婚約破棄撤回作戦

猫丸

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クリスマスSS:惨劇の雪だるま

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 シャルル・カラントだ。
 みんな、久しぶりだな! 留学先で頑張っていたころの想い出話を今日はしよう。
 
 みんなはご存知だろうか? 異国の風習だが、なんでも赤い服を身に纏った小太りな老齢の紳士が大きな袋を担いで子供たちにプレゼントを贈るのだそうだ。トナカイに乗り、煙突から侵入するという!
 小太りな紳士! しかも老齢!
 トナカイは過積載で大丈夫なのだろうか? 煙突に紳士はつっかえたりしないのだろうか? 煤塗れで屋敷内を歩くのだから使用人たちは翌日大変だろうな。それに、帰りはどうやって煙突をよじ登るのだ!? 凄いな、老齢の小太り紳士! 
 さんたくらうす…といったか、彼の名は……。老体に鞭打ち、見知らぬ良い子の為に駆けずり回るその尊き行い! ぜひ会いたいものだ!

 ……と言うわけで、12月25日の夜、私はマルスと共に暖炉の前で小太り紳士を待つことにした。
「来ないな……」 
「来ませんね」
「せっかく煤払いをし、さんたくらうすのためにご馳走も用意したのだが……」
 マルスと二人、ジッと彼の来訪を待つが、少々飽きてきたな。
「暇…だな」
「暇、ですね」
「外の雪は見事だな」
「ええ…雪だるま日よりですね」
 昨夜から雪が降り積もり、一面冬景色となった。地面が見えないほどだ。
「……暇だな」
「………暇ですね」
「この時期にこんなに降り積もるのは珍しいそうだなぁ」
「そうですね、通常は地面が微かに白くなるぐらいだそうですね」
 二人で窓の外をチラッ、暖炉をチラッと見やる。
「「やるか(やりましょう)!」」
 暇…いや、歓迎の意を込めて、私たちは雪だるま作りの為に夜の庭へと歩き出す。暇をもてあましたわけではない! 絶対にな!

  ──数時間後。
「……ロゼリア様がいる」 
 口をぽっかりとあけた間抜けづらでマルスは私の雪だるまを凝視している。
「我ながら芸術の才能に惚れ惚れしている」
 雪だるまならぬロゼリア像(再会できていないから想像力を駆使した)は完璧だった! 
「…恐ろしいほどの執念。粘着王子の本領発揮すぎて不気味なほどの完成度ですね……怖っ」
「髪の毛の質感を表現するのが苦労したが……女神だ」 
「……(融けたら怖いことに…ボソボソ)」
 マルスが何か呟いているが、きっと賛美しているのだろう!
 ロゼリア、大好きだよ~!!

 
 結論から言おう。
 小太り紳士には会えなかった。
 いや、来たようだが、私は風邪で寝こみ、目覚めたらプレゼントが置いてあったのだ……残念だ。
 そして……
 数日後ようやく起き上がれた私の目には、無惨に融けかかったロゼリアのなれの果てが……

「ロゼリアぁぁぁッ!!」
 私の絶叫が屋敷内に響いていった…

───────────────────
長らく更新せず、大変申し訳ありません! 地獄の業務量(繁忙期)で執筆できず、更に体調不良で書けず、スマホが修理に行き……本当にお待たせいたしました。年末せっせと書きます。
本当にすいませんでした!
仕事納めまで後2日!生きのびるぞ!

 
 
 
 
 
 
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