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第22章 真冬の夜
真冬の夜(1)
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体の芯まで冷えるような日だった。
アルミサッシの窓枠の外では
白い粉がスノーボールの中のように漂っていた。
落ちようとする粉雪が風に煽られて空を舞い上がっているのだった。
雪は明日の朝まで続きますが昼には晴れるでしょう、
交通機関には遅れが見られます、
とラジオのアナウンスの若い女性の声がした。
私はストーブの熱風を左脇に感じながら、
ベットと机の合間に膝を抱え、
頬を膝頭につけ座っていた。
机やたんすの部屋中の引き出しはすべて引き出されて、
ベットの上に置かれている。
ベッドに乗りきらない、
引き出しは畳に置かれている。
それぞれの引き出しは泥棒にかき回されたかのようだった。
乱雑な書類や、
衣類が小山を作っている。
私はベッド脇に寝転んだ。
体を電気カーペットにくっつけて、
左の手をベッドの下に差し込む。
電気カーペットが敷かれていない冷え切った、
ベット下で手のひらを泳がせる。
しかし探しているものは見つからない。
体を起すと、
深深と冷える廊下と、
鉄板のように冷たい階段を小走りで通り抜ける。
玄関の靴箱を空け懐中電灯を取って、
部屋に戻った。
ベッド脇に寝転びベッドの下をそれで照らした。
ベッドの下を照らして体を動かしながら隈なく覗きこんだ。
私は体を起こし懐中電灯を消す。
ふすまをはずされ、
全開になっている押入れに向かった。
押入れの中のたんすの隙間を照らして覗き込んだ。
私は庭に出て、
細い竹の棒を持って家に入った。
玄関で妹と会った。
お兄ちゃんさっきからなに部屋でがたがたしているの?
といぶかしげに聞くので、
私は掃除!
というと妹は眉をしかめる。
竹の棒を持って、
部屋に戻ると、
押入れの中のたんすの隙間につっこむ。
さらに上下に動かしてみる。
私はするすると棒を押入れから出して、
横に出した。
私はがっくりと肩を落して、
しばらくぼんやりしていた。
押入れのふすまを元通りにレールに嵌める。
引き出しを戻そうと、
立ち上がると、
床に出してあった洋服ダンスの引き出しの堅い角に足の指をぶつけた。
かがみこんで痛さに顔をゆがめた。
電気カーペットに座ると床の上に置かれた、
ぶっくりと膨れたボストンバッグに頭を置いた。
涙が頬をつたい、
口に入った。
しょっぱかった。
スグルちゃんお三時よ!
という母の呼び声が聞こえた。
降りていくと、
二郎叔父が遊びに来たので、
一緒にお茶をしようという。
母が薔薇模様のコーヒーカップに入れた紅茶を
甘いにおいをさせながら持ってくると、
妹が叔父さん!
お兄ちゃんたら明日試験なのに部屋の掃除しているのよ!
と言った。
私は明日じゃないよ、
明後日!
荷造りしていたらいろいろ片付けたくなったんだよ!
と言い返した。
私は高校三年生になっていた。
三日前から学校は休みになり、
私は家に帰ってきていた。
明後日の第一志望の受験から始まる何校かの受験の為に、
明日東京の従姉妹の家に行くことになっていた。
二郎叔父が鞄から白砂神社のお守りを出して、
私に渡した。
窓の雪を見て二郎叔父が、
明日バス込むだろうな、
そうだ会社に行くついでに車で送ってやるよ!
と言う。
母が、
スグルちゃんが一週間も泊まるって言ったら叔母さん喜んでいたわ!
叔母さんには男の子がいないからね!
と言った。
私がちっともカステラを食べないのを見て、
二郎叔父がどうしたんだい!?
と聞いた、
うんちょっと食欲無いんだ!
というと二郎叔父と母は驚いた顔をして、
それは大変!
部屋であったかくして寝ていなさいという。
私は部屋に戻った。
もう一度引き出しの中を探したがやっぱり第一志望の受験票が無い。
私はぽかぽかのカーペットに膝をつけてベッドに頭を乗せた。
これが夢ならいいのに、
と布団を涙で湿らせた。
アルミサッシの窓枠の外では
白い粉がスノーボールの中のように漂っていた。
落ちようとする粉雪が風に煽られて空を舞い上がっているのだった。
雪は明日の朝まで続きますが昼には晴れるでしょう、
交通機関には遅れが見られます、
とラジオのアナウンスの若い女性の声がした。
私はストーブの熱風を左脇に感じながら、
ベットと机の合間に膝を抱え、
頬を膝頭につけ座っていた。
机やたんすの部屋中の引き出しはすべて引き出されて、
ベットの上に置かれている。
ベッドに乗りきらない、
引き出しは畳に置かれている。
それぞれの引き出しは泥棒にかき回されたかのようだった。
乱雑な書類や、
衣類が小山を作っている。
私はベッド脇に寝転んだ。
体を電気カーペットにくっつけて、
左の手をベッドの下に差し込む。
電気カーペットが敷かれていない冷え切った、
ベット下で手のひらを泳がせる。
しかし探しているものは見つからない。
体を起すと、
深深と冷える廊下と、
鉄板のように冷たい階段を小走りで通り抜ける。
玄関の靴箱を空け懐中電灯を取って、
部屋に戻った。
ベッド脇に寝転びベッドの下をそれで照らした。
ベッドの下を照らして体を動かしながら隈なく覗きこんだ。
私は体を起こし懐中電灯を消す。
ふすまをはずされ、
全開になっている押入れに向かった。
押入れの中のたんすの隙間を照らして覗き込んだ。
私は庭に出て、
細い竹の棒を持って家に入った。
玄関で妹と会った。
お兄ちゃんさっきからなに部屋でがたがたしているの?
といぶかしげに聞くので、
私は掃除!
というと妹は眉をしかめる。
竹の棒を持って、
部屋に戻ると、
押入れの中のたんすの隙間につっこむ。
さらに上下に動かしてみる。
私はするすると棒を押入れから出して、
横に出した。
私はがっくりと肩を落して、
しばらくぼんやりしていた。
押入れのふすまを元通りにレールに嵌める。
引き出しを戻そうと、
立ち上がると、
床に出してあった洋服ダンスの引き出しの堅い角に足の指をぶつけた。
かがみこんで痛さに顔をゆがめた。
電気カーペットに座ると床の上に置かれた、
ぶっくりと膨れたボストンバッグに頭を置いた。
涙が頬をつたい、
口に入った。
しょっぱかった。
スグルちゃんお三時よ!
という母の呼び声が聞こえた。
降りていくと、
二郎叔父が遊びに来たので、
一緒にお茶をしようという。
母が薔薇模様のコーヒーカップに入れた紅茶を
甘いにおいをさせながら持ってくると、
妹が叔父さん!
お兄ちゃんたら明日試験なのに部屋の掃除しているのよ!
と言った。
私は明日じゃないよ、
明後日!
荷造りしていたらいろいろ片付けたくなったんだよ!
と言い返した。
私は高校三年生になっていた。
三日前から学校は休みになり、
私は家に帰ってきていた。
明後日の第一志望の受験から始まる何校かの受験の為に、
明日東京の従姉妹の家に行くことになっていた。
二郎叔父が鞄から白砂神社のお守りを出して、
私に渡した。
窓の雪を見て二郎叔父が、
明日バス込むだろうな、
そうだ会社に行くついでに車で送ってやるよ!
と言う。
母が、
スグルちゃんが一週間も泊まるって言ったら叔母さん喜んでいたわ!
叔母さんには男の子がいないからね!
と言った。
私がちっともカステラを食べないのを見て、
二郎叔父がどうしたんだい!?
と聞いた、
うんちょっと食欲無いんだ!
というと二郎叔父と母は驚いた顔をして、
それは大変!
部屋であったかくして寝ていなさいという。
私は部屋に戻った。
もう一度引き出しの中を探したがやっぱり第一志望の受験票が無い。
私はぽかぽかのカーペットに膝をつけてベッドに頭を乗せた。
これが夢ならいいのに、
と布団を涙で湿らせた。
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