だけど、ちょっと、事情が変わりまして...」
想像はしていたけれど、会場がさざ波のようにざわざわとしてきた。
はぁ。
俺は一気に吐き出すと、その呼吸のまま口を動かした。
「俺、日生遼は今日、4月5日をもって、活動を一時休止します。今まで支えてくれたファンの皆。ごめん。でも、絶対帰ってくるから。それまでは2人に『Cherry’s』を支えてもらおうと思っています。急な、発表になった事、申し訳なく思います。」
―やだぁ!!
―だめぇ!!
優しい批難の声が聞こえる。
「ごめんな。本当に、またこのステージに戻ってこれるように頑張るから。それまで、待っていて欲しい。と、言う事で、この話はお終い。暗い話をしたけど、これは俺たちの未来のためでもあるから。」
「それまで、僕たち2人の事を支えてくれると嬉しいです!」
後ろから、寿がサポートをしてくれた。
「お前ら、遼が帰って来ても不自由を感じないようにふかふかなベッド用意して待っておこう。」
静かに楓真が呟いた。
「ありがとう...。」
俺はこんなに優しくしてくれる俺たちのファンに心が温まった。
「必ず、戻ってくるその日まで、皆、俺の事、忘れるなよ!」
俺はそう元気に拳を空に向かって突き出し、元気いっぱいのまま収録会場を後にした。
司会中の彼女の顔は見れなかった。
顔を合わせると泣きそうだったから。
きっと嘘つきだと怒られるから。
この景色も今日で見納めだ。
俺は、皆に一つ嘘を付いた。
日生遼最大の大嘘になるかもしれない。
一生背負っていく偽りの言葉かもしれない。
―俺が今後、芸能界に戻ってくる事はもうない。次、生まれ変わって転生でもしない限り、そんな未来は描けなかった。―
■■■■■
2年と3か月後。
桜が散って、雨の少なかった梅雨が終わって、せっかちな夏のセミ達が下手くそなメロディーを紡いでいく7月最初の日曜日。
俺はある学校の編入試験を受けていた。
外を見る。
どこかの部活動が校庭を永遠に走っているのが目に留まった。
長い髪を風に靡かせ涼しそうな顔で走る姿は2年前と何も変わっていなかった。
俺は彼女から勝手に借りたやる気スイッチで残りの編入試験問題を解くべく、鉛筆を走らせた。
「それでは、最後に日生さんからお伝えしたい事があるそうなので...。お願いします。」
咲菜が司会を俺に合わしてきた。
来た。この瞬間。俺はずっと来ないで欲しいと思っていた。俺の今までの頑張りが塵となって消える瞬間だから。
俺はあえて、この公開収録の日を自分の終わりに選んだ。
ファンの子に間近に会えるチャンスだから。
本当は今度のライブで言うはずだった事。
それが、少し早まっただけのはずがまだ、割り切れてない自分がいた。
すーはぁー。
俺は気持ちを落ち着かせようと深く深呼吸した。
そして、前を向いた。
「皆。今日はこの場を借りてお話したい事があります。本当は今度のライブまで引き延ばしてもらうはずだったんだ...だけど、ちょっと、事情が変わりまして...」
想像はしていたけれど、会場がさざ波のようにざわざわとしてきた。
はぁ。
俺は一気に吐き出すと、その呼吸のまま口を動かした。
「俺、日生遼は今日、4月5日をもって、活動を一時休止します。今まで支えてくれたファンの皆。ごめん。でも、絶対帰ってくるから。それまでは2人に『Cherry’s』を支えてもらおうと思っています。急な、発表になった事、申し訳なく思います。」
―やだぁ!!
―だめぇ!!
優しい批難の声が聞こえる。
「ごめんな。本当に、またこのステージに戻ってこれるように頑張るから。それまで、待っていて欲しい。と、言う事で、この話はお終い。暗い話をしたけど、これは俺たちの未来のためでもあるから。」
「それまで、僕たち2人の事を支えてくれると嬉しいです!」
後ろから、寿がサポートをしてくれた。
「お前ら、遼が帰って来ても不自由を感じないようにふかふかなベッド用意して待っておこう。」
静かに楓真が呟いた。
「ありがとう...。」
俺はこんなに優しくしてくれる俺たちのファンに心が温まった。
「必ず、戻ってくるその日まで、皆、俺の事、忘れるなよ!」
俺はそう元気に拳を空に向かって突き出し、元気いっぱいのまま収録会場を後にした。
司会中の彼女の顔は見れなかった。
顔を合わせると泣きそうだったから。
きっと嘘つきだと怒られるから。
この景色も今日で見納めだ。
俺は、皆に一つ嘘を付いた。
日生遼最大の大嘘になるかもしれない。
一生背負っていく偽りの言葉かもしれない。
―俺が今後、芸能界に戻ってくる事はもうない。次、生まれ変わって転生でもしない限り、そんな未来は描けなかった。―
■■■■■
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外を見る。
どこかの部活動が校庭を永遠に走っているのが目に留まった。
長い髪を風に靡かせ涼しそうな顔で走る姿は2年前と何も変わっていなかった。
俺は彼女から勝手に借りたやる気スイッチで残りの編入試験問題を解くべく、鉛筆を走らせた。
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