ヤマアラシのジレンマ

宇流

文字の大きさ
上 下
11 / 45

10

しおりを挟む
俺はタバコを吸いながらすぐ家には帰らず
雨の中少し散歩する事にした。

 ザー
  ザー
何となく気のままに歩いて
辿り着いたのは河川敷の橋の下だった。
そこは俺の罪が生まれた場所
今更何の為にこんな何処へ来たのか
正直自分でも分からない。
わざわざあの日と同じ雨の日に。
まぁでもきっと今のこの雨に打たれて
あの日の罪も全て流してほしいと言う
甘ったれた考えなんだろうなと思った。
しばらく俺はそこでしゃがみ込んでいた。
するといきなり背後に気配を感じて
びっくりして顔を上げると
「先生、こんな事してたらまた風邪ひくよー?」
と桐島君が顔を覗かせていた
「え?」
「え?何そのお化けでも見たような顔ー笑」
「いや、だって今夜中だよ」
「あーまぁでもそれはお互い様じゃん?」
「いやいや、俺はともかく君はまだ高校生でしょ??」
「いーじゃーん、こーやって先生に会えたんだからさー」
「ダメです。親御さんも心配されるでしょ」
「はははっ!!!心配??されてみたいもんだね笑」
そう言って桐島君はケラケラと笑い出す
「…」
「あーぁ、笑った笑った」
「…親御さんと上手くいってないの??」
「うまくもなにもあの人達別に俺に関心ないしただ黙って言う事を聞く都合のいい後継ぎが欲しかっただけだから笑」
「そ、うなんだ」
俺はそうとしか答えられなかった。
「でも今は俺より良い子ちゃんの弟ができたからもう
俺は用済み?てかむしろ邪魔なんだとおもう笑」
「…」
「てか、そんな事より何で先生こんなとこいんの?」
「なんとなく」
「何となくって笑まぁいいけどさ
びっくりしたよ橋の下に誰かしゃがんでると思ったら
愛沢先生なんだから笑」
「君、遠くから誰かも分からずに近づいてきたの?」
「ん?そうだけど?」
「はぁー。そんな危ない事しちゃだめだよ。
たまたま僕だから良かったけど…」
「え!?何先生俺の心配してくれてんの!?」
「そりゃ、教師として生徒の心配するでしょ」

「教師として、かぁ」ボソッ

「??」
「いや、何でも無いよ!」
「じゃあ君の家まで送っていくから早く帰ろ?」
「えー!もうちょっとだけ話そうよ!」
「俺も暇じゃ無いんだけど…」
「コンビニでビールとつまみ買ってる人が何を言う笑」
「え!?」
「それコンビニの袋でしょ??」
「うっ」
「ほらほら、もうちょっとだけで良いからさ!!」
「本当ちょっとだけだからね」
「はいはーい」
そうして俺達は特に何を話すでもなく
お互いの寂しさみたいなものを埋めてるかの様に少しの間側にいた。

AM:4時38分
あたりが少し明るくなり出した頃
「ねぇ、先生~」
「はい?」
「俺と付き合って~」
「しつこい」
「…俺さ結構本気で先生に惚れてんだよ」
「何をいっ」
そう言いかけた時桐島君の横顔は真顔で
とても、茶化したりふざけているようには見えなかった。
「何言ってんだって言いたいんでしょ?笑」
「…」
「歳もこんだけ離れてて教師と生徒って関係で
こんな事言っても先生困らすだけって分かってるけど
俺がどれだけ本気かって言わないと先生見ないフリするでしょ??」
そう言って桐島君は俺に笑いかけた。
そして何故かその笑顔が凄く懐かしく愛おしく感じた。
しばらくの沈黙の後桐島君が立ち上がり
「じゃあもう帰ろっかー?」
っと言って俺に手を差し出す
「あ、ありがとう」
「別に答えが今すぐほしいわけじゃ無い
何年でも何百年でも待つ。だから歳とか立場とかそんな事抜きにして俺の事ちゃんと考えて」
そう言って桐島君は帰っていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺の彼氏は俺の親友の事が好きらしい

15
BL
「だから、もういいよ」 俺とお前の約束。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

黄色い水仙を君に贈る

えんがわ
BL
────────── 「ねぇ、別れよっか……俺たち……。」 「ああ、そうだな」 「っ……ばいばい……」 俺は……ただっ…… 「うわああああああああ!」 君に愛して欲しかっただけなのに……

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

処理中です...