6 / 14
第2章 バカンス先で恋の予感♪お相手はなんと!!
6、椰子の木陰の美少年
しおりを挟む
バカンスに来て三週間目。
マーシアがそろそろ、帰宅の準備に取りかかりはじめたところだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
夕暮れ時、マーシアは日課の散歩をしていた。
バカンス出発前、鬱っぽかったマーシアは、医者に相談にいった。
医者がマーシアに与えたアドバイスは、毎日自然の中を、一時間程度ウォーキングするというもの。
そこでマーシアは、毎日陽差しが和らいでくると、海岸沿いを一時間ぐらい散歩している。
これはバカンスの初日からずっとだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
マーシアのまとっているドレスは、南国の気候に合わせた、ノースリーブの体を締め付けないスタイル。
足だけは砂が入らないように、リネン製のショートブーツ。
ぎゅっぎゅっと、夕日でオレンジ色に染まった砂を踏みしめながら前に進む。
ざざんざざんと寄せては返す潮騒の音。
海風がマーシアのタイダイ染めのワンピースを、ぶわりと翻す。
マーシアの足元には、ホイップクリームのような波がちらちらと揺れている。
マーシアは宿泊しているコテージから、海岸沿いに30分ぐらい歩いた後、いつものように海岸から少し離れた、ヤシの防風林に赴く。
そこに一休みできるようなベンチがあるのだ。
マーシアが防風林にたどり着くと、マーシアのお供のメイド「ネリィ」が慣れた調子でバックからウェットティッシュをさっと取り出して、ベンチをふく。
マーシアはワンピースの裾をエレガントにつまみ、そこに座った。
メイドもマーシアに促されて隣に座る。
マーシアはこれも医者からアドバイスをされた通りに目をつぶって、両手を太ももの上で合わせてメディテーションを始めた。
「お嬢様。自動販売機で飲み物を買ってきますわ。今日は何をお飲みになります?」
マーシアは
「ではカフェオレをおねがい」
と答えた後、深い瞑想に入った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
医者からやりかたを教わった通りに、ゆったりとした呼吸に合わせて千まで数えたのち、マーシアは「ぱち」と目を開いた。
暗闇に慣れた目には、夕暮れ時の景色もまぶしい。
眼の前の椰子の幹と幹の間から、11、2歳のかわいらしい少年が顔をのぞかせて、マーシアをじっとみている。
肩まで伸びた、暗色のおおきくウェーブした髪。
切りそろえらた前髪のかげで、きらきらと輝く大きなぱっちりとした瞳。
まるお人形のように整った鼻に口元。
一見女の子と見間違えてしまうが、この国の女の子はみな、生まれてから一度も切ったことがないような長い髪をしているはずだ。
この子は男の子だろう。
「あらっ、なんてきれいな男の子」
思わず口元がほころぶのを感じながらマーシアが、
「こんばんは」
とあいさつをすると、少年はひらっと身をひるがえして、去っていってしまった。
マーシアに背を向けて、夕日に向かって駆けていく、少年の均整の取れたスタイルと、躍動感はみごとなものだ。
マーシアは思わず、うっとりとしてしまう。
「お嬢様、ごめんなさい。遅くなってしまって。実は自販機のところで、最近仲良くなった地元の方に引き留められてしまって」
戻ってきたメイドのネリィが、マーシアに、紙パックに入ったカフェオレを差し出す。
「あら? お嬢様ったら、なにニコニコしていらっしゃるのですか? クラーク様との婚約破棄以来、こんなに楽しそうなお嬢様をみるのは初めてですわ」
ネリィにそう不思議がられて、マーシアは
「さっき、とてもかわいい男の子に会ったのよ。あんまりかわいいから、ついニヤニヤしちゃったのね」
ネリィは美少年が大好きで、海外の子役スターのファンクラブに入っている。
マーシアが美少年を見たと聞いて、きゃいきゃいとはしゃぎだした。
「まあ! ! そうでしたの!!
そういえばこの辺りはタラア王家の方々が、よく遊びにいらっしゃるビーチだと聞きましたわ!!
もしかしてその男の子はきっと王子様かもしれませんわね!!
きっとそうですわ!!
あーん、お嬢様ばかりずるい。
私も見たかったのに!
残念ですわ!」
マーシアはネリィの肩をぽんぽんと優しくたたくと
「そうね。もしかして、あの子は王子様かもね。
どことなく気品もあったし。
いいわ、明日も同じ時間にここに来ましょう。
またあの王子様がいらっしゃるかもしれなくてよ」
マーシアがそろそろ、帰宅の準備に取りかかりはじめたところだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
夕暮れ時、マーシアは日課の散歩をしていた。
バカンス出発前、鬱っぽかったマーシアは、医者に相談にいった。
医者がマーシアに与えたアドバイスは、毎日自然の中を、一時間程度ウォーキングするというもの。
そこでマーシアは、毎日陽差しが和らいでくると、海岸沿いを一時間ぐらい散歩している。
これはバカンスの初日からずっとだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
マーシアのまとっているドレスは、南国の気候に合わせた、ノースリーブの体を締め付けないスタイル。
足だけは砂が入らないように、リネン製のショートブーツ。
ぎゅっぎゅっと、夕日でオレンジ色に染まった砂を踏みしめながら前に進む。
ざざんざざんと寄せては返す潮騒の音。
海風がマーシアのタイダイ染めのワンピースを、ぶわりと翻す。
マーシアの足元には、ホイップクリームのような波がちらちらと揺れている。
マーシアは宿泊しているコテージから、海岸沿いに30分ぐらい歩いた後、いつものように海岸から少し離れた、ヤシの防風林に赴く。
そこに一休みできるようなベンチがあるのだ。
マーシアが防風林にたどり着くと、マーシアのお供のメイド「ネリィ」が慣れた調子でバックからウェットティッシュをさっと取り出して、ベンチをふく。
マーシアはワンピースの裾をエレガントにつまみ、そこに座った。
メイドもマーシアに促されて隣に座る。
マーシアはこれも医者からアドバイスをされた通りに目をつぶって、両手を太ももの上で合わせてメディテーションを始めた。
「お嬢様。自動販売機で飲み物を買ってきますわ。今日は何をお飲みになります?」
マーシアは
「ではカフェオレをおねがい」
と答えた後、深い瞑想に入った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
医者からやりかたを教わった通りに、ゆったりとした呼吸に合わせて千まで数えたのち、マーシアは「ぱち」と目を開いた。
暗闇に慣れた目には、夕暮れ時の景色もまぶしい。
眼の前の椰子の幹と幹の間から、11、2歳のかわいらしい少年が顔をのぞかせて、マーシアをじっとみている。
肩まで伸びた、暗色のおおきくウェーブした髪。
切りそろえらた前髪のかげで、きらきらと輝く大きなぱっちりとした瞳。
まるお人形のように整った鼻に口元。
一見女の子と見間違えてしまうが、この国の女の子はみな、生まれてから一度も切ったことがないような長い髪をしているはずだ。
この子は男の子だろう。
「あらっ、なんてきれいな男の子」
思わず口元がほころぶのを感じながらマーシアが、
「こんばんは」
とあいさつをすると、少年はひらっと身をひるがえして、去っていってしまった。
マーシアに背を向けて、夕日に向かって駆けていく、少年の均整の取れたスタイルと、躍動感はみごとなものだ。
マーシアは思わず、うっとりとしてしまう。
「お嬢様、ごめんなさい。遅くなってしまって。実は自販機のところで、最近仲良くなった地元の方に引き留められてしまって」
戻ってきたメイドのネリィが、マーシアに、紙パックに入ったカフェオレを差し出す。
「あら? お嬢様ったら、なにニコニコしていらっしゃるのですか? クラーク様との婚約破棄以来、こんなに楽しそうなお嬢様をみるのは初めてですわ」
ネリィにそう不思議がられて、マーシアは
「さっき、とてもかわいい男の子に会ったのよ。あんまりかわいいから、ついニヤニヤしちゃったのね」
ネリィは美少年が大好きで、海外の子役スターのファンクラブに入っている。
マーシアが美少年を見たと聞いて、きゃいきゃいとはしゃぎだした。
「まあ! ! そうでしたの!!
そういえばこの辺りはタラア王家の方々が、よく遊びにいらっしゃるビーチだと聞きましたわ!!
もしかしてその男の子はきっと王子様かもしれませんわね!!
きっとそうですわ!!
あーん、お嬢様ばかりずるい。
私も見たかったのに!
残念ですわ!」
マーシアはネリィの肩をぽんぽんと優しくたたくと
「そうね。もしかして、あの子は王子様かもね。
どことなく気品もあったし。
いいわ、明日も同じ時間にここに来ましょう。
またあの王子様がいらっしゃるかもしれなくてよ」
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
婚約破棄を伝えられて居るのは帝国の皇女様ですが…国は大丈夫でしょうか【完結】
繭
恋愛
卒業式の最中、王子が隣国皇帝陛下の娘で有る皇女に婚約破棄を突き付けると言う、前代未聞の所業が行われ阿鼻叫喚の事態に陥り、卒業式どころでは無くなる事から物語は始まる。
果たして王子の国は無事に国を維持できるのか?
身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~
湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。
「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」
夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。
公爵である夫とから啖呵を切られたが。
翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。
地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。
「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。
一度、言った言葉を撤回するのは難しい。
そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。
徐々に距離を詰めていきましょう。
全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。
第二章から口説きまくり。
第四章で完結です。
第五章に番外編を追加しました。
第一王子と見捨てられた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
アナトール公爵令嬢のマリアは婚約者である第一王子のザイツからあしらわれていた。昼間お話することも、夜に身体を重ねることも、なにもなかったのだ。形だけの夫婦生活。ザイツ様の新しい婚約者になってやろうと躍起になるメイドたち。そんな中、ザイツは戦地に赴くと知らせが入った。夫婦関係なんてとっくに終わっていると思っていた矢先、マリアの前にザイツが現れたのだった。
お読みいただきありがとうございます。こちらの話は24話で完結とさせていただきます。この後は「第一王子と愛された公爵令嬢」に続いていきます。こちらもよろしくお願い致します。
女王は若き美貌の夫に離婚を申し出る
小西あまね
恋愛
「喜べ!やっと離婚できそうだぞ!」「……は?」
政略結婚して9年目、32歳の女王陛下は22歳の王配陛下に笑顔で告げた。
9年前の約束を叶えるために……。
豪胆果断だがどこか天然な女王と、彼女を敬愛してやまない美貌の若き王配のすれ違い離婚騒動。
「月と雪と温泉と ~幼馴染みの天然王子と最強魔術師~」の王子の姉の話ですが、独立した話で、作風も違います。
本作は小説家になろうにも投稿しています。
P.S. 推し活に夢中ですので、返信は不要ですわ
汐瀬うに
恋愛
アルカナ学院に通う伯爵令嬢クラリスは、幼い頃から婚約者である第一王子アルベルトと共に過ごしてきた。しかし彼は言葉を尽くさず、想いはすれ違っていく。噂、距離、役割に心を閉ざしながらも、クラリスは自分の居場所を見つけて前へ進む。迎えたプロムの夜、ようやく言葉を選び、追いかけてきたアルベルトが告げたのは――遅すぎる本心だった。
※こちらの作品はカクヨム・アルファポリス・小説家になろうに並行掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる

