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宿に戻ると食堂に人が集まっていた。
とうやら顔合わせ中のようだ。
ジュリアの姿もあるので寝坊はしなかったらしい。
彼女の番はまだみたいだったから、さりげなく彼女の後ろに移動した。
どうでも良いけど、勇者と聖女の候補って顔が良いのばかり選んでるのかしら?
自己紹介を軽く聞き流していると、お腹がすいているルーナがわたしの胸を前足でフミフミしてくる。
ルーナのごはん頂戴の合図だ。
もうちょっと待っててね。
ほら、次はジュリアの番よ。

「ジュリアです。ココ村から来ました。よろしくお願いします」
「レティシアです」

頭を下げると、周りの視線はわたしの腕の中でフミフミしているルーナに集まった。
ルーナ、いつまでしてるの?
それにしてもどうしよう。
ただの飼い猫として紹介した方が良いのかな?
でも、ジュリアは知ってるから、嘘をついてるって騒がれそうだし……ここは正直に伝えよう。

「この子はわたしの従魔です」
「まぁ、レティシアったらその獣を連れて来ていたの?これから王都に行くのよ。そんな穢れは連れて行けないわ」

ルーナがフミフミを止めて喉を鳴らし始めた。
穢れと言われて不機嫌になっているみたい。
落ち着かせるために背を撫でる。

「………ちゃんと躾てるし、わたしの言うことは聞くわ」
「そう言うことを言ってるのではないのよ。だいたいーー」
「従魔を連れて行くのは問題ありませんよ」
「エドアルド様!?」

ジュリアの言葉を遮ったのは、王国の紋章入りの鎧を着た騎士だった。
たしか名前はエドアルド・セレスティ様で、第三騎士団の団長だと言ってたような気がする。

「王都にも従魔師はいますし、我々騎士団にも何名か所属しています。この子は従魔の首輪をしているので問題ありません」
「……そうですか。エドアルド様がそうおっしゃるなら」

どうやらこれ以上ジュリアに責められる心配はないようだ。
それにしても、騎士団長をファーストネームで呼んでも良いのかな?
彼は伯爵家の出だって言ってたから貴族でもあるのよね。
本人が何も言わないしわたしが気にすることでもないけど。
なにわともあれ助かったので騎士団長に頭を下げておいた。
彼は軽く瞠目したあと、わたしの頭をポンポンとして少し笑った。

「その子、お腹が空いてるんじゃないか?」
「えっと……はい」

ずいぶん口調が砕けた気が……聖女候補と付き人の差かしら?
ルーナ、フミフミ止めなさい。
いつの間にかフミフミが再開していた。

「では、食事にしましょう。二時間後に馬車に集合してください」
「「「はい」」」

団長の言葉にそれぞれ食事をするため動き出したが、わたしはジュリアに拒否されたので離れた場所に座った。
しばらくして頼んだ食事が来たのでルーナと分けながら食べる。
費用は国持ち、つまりタダなので遠慮なく食べた。

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