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冒険者~始まり~
迫る危険
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牢に連れて来られたフェリーチェたちは、先客に話を聞く事にした。
一応、パーティのリーダーであるガイが聞く事になり、先客たちの中の恰幅の良い男が疲れた顔で答えてくれた。
「済まないが話を聞きたい。俺はガイ。冒険者だ。こっちの2人とパーティを組んでいる」
「私はフェリーチェです」
「僕はアルベルト」
「私はブランカで商いをしているヤハルと申します。この者たちは私の家族と店の従業員です。そちらの子どもたちは?」
「あ~……そっちは俺たちもまだ聞いてなかった。悪いが今後のために教えてくれるか?」
ガイが一緒に連れて来られた4人に話しかけると、獣人族の男の子が答えた。
「お、オレはグレイ。オレたちも冒険者で4人でパーティを組んでる」
「ボクはニック」
「わたしはエルよ」
「わたしロナ」
グレイとロナは獣人族でニックとエルは人族だった。
パーティのリーダーはグレイのようだ。
「ヤハル……さんは、どうしてここに?」
「ヤハルで構いませんよ。私どもは隣町から戻る途中で盗賊に襲われました」
「盗賊か……他に捕まってる奴はいないのか?」
「ここには私どもだけです。ですが、奥にまだ牢があるようなので分かりません」
「そうか。グレイたちは何であそこにいたんだ?」
「オレたちは子守りの依頼であそこに行ったら捕まって」
「俺たちと一緒か」
重苦しい沈黙の中、フェリーチェが念話で話しかけた。
{奥に反応があるよ。たぶん、他の捕虜だと思うけど。それと、一番奥に大きい魔力反応があるよ}
{本当だ。この大きさは魔物かな?}
{しかし厄介だな。他にいると連携が取れない}
{取り敢えず、連絡しとこうよ。……アル}
{そうだな。分かってる事だけでも報せておこう。なぁ……アル}
{……しないとダメ?}
{{ダメ}}
連絡するのを渋っていたアルベルトは、観念したのかクロードに通信を入れた。
{と、父様~}
{どうしたアル}
{あのね……ほ、報告ーー}
{分かっている}
{え?}
{ファウスト家に喧嘩を売った者がいるんだろう?}
{えっ~と……ちょっとちがーー}
{そこにいるのか?}
{う、うん。でもっーー}
{安心しろ。お前たちの居場所は把握している。良いか、自分たちだけで片付けるなよ?そいつはファウスト家全員の獲物だからな}
{全員!?父様、話をーー}
{すぐ出発する}
通信を切られたアルベルトは、フェリーチェとガイにクロードとのやり取りを話した。
{お父様が全員って言ったの?}
{うん。僕の話は全く聞いてなかったよ}
{とにかくルイスに連絡した方が良いだろ。一応、相手は盗賊なわけだし}
{捕虜もいるし、お父様たちが間違って攻撃するかも}
{父様には僕が連絡したんだから今度はガイがやってよね!}
{……分かったよ}
嫌そうな顔でガイがルイスに通信を入れると、ルイスはちゃんと話を聞いてくれた。
{まったく、貴方たちはどうして次から次に巻き込まれるんですか}
{好きで巻き込まれてるんじゃない}
{状況は分かりました。クロードにはオースティンたちに付いてもらってますから、彼に私から説明しておきます。貴方たちは、できるだけ大人しくしていて下さい}
{善処はするが、約束はできないぞ}
{貴方たちや捕虜に危険がある場合は構いませんよ。逐一連絡して下さい}
{了解}
ガイはルイスとのやり取りをフェリーチェとアルベルトに話した。
念話を終えた3人が視線を感じてそちらを見ると、さっき話した時より若干離れているヤハルとグレイたちが引き吊った顔で自分たちを見ていたので、不思議に思ったガイが聞いてみた。
「どうして離れてるんだ?」
「いえ……」
「べ、別に」
「何かあるなら言ってくれ。気になるだろ」
ガイの言葉にヤハルとグレイが顔を見合わせると、ヤハルが恐る恐る口を開いた。
「で、では……失礼ですがガイ殿たちは何かご病気があるのですか?」
「「「病気?」」」
「い、いえ先程からなにやら様子が」
「様子?特に病気はないが」
「あんたら馬車の中でもだけど、無言で見つめ合いながら笑ったり落ち込んだり睨み合ったりしてた。正直……え~っと……」
「不気味だった」
「ちょっとニック!」
「心の病気」
「ロナ!」
酷い言われようである。
しかしヤハルたちも同じ事を思っているのか、しきりに頷いている。
フェリーチェたちは、グレイたちの言葉に少なからずショックを受けたが、表には出さずヤハルたちに説明する事にした。
「驚かせてすまん。家族と友人に連絡を取ってたんだ」
「家族と友人ですか。しかし、どうやって連絡を?」
「魔道具を使ってな」
「そんな魔道具が?しかし……」
「本当に連絡したのか?魔力が封じられてるから魔道具は使えないだろ」
「グレイくんの言う通りです。その枷をしている限り魔力は使えないでしょう?」
「あぁ、これなら無効にしてるから魔力は使えるぞ」
「「……は?」」
「やっぱり病気?」
「ちょっとニック!」
「妄想癖」
「ロナ!」
酷い言われようである。
しかもまたヤハルたちも頷いている。
フェリーチェたち3人は、口元をヒクつかせながらそれぞれ人差し指に小さな火を灯した。
それを見たヤハルたちは、目を見開きその火を凝視している。
「本当に無効化されているのですね。しかしそれなら何故、抵抗されなかったのですか?」
「……もしかしてオレたちがいたからか?」
「いや、やろうと思えばお前たちも無傷で助けられた。だが、奴等の正体も目的も分からなかったからな。だからお前たちには悪いが抵抗しなかった」
「そういえば、あの女がB級冒険者って言ってた」
「そうだった。それに確か貴族って言ってた」
「うん。確かに言ってたよ」
「ファウスト家」
「ファウスト家ですって!?」
「「「「???」」」」
ファウスト家と聞いて驚くヤハルたちに、グレイたち4人は困惑して顔を見合わせた。
どうやらファウスト家の事を知らないようだ。
「ヤハルさん、何でそんなに驚くんだ?」
「グレイくんたちは知らないのですか?ファウスト家は公爵家て、当主のクロード様は宰相をされているのですよ」
「「「「え!?」」」」
ヤハルの言葉に驚いた4人がガイを見ると、ガイは苦笑しながら補足説明をした。
「ファウスト家なのはフェリとアルだけだ。俺は……俺って何になるんだ?執事か?護衛か?それとも子守りか?」
「子守り言うな!」
「執事兼護衛かな?でもガイも家族だよ」
「ありがとうフェリ。と、いうことで俺は執事兼護衛だ」
「そ、そうですか。では、先程連絡されていたのはファウスト家なんですね。友人と言うのは?」
「あぁ、ルイスだ」
「……聞き違いでなければルイスと聞こえましたが」
「ルイスだ」
「国王陛下の補佐をされているルイス様でしょうか?」
「ん?そのルイスだ」
「ルイス様が友人……そうですか」
しばらく遠い目をしたヤハルは、気を持ち直したのかガイに質問した。
「でしたら私どもは助かるのでしょうか?」
「それがな~正直、このままだと危険なんだよな」
「な、何故ですか!?」
「助けは来ないのか?」
「いや来るには来るんだが、その助けに来る連中が危険なんだよ」
「「はぁ?」」
‘助けに来る者たちが危険というのはいったい……’と思い困惑するヤハルたちをよそにフェリーチェたちの話は続く。
「皆が来る前に脱出しないと、巻き込まれる可能性があるよね」
「王都から来るから時間はあるけど、急いだ方が良さそうだね」
「うん」
「あのな2人とも、時間はないと思うぞ」
「「何で?」」
「お前たちが転移できるようにしただろ」
「「……あ」」
「クロードならブランカに来たことがあるだろうし、あそこに転移したとしてここまで来るのにそう時間はかからないだろう」
「どど、どうしようガイ!」
「そういえば父様、居場所は把握しているって……さっきの広間に転移して盗賊たちを始末する?」
「それは止めた方が良くないか?クロードたちが来た時、獲物がいなかったら矛先がどこに行くか分からないぞ」
「「た、確かに」」
話し合いをしているフェリーチェたちに、ヤハルが遠慮がちに声をかけた。
「あの~よろしいでしょうか?」
「何だ?」
「今の会話から察するに、皆様は転移できる手段があるのですよね?」
「ありますよ」
「それがどうかしたの?」
「でしたら捕虜全員で安全な場所に転移してはどうでしょうか?それなら盗賊も気付かないでしょうし、ご家族のえ、獲物も残せます」
「「「……………あぁ!」」」
ヤハルの提案を聞いた3人は、少し考えた素振りをしたあとポンッと手を叩いて頷いた。
「その手があったね。転移で皆を移動させれば良かったんだ」
「殺す方が楽だから思い付かなかったよ」
「だな。殲滅して捕虜を逃がすより、獲物を残してた方が説教が短くなるはずだ」
「そうと決まれば他の捕虜を助けて速く逃げようよ!」
「まずは一ヶ所に集めた方が楽だ。手分けしてやるぞ」
そのやり取りを見ていたヤハルたちは同じ事を思っていた。
(((((だ、大丈夫なんだろうか……)))))
フェリーチェたちが動き出そうとした時、牢に近付く複数の足音が聞こえた。
黙って様子を伺っていると、数人の男たちが現れ何人かはフェリーチェたちがいる牢を素通りして奥に向かって行く。
「全員出ろ!お頭がお呼びだ!」
「もたもたしてんじゃねぇ!」
「おら!立て!」
フェリーチェたち3人は、出鼻を挫かれイライライラしつつも大人しく牢を出て歩き出した。
連れて来られた場所には、盗賊はもちろん他の捕虜らしき姿もあり後ろからも捕虜が数人歩いて来ていた。
フェリーチェは‘お頭’と呼ばれていた男の横に見覚えのある顔を見てアルベルトに聞いてみた。
{アル、お頭の横にいる男の人って昨日ブランカで会ったよね?}
{え?う~ん……もしかして荷物運びの店の?}
{そう!私たちを追い返した人だよ}
{ここにいるって事は、盗賊の仲間だよね。じゃあ、あの荷物って……}
{どうしたんだ?}
{ガイ、実はーー}
フェリーチェとアルベルトが、ガイに説明していると盗賊の頭が喋りだした。
「今回はこれで全部か?」
「ヘイ!男が25人と女が30人、子どもが15人ですぜ」
「今回は冒険者が7人で、内1人はB級2人は貴族っすよ!B級の奴は貴族と組んでるっす!」
「そうだったな。おい!奴隷商はあとどれくらいで来る?」
「そおっすね~1時間位じゃないっすか?」
「余興するには良い時間だな。貴族は誰だ?立て」
2人は迷う事なく立ち上がり、アルベルトがフェリーチェを庇うように前に出た。
盗賊たちはニヤニヤしていて、頭が2人に話しかけた。
「お前ら何級なんだ?」
「昨日登録したからE級だけど」
「そうかそうか。なぁ貴族様、俺から一つ提案があるんだが」
「何?」
「そう怖い顔するなよ。ちょいと賭け試合をやらねぇか?」
「賭け試合?」
「そうだ。2人が勝てばここにいる全員を解放してやる。だが負ければ……年寄りと赤子は奥にいる俺のペットの餌だ」
頭の言葉に、年寄りと赤子の家族らしき者たちは短い悲鳴を上げた。
常識的に考えれば昨日登録したばかりのE級の冒険者が盗賊に勝てるとは思わないし、貴族の冒険者は金で昇級するという話もある。
ヤハルたちは絶望的な目でフェリーチェとアルベルトを見ていた。
しかし、当の本人たちは全く逆の思いを抱いていた。
{ナイス提案!さっさと終わらせて避難しよう}
{ペットって何だろう?一応、ヤハルさんたちに結界張るね。ガイ、いざとなったら皆をお願いね}
{分かった。こいつ等が言った事を守るとは思えないからな}
念話をしているフェリーチェとアルベルトが怯んでると思った頭は、笑いながらグレイたちを見た。
「何なら、そっちの冒険者のガキどもでも良いぞ?あぁ、そんなガリガリじゃあ戦えないよな?そうだ!この貴族様を殺してもらおうか」
「何をっ!?そんな事できるか!」
「何故だ?殺せば全員解放してやる。そのなりからしてお前等は孤児だろう。殺せば金を恵んでやるし、俺たちの仲間にしてやってもいいんだぜ?」
「「「「!?」」」」
頭の言葉に、グレイたちは唇を噛み締め震えていた。
他の捕虜たちからすれば、貴族の子どもが盗賊に勝つよりグレイたちが貴族の子どもを殺す方が成功する可能性がある。
全員の視線を浴びながら、4人は顔を上げ頭を睨み付けグレイが答えた。
「断る!確かにオレたちは孤児だし金もない!けど、それをやって助かってもシスター……母さんを悲しませる。弟たちにも顔向けできない。だからっ……だから断る!」
「ご立派なこった。だったらせいぜい、貴族様を応援するんだなぁ!」
盗賊たちがフェリーチェとアルベルトに向けて武器を構えた。
捕虜たちは身を寄せ合い緊迫した空気が漂う中、呑気な声が響いた。
「ねぇ~僕たちも武器と魔法を使っても良いの?それとも使わない方が良いかな?それくらいハンデをあげなきゃ直ぐ終わっちゃいそうだしね~」
「……あぁ?良い度胸だ!だったらハンデをもらおうじゃねぇか!」
アルベルトが見下すように言った言葉に、盗賊たちは一気に殺気立ち襲いかかった。
一応、パーティのリーダーであるガイが聞く事になり、先客たちの中の恰幅の良い男が疲れた顔で答えてくれた。
「済まないが話を聞きたい。俺はガイ。冒険者だ。こっちの2人とパーティを組んでいる」
「私はフェリーチェです」
「僕はアルベルト」
「私はブランカで商いをしているヤハルと申します。この者たちは私の家族と店の従業員です。そちらの子どもたちは?」
「あ~……そっちは俺たちもまだ聞いてなかった。悪いが今後のために教えてくれるか?」
ガイが一緒に連れて来られた4人に話しかけると、獣人族の男の子が答えた。
「お、オレはグレイ。オレたちも冒険者で4人でパーティを組んでる」
「ボクはニック」
「わたしはエルよ」
「わたしロナ」
グレイとロナは獣人族でニックとエルは人族だった。
パーティのリーダーはグレイのようだ。
「ヤハル……さんは、どうしてここに?」
「ヤハルで構いませんよ。私どもは隣町から戻る途中で盗賊に襲われました」
「盗賊か……他に捕まってる奴はいないのか?」
「ここには私どもだけです。ですが、奥にまだ牢があるようなので分かりません」
「そうか。グレイたちは何であそこにいたんだ?」
「オレたちは子守りの依頼であそこに行ったら捕まって」
「俺たちと一緒か」
重苦しい沈黙の中、フェリーチェが念話で話しかけた。
{奥に反応があるよ。たぶん、他の捕虜だと思うけど。それと、一番奥に大きい魔力反応があるよ}
{本当だ。この大きさは魔物かな?}
{しかし厄介だな。他にいると連携が取れない}
{取り敢えず、連絡しとこうよ。……アル}
{そうだな。分かってる事だけでも報せておこう。なぁ……アル}
{……しないとダメ?}
{{ダメ}}
連絡するのを渋っていたアルベルトは、観念したのかクロードに通信を入れた。
{と、父様~}
{どうしたアル}
{あのね……ほ、報告ーー}
{分かっている}
{え?}
{ファウスト家に喧嘩を売った者がいるんだろう?}
{えっ~と……ちょっとちがーー}
{そこにいるのか?}
{う、うん。でもっーー}
{安心しろ。お前たちの居場所は把握している。良いか、自分たちだけで片付けるなよ?そいつはファウスト家全員の獲物だからな}
{全員!?父様、話をーー}
{すぐ出発する}
通信を切られたアルベルトは、フェリーチェとガイにクロードとのやり取りを話した。
{お父様が全員って言ったの?}
{うん。僕の話は全く聞いてなかったよ}
{とにかくルイスに連絡した方が良いだろ。一応、相手は盗賊なわけだし}
{捕虜もいるし、お父様たちが間違って攻撃するかも}
{父様には僕が連絡したんだから今度はガイがやってよね!}
{……分かったよ}
嫌そうな顔でガイがルイスに通信を入れると、ルイスはちゃんと話を聞いてくれた。
{まったく、貴方たちはどうして次から次に巻き込まれるんですか}
{好きで巻き込まれてるんじゃない}
{状況は分かりました。クロードにはオースティンたちに付いてもらってますから、彼に私から説明しておきます。貴方たちは、できるだけ大人しくしていて下さい}
{善処はするが、約束はできないぞ}
{貴方たちや捕虜に危険がある場合は構いませんよ。逐一連絡して下さい}
{了解}
ガイはルイスとのやり取りをフェリーチェとアルベルトに話した。
念話を終えた3人が視線を感じてそちらを見ると、さっき話した時より若干離れているヤハルとグレイたちが引き吊った顔で自分たちを見ていたので、不思議に思ったガイが聞いてみた。
「どうして離れてるんだ?」
「いえ……」
「べ、別に」
「何かあるなら言ってくれ。気になるだろ」
ガイの言葉にヤハルとグレイが顔を見合わせると、ヤハルが恐る恐る口を開いた。
「で、では……失礼ですがガイ殿たちは何かご病気があるのですか?」
「「「病気?」」」
「い、いえ先程からなにやら様子が」
「様子?特に病気はないが」
「あんたら馬車の中でもだけど、無言で見つめ合いながら笑ったり落ち込んだり睨み合ったりしてた。正直……え~っと……」
「不気味だった」
「ちょっとニック!」
「心の病気」
「ロナ!」
酷い言われようである。
しかしヤハルたちも同じ事を思っているのか、しきりに頷いている。
フェリーチェたちは、グレイたちの言葉に少なからずショックを受けたが、表には出さずヤハルたちに説明する事にした。
「驚かせてすまん。家族と友人に連絡を取ってたんだ」
「家族と友人ですか。しかし、どうやって連絡を?」
「魔道具を使ってな」
「そんな魔道具が?しかし……」
「本当に連絡したのか?魔力が封じられてるから魔道具は使えないだろ」
「グレイくんの言う通りです。その枷をしている限り魔力は使えないでしょう?」
「あぁ、これなら無効にしてるから魔力は使えるぞ」
「「……は?」」
「やっぱり病気?」
「ちょっとニック!」
「妄想癖」
「ロナ!」
酷い言われようである。
しかもまたヤハルたちも頷いている。
フェリーチェたち3人は、口元をヒクつかせながらそれぞれ人差し指に小さな火を灯した。
それを見たヤハルたちは、目を見開きその火を凝視している。
「本当に無効化されているのですね。しかしそれなら何故、抵抗されなかったのですか?」
「……もしかしてオレたちがいたからか?」
「いや、やろうと思えばお前たちも無傷で助けられた。だが、奴等の正体も目的も分からなかったからな。だからお前たちには悪いが抵抗しなかった」
「そういえば、あの女がB級冒険者って言ってた」
「そうだった。それに確か貴族って言ってた」
「うん。確かに言ってたよ」
「ファウスト家」
「ファウスト家ですって!?」
「「「「???」」」」
ファウスト家と聞いて驚くヤハルたちに、グレイたち4人は困惑して顔を見合わせた。
どうやらファウスト家の事を知らないようだ。
「ヤハルさん、何でそんなに驚くんだ?」
「グレイくんたちは知らないのですか?ファウスト家は公爵家て、当主のクロード様は宰相をされているのですよ」
「「「「え!?」」」」
ヤハルの言葉に驚いた4人がガイを見ると、ガイは苦笑しながら補足説明をした。
「ファウスト家なのはフェリとアルだけだ。俺は……俺って何になるんだ?執事か?護衛か?それとも子守りか?」
「子守り言うな!」
「執事兼護衛かな?でもガイも家族だよ」
「ありがとうフェリ。と、いうことで俺は執事兼護衛だ」
「そ、そうですか。では、先程連絡されていたのはファウスト家なんですね。友人と言うのは?」
「あぁ、ルイスだ」
「……聞き違いでなければルイスと聞こえましたが」
「ルイスだ」
「国王陛下の補佐をされているルイス様でしょうか?」
「ん?そのルイスだ」
「ルイス様が友人……そうですか」
しばらく遠い目をしたヤハルは、気を持ち直したのかガイに質問した。
「でしたら私どもは助かるのでしょうか?」
「それがな~正直、このままだと危険なんだよな」
「な、何故ですか!?」
「助けは来ないのか?」
「いや来るには来るんだが、その助けに来る連中が危険なんだよ」
「「はぁ?」」
‘助けに来る者たちが危険というのはいったい……’と思い困惑するヤハルたちをよそにフェリーチェたちの話は続く。
「皆が来る前に脱出しないと、巻き込まれる可能性があるよね」
「王都から来るから時間はあるけど、急いだ方が良さそうだね」
「うん」
「あのな2人とも、時間はないと思うぞ」
「「何で?」」
「お前たちが転移できるようにしただろ」
「「……あ」」
「クロードならブランカに来たことがあるだろうし、あそこに転移したとしてここまで来るのにそう時間はかからないだろう」
「どど、どうしようガイ!」
「そういえば父様、居場所は把握しているって……さっきの広間に転移して盗賊たちを始末する?」
「それは止めた方が良くないか?クロードたちが来た時、獲物がいなかったら矛先がどこに行くか分からないぞ」
「「た、確かに」」
話し合いをしているフェリーチェたちに、ヤハルが遠慮がちに声をかけた。
「あの~よろしいでしょうか?」
「何だ?」
「今の会話から察するに、皆様は転移できる手段があるのですよね?」
「ありますよ」
「それがどうかしたの?」
「でしたら捕虜全員で安全な場所に転移してはどうでしょうか?それなら盗賊も気付かないでしょうし、ご家族のえ、獲物も残せます」
「「「……………あぁ!」」」
ヤハルの提案を聞いた3人は、少し考えた素振りをしたあとポンッと手を叩いて頷いた。
「その手があったね。転移で皆を移動させれば良かったんだ」
「殺す方が楽だから思い付かなかったよ」
「だな。殲滅して捕虜を逃がすより、獲物を残してた方が説教が短くなるはずだ」
「そうと決まれば他の捕虜を助けて速く逃げようよ!」
「まずは一ヶ所に集めた方が楽だ。手分けしてやるぞ」
そのやり取りを見ていたヤハルたちは同じ事を思っていた。
(((((だ、大丈夫なんだろうか……)))))
フェリーチェたちが動き出そうとした時、牢に近付く複数の足音が聞こえた。
黙って様子を伺っていると、数人の男たちが現れ何人かはフェリーチェたちがいる牢を素通りして奥に向かって行く。
「全員出ろ!お頭がお呼びだ!」
「もたもたしてんじゃねぇ!」
「おら!立て!」
フェリーチェたち3人は、出鼻を挫かれイライライラしつつも大人しく牢を出て歩き出した。
連れて来られた場所には、盗賊はもちろん他の捕虜らしき姿もあり後ろからも捕虜が数人歩いて来ていた。
フェリーチェは‘お頭’と呼ばれていた男の横に見覚えのある顔を見てアルベルトに聞いてみた。
{アル、お頭の横にいる男の人って昨日ブランカで会ったよね?}
{え?う~ん……もしかして荷物運びの店の?}
{そう!私たちを追い返した人だよ}
{ここにいるって事は、盗賊の仲間だよね。じゃあ、あの荷物って……}
{どうしたんだ?}
{ガイ、実はーー}
フェリーチェとアルベルトが、ガイに説明していると盗賊の頭が喋りだした。
「今回はこれで全部か?」
「ヘイ!男が25人と女が30人、子どもが15人ですぜ」
「今回は冒険者が7人で、内1人はB級2人は貴族っすよ!B級の奴は貴族と組んでるっす!」
「そうだったな。おい!奴隷商はあとどれくらいで来る?」
「そおっすね~1時間位じゃないっすか?」
「余興するには良い時間だな。貴族は誰だ?立て」
2人は迷う事なく立ち上がり、アルベルトがフェリーチェを庇うように前に出た。
盗賊たちはニヤニヤしていて、頭が2人に話しかけた。
「お前ら何級なんだ?」
「昨日登録したからE級だけど」
「そうかそうか。なぁ貴族様、俺から一つ提案があるんだが」
「何?」
「そう怖い顔するなよ。ちょいと賭け試合をやらねぇか?」
「賭け試合?」
「そうだ。2人が勝てばここにいる全員を解放してやる。だが負ければ……年寄りと赤子は奥にいる俺のペットの餌だ」
頭の言葉に、年寄りと赤子の家族らしき者たちは短い悲鳴を上げた。
常識的に考えれば昨日登録したばかりのE級の冒険者が盗賊に勝てるとは思わないし、貴族の冒険者は金で昇級するという話もある。
ヤハルたちは絶望的な目でフェリーチェとアルベルトを見ていた。
しかし、当の本人たちは全く逆の思いを抱いていた。
{ナイス提案!さっさと終わらせて避難しよう}
{ペットって何だろう?一応、ヤハルさんたちに結界張るね。ガイ、いざとなったら皆をお願いね}
{分かった。こいつ等が言った事を守るとは思えないからな}
念話をしているフェリーチェとアルベルトが怯んでると思った頭は、笑いながらグレイたちを見た。
「何なら、そっちの冒険者のガキどもでも良いぞ?あぁ、そんなガリガリじゃあ戦えないよな?そうだ!この貴族様を殺してもらおうか」
「何をっ!?そんな事できるか!」
「何故だ?殺せば全員解放してやる。そのなりからしてお前等は孤児だろう。殺せば金を恵んでやるし、俺たちの仲間にしてやってもいいんだぜ?」
「「「「!?」」」」
頭の言葉に、グレイたちは唇を噛み締め震えていた。
他の捕虜たちからすれば、貴族の子どもが盗賊に勝つよりグレイたちが貴族の子どもを殺す方が成功する可能性がある。
全員の視線を浴びながら、4人は顔を上げ頭を睨み付けグレイが答えた。
「断る!確かにオレたちは孤児だし金もない!けど、それをやって助かってもシスター……母さんを悲しませる。弟たちにも顔向けできない。だからっ……だから断る!」
「ご立派なこった。だったらせいぜい、貴族様を応援するんだなぁ!」
盗賊たちがフェリーチェとアルベルトに向けて武器を構えた。
捕虜たちは身を寄せ合い緊迫した空気が漂う中、呑気な声が響いた。
「ねぇ~僕たちも武器と魔法を使っても良いの?それとも使わない方が良いかな?それくらいハンデをあげなきゃ直ぐ終わっちゃいそうだしね~」
「……あぁ?良い度胸だ!だったらハンデをもらおうじゃねぇか!」
アルベルトが見下すように言った言葉に、盗賊たちは一気に殺気立ち襲いかかった。
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主人公は優柔不断で出て来るキャラは問題児が多いです。
貴族の家に転生した俺は、やり過ぎチートで異世界を自由に生きる
フリウス
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幼い頃からファンタジー好きな夢幻才斗(むげんさいと)。
自室でのゲーム中に突然死した才斗だが、才斗大好き女神:レアオルによって、自分が管理している異世界に転生する。
だが、事前に二人で相談して身につけたチートは…一言で言えば普通の神が裸足で逃げ出すような「やり過ぎチート」だった!?
伯爵家の三男に転生した才斗=ウェルガは、今日も気ままに非常識で遊び倒し、剣と魔法の異世界を楽しんでいる…。
アホみたいに異世界転生作品を読んでいたら、自分でも作りたくなって勢いで書いちゃいましたww
ご都合主義やらなにやら色々ありますが、主人公最強物が書きたかったので…興味がある方は是非♪
それと、作者の都合上、かなり更新が不安定になります。あしからず。
ちなみにミスって各話が1100~1500字と短めです。なのでなかなか主人公は大人になれません。
現在、最低でも月1~2月(ふたつき)に1話更新中…
お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)
いくみ
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お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。
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掲載は不定期になります。
追記
「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。
お知らせ
カクヨム様でも掲載中です。
少し冷めた村人少年の冒険記
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辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
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優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
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