ヤマアラシのジレンマ

宇流

文字の大きさ
上 下
15 / 45

14

しおりを挟む
「あの時、俺がヒートを起こしてお前を抱いて
頸を噛んだと理解した時俺は怖いと思ったんだ。
でも心のどこかではお前と番になれた喜びもあった」
「…」
「それでも俺はお前を思う気持ちよりも恐怖心の方が勝った。
お前と番契約を解除した時もういっそ嫌われてしまいたい。そう思う様になった。
だからお前からの再三の電話も無視したし
学校ですれ違っても知らぬふりや悪態をついたをついた」
「…」
「俺はお前に嫌われる事で俺を保とうとしたんだ。」
「…嫌われたいなら最後までそれを貫いて下さいよ。
いつもそう大和さんは中途半端に俺を甘やかす。
今だって嫌われたいと言いながら何故俺にそんなすがる様な顔をするんですか。
鬼になりたいなら鬼になりきってください。
じゃないと俺はいつまでもあなたから抜け出せない」
「自分でも自分が卑怯だと思う。
俺を嫌いになれなんて言って離れようとしても
結局俺もまだお前が好きで嫌われたくないと思っている」
「苦しい」
「え?」
「俺は大和さんを思うといつも苦しくなる
あの日ヒートを起こした大和さんが自我を
失っているのにはすぐに気づきました。
それでもΩの俺ではαの大和さんに争うことは出来ず
そのまま番になった。噛まれた瞬間俺は嬉しかった
これで大和さんともっと一緒に居れる。そう思っていた。だから目が覚めた時横に居るはずの大和さんが居なくて俺は辛かったし恨んでやるって思いました。
でもその後番を解除させられた時に会った
大和さんの顔を見て俺は恨むに恨めなかった。」
「…」
「子供だったんです。俺達は」
「…」
「俺達は互いを好きだと言いながら
本当は自分が1番大事で臆病だったんです」
その言葉を聞いて大和さんはまた頭を抱えて泣いてしまった。
初めて見る大和さんの涙
あの時、両親を連れての話し合いの時
大和さんは目を真っ赤に腫らし
ただ抜け殻の様にずっと下を向いていた。
俺の言いたい事を溜めていた口は
その状況を見て全て飲み込んでしまった。
きっとこの人もこの先俺と同じ様に
苦しむのだと一瞬で分かってしまったから。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

鬼ごっこ

ハタセ
BL
年下からのイジメにより精神が摩耗していく年上平凡受けと そんな平凡を歪んだ愛情で追いかける年下攻めのお話です。

さよならの合図は、

15
BL
君の声。

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

合鍵

茉莉花 香乃
BL
高校から好きだった太一に告白されて恋人になった。鍵も渡されたけれど、僕は見てしまった。太一の部屋から出て行く女の人を…… 他サイトにも公開しています

執着攻めと平凡受けの短編集

松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。 疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。 基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)

あなたが好きでした

オゾン層
BL
 私はあなたが好きでした。  ずっとずっと前から、あなたのことをお慕いしておりました。  これからもずっと、このままだと、その時の私は信じて止まなかったのです。

処理中です...