友達

Yoshinaka

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友達

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初対面ではその他数名の少女の一人だった。
きっとみんな私なんかにすぐ愛想を付かすに決まっている。
そう思った。
案の定、半年後、皆口をそろえて言った。
「YOSHIは愛想が無さすぎる。」
「無口でつまらない。」
そして離れていった。
たった一人を除いて。

それが「彼女」だった。

「彼女」は私の側にいた。
私なんかの側にいるよりも、他の子と一緒にいればいいのに。
片言の言葉しか話せない、東洋人の
しかも無口で無愛想。
そんな最悪の私なんかと一緒にいてどこがいいのだろうか?
私は待った。
「彼女」が私の側から離れるのを。
早くそうして欲しい。
そのほうがせいせいする。

友達ごっこなんてもうたくさん。
日本を離れるときに思い知らされた。
小学校では私を敬遠していたくせに。
私がイギリスに行くとなった途端に
急に愛想が良くなった。
そんな輩をたくさん見てきた。
それが友情ではなくて
イギリスというブランドに憧れただけの
いわば利用目的に過ぎないのなんてみえみえだった。
それでも馬鹿な私はちょっぴり期待した。
でもやっぱり相手の魂胆は直ぐに手紙の文面に表れた。
私のことよりも、イギリスのことを知りたがっていた。
やっぱりな、と思った。
もう誰も信じてやらないから、と誓った。
だから「彼女」も離れていく。
そう思っていたのに、
「彼女」は私の隣に座ってぼんやりと遠くを見つめていた。
無理に話さなくてもいいよ、と言われているみたいだった。
言葉なんてろくに通じなかったけど。

ちょっぴりだけなら信じてみよう。
少しだけなら信じてみよう。
大体なら信じてもいいかな。

こんなかんじで私は徐々に「彼女」に
打ち解けていった。
もうおそらく自分には決して出来るはずのないと諦めていた
友達とはこんな感じなのかな・・・。
なんだか不思議な感じ。

今まで、同い年の子と居るとひたすら気疲れするだけだったのに、
「彼女」といると時間がなんだかうそのように過ぎていく。
もっと「彼女」と笑っていたい。
一緒にいるだけで安心する。
こんな感じって初めて。
ぎこちない言葉の壁もあんまり苦にはならないほど。

だから破局が来たのが信じられなかった。
「彼女」はちょっぴり皮肉に笑い、
私が良い子ちゃんでなくなったなんて信じられる、と言って
タバコをすぱっと吸って見せた。
まだ14歳のクセに、と
日が明るく差し込める女子トイレで、私は唖然として「彼女」を見つめた。

私も良い子ちゃんでなくなったら
「彼女」と友達のままでいられるのかな、と正直何度も悩んだ。
でも、私は根っからの良い子ちゃんだった。
不良になんてなれなかった。
一度だってタバコは吸えなかった。
じきに「彼女」は私から離れていった。

結局不登校になり、
私は現地校から日本人学校へと編入した。

そこからすったもんだを経て
私は日本人の友達を作れた。
言葉が思い通りに通じて
決してタバコを吸わない友達。

現地校を去るとき、
真面目になるよ、と「彼女」は言ったけど
私はついに許してあげなかった。
信じてあげなかった。
「彼女」とはそれっきり。

あれからかなり月日が流れた。
さらに私もかなり試行錯誤したから
今ならそう思うことができる。

「彼女」はやはり私の思い出の友達。
人生で最初に
「友達っていいもんだよ」と
教えてくれたかけがえのない人。
話す言葉は違うけれど。
肌の色や目の色、国籍人種違うけれど。

今頃「彼女」はどうしているのかな。
真面目な「彼女」に戻っていたらいいな。
良い子ちゃんって案外悪くないものだよ。
それはかなり長い間悩んででた私の人生訓。
それからタバコは止めていて欲しいな。
あれは健康に悪いから。
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みんなの感想(1件)

大林和正
2023.12.03 大林和正

子供の頃は俺も彼女の様な
ただ一緒に居るだけの友達でした
こちらから話しかけて友達になり
何も求めない
ただ一緒に居るだけ
何を考えてるか?
知りたいですよね
何も考えてないです
本能で好きな友達とただ一緒に居るだけ
俺は真面目人間だから彼女とは違うかも知れませんが昔を思い出しました
不思議なヤツだった子供の頃です
ありがとうございます😊
すみません🙇作者の意図と全然違うか知れませんが、のめり込んだので感謝したくて感想書きました🙇

Yoshinaka
2023.12.03 Yoshinaka

感想コメントありがとうございます
友達って不思議な存在ですよね
本能で居心地の良い相手と一緒にいて、それだけで楽しい。
当時の彼女がどんな気持ちだったのか、今は知るよしもありませんが、ただ一緒にいるだけで楽しい時期があったのは紛れもない真実。
苦い結果だったけど、ひとつの思い出です。

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