婚約破棄撤回作戦

猫丸

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6  手紙も禁止!?

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※短いです。

 シャルル・カラント……だ。
 今度は手紙禁止にされた……泣きたい。

「シャル……本当にお兄ちゃんはこんなことを言いたくありませんが……笑ってしまったよ?」
 アーリン兄上はぴらぴらと紙を振る。私がロゼリアに送った手紙の束だ。
「どうしてこんな……こんな……ブハッ!?」
 突然変な声をあげ、兄上は椅子から床へと落ち、ヒィヒィと腹を抱えて転がる。
「──アーリン兄上! シャル、兄上が発作を起こしてしまったではないか…」 
 アーリン兄上を介護しながらエスター兄様の口元もニヤニヤ弛んでいる。
「ごめんなさい……」
「何が笑いのツボかもわかってないくせに男がすぐに謝るな」 
「私はポエムを書いただけなのに……」
「ポッ! ポエムッ……ヒッ……エス、苦しいッ…、シャルル……に…、ヒィヒィッ」
「はいはい。アーリン兄上落ちついて。俺が説明しますから──兄上をお部屋に!」
 エスター兄様の命令で侍従たちが動く。息も絶え絶えなアーリン兄上は彼らに抱えられ部屋を去って行った。
「シャルル……何から突っ込めばいいのかわからんが、ドクダミのようなあなた…何故よりによってドクダミに喩えた?」 
「私の心にはロゼリアしかいないことを書くのにぴったりだと思って……」
 ドクダミは繁殖力が高い。根こそぎとらないとほかの草が生えなくなる。私の心はまさにドクダミロゼリアしか生えていないではないか。
「………蛇のような麗しい君とは、令嬢に蛇を当てはめたのは?」
「本で蛇は地母神の遣いだとあって…愛情深いロゼリアにふさわしいから…」
 エスター兄様は私を見つめ、特大のため息を吐いた。
「………シャルル……ポエムというのはだ、相手を耳障り良い言葉で褒め讃えねば意味がない。蛇だの蜘蛛だの地獄堕ちだの不穏な言葉を散りばめるな! 女なら薔薇とか妖精とか女神とかあるだろうが!! だから悪意に満ちた嫌がらせの手紙を送ったとアンドレア侯爵が怒鳴り込んでくるんだ!」
 怒鳴られたが私にも言い分はあった。
「………魂の叫びを書けばいいって」
 魂の叫びとは素直な想いだろう。こんなもの書いたことがないから、一生懸命考えて書いたのだ。
 だが、エスター兄様は鼻で笑った。
「こんなの令嬢が叫ぶわっ! ついでに兄上も母上も父上も叫んだわっ!」
「だって…、だって……うぅっ」
 難易度の高さに涙がでる。
「泣くな! 留学先では文学の授業を多めにしてやる。それまで人様にポエムは見せるな、書くな、読ますな!」

 こうして、実務的な手紙以外は禁止され、ロゼリアには留学後兄上たちの許可がおりるまではいかなる手紙も禁止された。


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