ヤマアラシのジレンマ

12

いや、でも大和さんは今京都にいて
こんなところに居るはずが無いそう思ったが
驚いたように俺を見る目と
少し甘いタバコの匂いそして
「…はる」
と呼ぶその優しい声で俺はこの人を
"大和さん"だと確信した。
「大和さんがなんでここに」
「え、あぁ仕事の事情でまたこっちで働くことになって」
「そうなんですか」
「あぁ」
「なんか元気そうでよかったです。じゃあ俺はこれで」
そう言って俺が店から出ようとすると
大和さんにパシッと腕を掴まれた。
「いや、なんかその良かったらもう少し話さね？」
「…いいですよ」
そうして俺と大和さんは近くの公園で少し話す事にした。
「なんか本当久しぶりですね」
「最後に話してからもう17年か」
「17年…」
「あのさ」
「？」
「ごめんな」
「…」
「あの時俺」
「もういいですよ」
と笑って誤魔化す俺に
「っ！！なんでなんだよ！！」
そう言って大和さんは俺の胸ぐらを掴む
「なに、がですか？」
「責めろよ！！もっと！俺の事！！」
「…」
「なんでそんな簡単に許すんだよ！！
お前俺の事恨んでねぇのかよ！！」
「今更言ったってもう遅いじゃないですか」
「…俺はお前に責めて欲しいんだよ！！
なんでだって！！殴られてもいいと思ってるんだ！！
なのになんで！お前は」
「それは大和さんが…」
「？」
「大和さんが楽になりたいだけでしょ」
「！？」
「俺は今でも貴方が好きなんです」
「…」
「貴方にされた事を考えれば
自分でも馬鹿だと思うし苦しくもなる」
「っじゃあなんで！！」
「わからない。
それでも俺は17年経った今でも貴方が大和さんが好きなんです」
俺がそう言うと大和さんは今まで掴んでいた俺の胸ぐらを離し
ストンと座り込み淡々と話し始めた。