ヤマアラシのジレンマ

宇流

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はる)
ー16年前ー
俺はあの一件以来色んな男の人と関係を持つようになった
人というものは不思議で今まで1人でいる事は当たり前だったのに
1度誰かの温もりを感じてしまうと
1人でいる時の寂しさが浮き足立ってしまう。
もともと俺に興味が無く自由人だった母親に
新しい彼氏ができその男が俺の家に住み着くようになってから
自然と俺は家の居場所を無くしてしまった。
そんな時に俺は身体を差し出しては男の家に入り浸るようになった。
その相手に飽きたら次の主人の家へと転々と渡り歩いていた。
その中の1人が東だった。
東とは前の主人の趣味で真冬に素っ裸で公園に1人散歩をさせられていた時に出会った。
「お前何やってんの?寒無いん?笑」
それが初めて聞いた東の声だった
こっちでは聴き慣れないイントネーションに
ぐいぐいくる感じが新鮮で
俺は東を次の主人として身体を差し出して家に入り浸ったるようになった。
いつもは1か月程で相手に飽きてまた新しい棒を探すのに
東の家にはなんだかんだ3か月程入り浸っていた。
それはシンプルに身体の相性が良かったのもあるが
今までの奴とは違って東は俺に深く踏み込んでこなかった。
俺を抱く日も有れば他の女や男を抱く日もある。
ぐいぐい話しかけてくるくせに俺が触られたく無いとこには
わかってるかの様に踏み込んでこなかった、
そんな東と居るのが楽で俺はずるずるずるずると東の家に入り浸っていた。




そんなある日
「もうええやろ~」
朝起きると東が隣でそう言った
「え?」
「え?とちゃう笑もういい加減出てけよ笑」
「…そのうち」
「お前も分かってんやろ?」
「…」
「このままだらだら一緒に居ても離れられんなるだけやろ。俺は十分君の寂しさは埋めたと思うよ」
「…」
「それにお前もこんなことしてこの先ずっと生きてけるなんて思ってへんねやろ。
ならいい加減普通の人間として真っ当に生きていけ。
お前頭もいいしそれなりに要領もいい。
お前の過去に何があったんかは知らんけど
抱くたびに泣きそうな顔してるお前見てても
俺はなーんも気持ちよう無いねん」
「…」
「あと1か月は泊めたる。その間に次の家決めろ」
「うん。」
東が言っていることがあまりにも正しくて
俺はぐぅの音も出なかった。
1か月後俺は今までの貯金を崩し安いアパートを借り
東の家から出ていった。
「んじゃな~今度こそ独り立ちしせーよ!
あっ!金なくなって死にそうなったらここ来いよ!
それと暇やったらまた抱いたるわ俺ら相性いいやろ笑」
「はいはい笑」
「ほなな」
「…あの、さ!」
「んー?」
「あ、りがとう!」
「は~??笑」
「俺多分東に出会ってなかったらまだクズやってたと思う!だからありがとう!!」
「はははっ!!!おっけーおっけー笑笑
死亡フラグ立ててんな!笑1人でも元気で過ごせよな」
「東も元気で」
「おう」
ガチャ
東は優しい。東は他人とは少し違くて
優しいの中に厳しさを持っていた。
人からあんな風に説教的な事されたのは初めてだし
関西弁がキツくて怖く思えるかもだけど
言っていることは全部俺の事を思っている。
俺はあの東の言葉を聞いて改心し
また勉強を始めて教員免許を取った。
それはまるで俺が出来なかった青春を
もう一度求めているかの様に。

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