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冒険者~始まり~
張り切り過ぎた
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ガイの手作り弁当を食べた3人は、午後の予定を確認していた。
「パーティ登録したけど、E級の依頼受けてるし今日は別々で良いよね」
「子守りは明日だから、農家の手伝いに行こうか?」
「うん。私は良いよ。ガイはどうする?」
「B級になったし、S級の依頼でも受けるかな~」
「S級の依頼あったっけ?」
「あ~なければA級でも受けとくさ」
「ガイ、気を付けてね」
「あぁ、フェリとアルも気を付けろよ」
3人はそれぞれ別れ、フェリーチェとアルベルトは農家へと向かった。
依頼のあった農家は町外れにあり、閑散としていたので迷わず見つける事ができた。
早速、ノックして声をかけると優しい笑顔を浮かべたお爺さんが出てきた。
「「こんにちは~依頼を受けて来ました~」」
「はいはい。良く来てくれたな~」
お爺さんに案内されて家の裏に回ると、野菜が植えられた畑が広がっていた。
「すご~い。これ全部、お爺さんっ……ごめんなさい。えっと、私はフェリーチェと言います」
「僕はアルベルト」
「わしはノーマンじゃよ。呼び方は、お爺さんでも構わんぞ」
「いえいえ!野菜はノーマンさんが作ってるんですか?」
「いや~息子たちと作っとるんだが、隣町に行っててまだ帰れないんじゃよ」
「どうして?」
「盗賊が出て危険じゃから、通行の許可が出らんそうじゃ」
「「盗賊?」」
「兵と冒険者で討伐する話が出とるじゃが、アジトが見つからんから討伐できんそうじゃ」
「それで依頼を出したんですね」
「このまま収穫せんと駄目になるんでな~。すまんが手伝ってくれんか?」
「「はい」」
野菜の収穫は初めてだったので、ノーマンに教わりながら作業していたが、慣れてきたので別れて収穫する事にした。
順調に収穫していた時、少し離れた畑からドォ~ンと音がしてアルベルトがフェリーチェの側に転移してきた。
「フェリ!大丈夫?」
「私は大丈夫だけど何の音かな?」
「あ~また来たようじゃな~」
2人の方にゆっくり歩いて来たノーマンにアルベルトが尋ねた。
「来たって何が来たの?」
「猪じゃよ。魔物じゃないから退治するのは簡単なんじゃが、わし1人じゃ無理じゃからな~」
「……シシ鍋美味しいよね~」
「フェリ食べたいの?じゃあ獲って来るよ」
「大きいからお前さんじゃあ無理じゃよ」
「大丈夫大丈夫!行ってきま~す」
「アル~丸焦げはダメだからね~」
アルベルトが走って行き、音のした場所に到着すると壊された木の柵が散乱し、その側では体長2mはある猪が3頭野菜を貪っていた。
「う~ん……丸焦げはダメだから火はダメだし、血抜きもしないと臭みが残るんだよね。まぁ、血抜きは帰ってからで良いか。『光線』」
アルベルトが突き出した人差し指から光の線が出て1頭の猪の頭部を貫いた。
すかさず残り2頭の頭部も撃ち抜くと、アイテムリングに収納して2人の元に戻った。
「獲ったよ~」
「お帰り~」
「怪我はないようじゃが、猪はどこじゃ?」
「アイテムリ、アイテムボックスに入れてあるよ。いる?」
「いや、それはお前さんのもんじゃよ。退治してくれて助かったわい」
「気にしないでよ。それより、あの木の柵だとまた入られるよ」
「分かっとるが、わしらじゃあれが精一杯なんじゃよ」
「なら、私たちが作りますよ」
「しかしじゃな、そこまでしてもらう訳には……」
「依頼は農家の手伝いでしょ?コレも立派な手伝いだよ」
「そうですよ」
「それじゃあ、お願いするかのぉ」
一先ず、収穫はノーマンに任せフェリーチェとアルベルトは柵を作る事にした。
「材料は木で、魔石も使う?」
「う~ん、使うらな見えない所に使わないと、悪目立ちしちゃうかも」
「だね。土に埋める所に付けよう。付与は『感知』と『硬化』かな?」
「うん。害意と敵意を『感知』して丸太を『硬化』するんだね。あっ、『雷』もつけようかな?弱めで」
「どうせなら対象で威力が変わるようにしたら?」
「そうだね。ついでに『自動修復』も付けとくね。私が付与するから、アルは木を準備してくれる?」
「任せて」
フェリーチェは、アイテムボックスから魔石を取りだし、アルベルトはアイテムリングに何故か入っていた丸太を取りだしそれぞれ作業を開始した。
畑全体を囲うので数が多くなったが10分位で作業が終り、加工した丸太に魔石を埋め込み固定して準備完了。
万が一、間違って怪我をさせたらいけないので、ノーマンには側に来てもらった。
残っていた柵をフェリーチェが浮かべて取り除き、続いて丸太を浮かべて畑を囲むと一気に地面に突き刺し高さ2m位の柵が完成した。
「できた~!」
「凄いもんだな~」
「ちゃんと出入口も作ってるから」
「本当にありがとな~」
3人は和やかな空気で収穫の作業に戻った。
ノーマンは知らなかった。
自分の畑を囲う柵が高性能な魔道具だという事を。
そして、フェリーチェとアルベルトは知らなかった。
後日、畑を荒らしにきた猪だけでなく、魔物も『雷』の餌食になりある意味、目立ってしまう事を。
依頼が終わり、柵のお礼だと野菜をいくつかもらった2人はギルドへと戻った。
ギルドに着くと、外に人だかりができていて入れなかったので、近くの冒険者に何があったのか聞く事にした。
「すみません。何かあったんですか?」
「あたしらも詳しく分かんないけど、B級の奴が大物を持ち込んだらしいわ」
「B級で」
「大物……ガイか。フェリ、とにかく入ろう」
「うん。ありがとうございました~」
2人は教えてくれた冒険者にお礼を言って、人を避けながらギルドの中に入った。
中にはガイの姿が見当たらなかったので、2人は依頼達成の報告のためにディックがいる受付へと向かった。
「ディックさん、お願いします」
「ノーマンの手伝いか。じゃあ報酬の銅貨5枚だ」
「ありがとうございます」
「ありがとう。ねぇ、ガイ知らない?」
「あいつなら、マスターの執務室に呼び出しだ」
「呼び出しですか?」
「何でまた」
「とんでもないもんを狩って来やがったからだ」
「「???」」
「わたしが教えてあげましょうか?」
疲れたように言ったディックに、2人が不思議そうにしているとアルベルトが後ろから抱き締められた。
「あっ、受付の」
「話すのは初めてよね。わたしはフルーよ。ヨロシクね……お嬢様」
「!?……フェリーチェです。よろしくお願いします」
笑顔なのに冷たい瞳を向けてくるフルーに、フェリーチェは何とか挨拶を返したがアルベルトは無反応だった。
「まったく良いご身分よね~。男2人も侍らせて、しかも1人は実力者で顔も申し分ない男で、1人は将来有望そうな男の子だもの。羨ましいわ~。ねぇ、1人くらい譲ってよ」
「侍らせて……あの、アルから離れてください」
「あら良いじゃない。独り占めはダメよ」
「…………」
フルーが来てから顔をしかめていたディックは、アルベルト見るとフルーに離れるように言った。
「フルー、何してるんだ。その子から離れろ」
「あら、別に良いじゃない」
「バカヤロウ!俺はっーー」
「……ねぇ、離れてよ」
「フフッ、照れてるの?まぁ、わたしの様な美しい人間に抱き付かれればそうなるのも分かるわ」
アルベルトの低く平淡な声に気付かないフルーは、自信に満ちた顔をしていたのだが次のアルベルトの言葉に固まる事になった。
「離れろって言ってるだろ。気持ち悪い」
「は?」
「僕に触れて良いのは、僕が許した者だけだ。お前に許した覚えはない」
「え?」
反応の鈍いフルーを無視して、アルベルトは腕をすり抜け離れた。
「あぁ~臭い……『清掃』」
「アル、大丈夫?」
「大丈夫だよ」
「すまんな」
「別にディックが謝る事じゃないでしょ」
「お前ら何してるんだ?」
フルーを放置して3人で話していると、ガイが声をかけた。
「ガイこそ何したのさ」
「ん?依頼の途中で魔物を討伐したんだよ。それを話したらギルマスに呼ばれたんだ」
「何の魔物だったの?」
「キメラだ」
「「へ~」」
「へ~……ってお前ら、キメラだぞキメラ!Aクラスだぞ!」
「「「うん?」」」
「……もういい」
「変な奴だな。2人とも、今日は帰るか?」
「そうだね。アルも良い?」
「良いよ~」
ディックは、ギルドを出ていく3人を睨み付けているフルーを視界に入れながら、深い深い溜め息を吐き出した。
一方フェリーチェたちは転移で邸に帰ると、待っていたクロードたちに今日体験した話をして過ごし、ノーマンに貰った野菜とアルベルトが持ってきた猪は夕食で振る舞われた。
その夜、クロードの執務室でクロードとエヴァン、ルイスとオースティンとメイソンとブレイクが酒を片手に話していた。
「早いものだな。あの2人が冒険者か」
「お前、心配し過ぎてウロウロしてたもんな~」
「仕事を休みにして正解でしたね」
「あぁ、お前たちには感謝している。ありがとう」
「しかし、ガイを先に登録させといて正解だったな。俺たちが付き添うと騒がれるのは眼に見えてるし」
「そうじゃな。しかし、ガイはB級になったんじゃろ?十分、騒がれそうじゃが」
「何も言ってなかったから大丈夫だったんだろ?」
「甘いな~ブレイク。お前らも」
「何ですかエヴァン。ニヤニヤして気持ち悪いですよ」
「気持っ!?」
「うるさい。それで、何が言いたいんだ?」
「クソ~……いいか?まず、アルベルトとガイは騒ぎを騒ぎと思ってない」
「「「「…………………確かに」」」」
「フェリーチェは、俺たちに心配かけたくないからよっぽどの事がなければ話さないだろ」
「「「「確かに」」」」
「お前らも、弟子の成長に浮かれてたんだろ」
「……後でガイに詳しく聞いておく」
「私もサンドロに確認しておきます」
「よし!話が纏まった事だし飲もうぜ!」
5人の男たちは夜通し飲み続け朝方に気絶するように眠りについた。
しかし、その1時間後に何者かによって強制的に起こされた。
二日酔いの5人が叩き起こした者たちを見た瞬間、酔いは一気に覚め無言のまま正座をしていた。
「目は覚めたかしら?」
「随分、楽しんだようだな」
「飲みすぎは体に良くありませんよ」
5人を起こしたのは、眩しい笑顔を浮かべたサマンサとアンドリアとアンジェラだった。
その日、王宮ではフラフラしながら仕事をしている国王と宰相が、冒険者ギルドでは同じくフラフラしているS級パーティの男たちが目撃されたという。
「パーティ登録したけど、E級の依頼受けてるし今日は別々で良いよね」
「子守りは明日だから、農家の手伝いに行こうか?」
「うん。私は良いよ。ガイはどうする?」
「B級になったし、S級の依頼でも受けるかな~」
「S級の依頼あったっけ?」
「あ~なければA級でも受けとくさ」
「ガイ、気を付けてね」
「あぁ、フェリとアルも気を付けろよ」
3人はそれぞれ別れ、フェリーチェとアルベルトは農家へと向かった。
依頼のあった農家は町外れにあり、閑散としていたので迷わず見つける事ができた。
早速、ノックして声をかけると優しい笑顔を浮かべたお爺さんが出てきた。
「「こんにちは~依頼を受けて来ました~」」
「はいはい。良く来てくれたな~」
お爺さんに案内されて家の裏に回ると、野菜が植えられた畑が広がっていた。
「すご~い。これ全部、お爺さんっ……ごめんなさい。えっと、私はフェリーチェと言います」
「僕はアルベルト」
「わしはノーマンじゃよ。呼び方は、お爺さんでも構わんぞ」
「いえいえ!野菜はノーマンさんが作ってるんですか?」
「いや~息子たちと作っとるんだが、隣町に行っててまだ帰れないんじゃよ」
「どうして?」
「盗賊が出て危険じゃから、通行の許可が出らんそうじゃ」
「「盗賊?」」
「兵と冒険者で討伐する話が出とるじゃが、アジトが見つからんから討伐できんそうじゃ」
「それで依頼を出したんですね」
「このまま収穫せんと駄目になるんでな~。すまんが手伝ってくれんか?」
「「はい」」
野菜の収穫は初めてだったので、ノーマンに教わりながら作業していたが、慣れてきたので別れて収穫する事にした。
順調に収穫していた時、少し離れた畑からドォ~ンと音がしてアルベルトがフェリーチェの側に転移してきた。
「フェリ!大丈夫?」
「私は大丈夫だけど何の音かな?」
「あ~また来たようじゃな~」
2人の方にゆっくり歩いて来たノーマンにアルベルトが尋ねた。
「来たって何が来たの?」
「猪じゃよ。魔物じゃないから退治するのは簡単なんじゃが、わし1人じゃ無理じゃからな~」
「……シシ鍋美味しいよね~」
「フェリ食べたいの?じゃあ獲って来るよ」
「大きいからお前さんじゃあ無理じゃよ」
「大丈夫大丈夫!行ってきま~す」
「アル~丸焦げはダメだからね~」
アルベルトが走って行き、音のした場所に到着すると壊された木の柵が散乱し、その側では体長2mはある猪が3頭野菜を貪っていた。
「う~ん……丸焦げはダメだから火はダメだし、血抜きもしないと臭みが残るんだよね。まぁ、血抜きは帰ってからで良いか。『光線』」
アルベルトが突き出した人差し指から光の線が出て1頭の猪の頭部を貫いた。
すかさず残り2頭の頭部も撃ち抜くと、アイテムリングに収納して2人の元に戻った。
「獲ったよ~」
「お帰り~」
「怪我はないようじゃが、猪はどこじゃ?」
「アイテムリ、アイテムボックスに入れてあるよ。いる?」
「いや、それはお前さんのもんじゃよ。退治してくれて助かったわい」
「気にしないでよ。それより、あの木の柵だとまた入られるよ」
「分かっとるが、わしらじゃあれが精一杯なんじゃよ」
「なら、私たちが作りますよ」
「しかしじゃな、そこまでしてもらう訳には……」
「依頼は農家の手伝いでしょ?コレも立派な手伝いだよ」
「そうですよ」
「それじゃあ、お願いするかのぉ」
一先ず、収穫はノーマンに任せフェリーチェとアルベルトは柵を作る事にした。
「材料は木で、魔石も使う?」
「う~ん、使うらな見えない所に使わないと、悪目立ちしちゃうかも」
「だね。土に埋める所に付けよう。付与は『感知』と『硬化』かな?」
「うん。害意と敵意を『感知』して丸太を『硬化』するんだね。あっ、『雷』もつけようかな?弱めで」
「どうせなら対象で威力が変わるようにしたら?」
「そうだね。ついでに『自動修復』も付けとくね。私が付与するから、アルは木を準備してくれる?」
「任せて」
フェリーチェは、アイテムボックスから魔石を取りだし、アルベルトはアイテムリングに何故か入っていた丸太を取りだしそれぞれ作業を開始した。
畑全体を囲うので数が多くなったが10分位で作業が終り、加工した丸太に魔石を埋め込み固定して準備完了。
万が一、間違って怪我をさせたらいけないので、ノーマンには側に来てもらった。
残っていた柵をフェリーチェが浮かべて取り除き、続いて丸太を浮かべて畑を囲むと一気に地面に突き刺し高さ2m位の柵が完成した。
「できた~!」
「凄いもんだな~」
「ちゃんと出入口も作ってるから」
「本当にありがとな~」
3人は和やかな空気で収穫の作業に戻った。
ノーマンは知らなかった。
自分の畑を囲う柵が高性能な魔道具だという事を。
そして、フェリーチェとアルベルトは知らなかった。
後日、畑を荒らしにきた猪だけでなく、魔物も『雷』の餌食になりある意味、目立ってしまう事を。
依頼が終わり、柵のお礼だと野菜をいくつかもらった2人はギルドへと戻った。
ギルドに着くと、外に人だかりができていて入れなかったので、近くの冒険者に何があったのか聞く事にした。
「すみません。何かあったんですか?」
「あたしらも詳しく分かんないけど、B級の奴が大物を持ち込んだらしいわ」
「B級で」
「大物……ガイか。フェリ、とにかく入ろう」
「うん。ありがとうございました~」
2人は教えてくれた冒険者にお礼を言って、人を避けながらギルドの中に入った。
中にはガイの姿が見当たらなかったので、2人は依頼達成の報告のためにディックがいる受付へと向かった。
「ディックさん、お願いします」
「ノーマンの手伝いか。じゃあ報酬の銅貨5枚だ」
「ありがとうございます」
「ありがとう。ねぇ、ガイ知らない?」
「あいつなら、マスターの執務室に呼び出しだ」
「呼び出しですか?」
「何でまた」
「とんでもないもんを狩って来やがったからだ」
「「???」」
「わたしが教えてあげましょうか?」
疲れたように言ったディックに、2人が不思議そうにしているとアルベルトが後ろから抱き締められた。
「あっ、受付の」
「話すのは初めてよね。わたしはフルーよ。ヨロシクね……お嬢様」
「!?……フェリーチェです。よろしくお願いします」
笑顔なのに冷たい瞳を向けてくるフルーに、フェリーチェは何とか挨拶を返したがアルベルトは無反応だった。
「まったく良いご身分よね~。男2人も侍らせて、しかも1人は実力者で顔も申し分ない男で、1人は将来有望そうな男の子だもの。羨ましいわ~。ねぇ、1人くらい譲ってよ」
「侍らせて……あの、アルから離れてください」
「あら良いじゃない。独り占めはダメよ」
「…………」
フルーが来てから顔をしかめていたディックは、アルベルト見るとフルーに離れるように言った。
「フルー、何してるんだ。その子から離れろ」
「あら、別に良いじゃない」
「バカヤロウ!俺はっーー」
「……ねぇ、離れてよ」
「フフッ、照れてるの?まぁ、わたしの様な美しい人間に抱き付かれればそうなるのも分かるわ」
アルベルトの低く平淡な声に気付かないフルーは、自信に満ちた顔をしていたのだが次のアルベルトの言葉に固まる事になった。
「離れろって言ってるだろ。気持ち悪い」
「は?」
「僕に触れて良いのは、僕が許した者だけだ。お前に許した覚えはない」
「え?」
反応の鈍いフルーを無視して、アルベルトは腕をすり抜け離れた。
「あぁ~臭い……『清掃』」
「アル、大丈夫?」
「大丈夫だよ」
「すまんな」
「別にディックが謝る事じゃないでしょ」
「お前ら何してるんだ?」
フルーを放置して3人で話していると、ガイが声をかけた。
「ガイこそ何したのさ」
「ん?依頼の途中で魔物を討伐したんだよ。それを話したらギルマスに呼ばれたんだ」
「何の魔物だったの?」
「キメラだ」
「「へ~」」
「へ~……ってお前ら、キメラだぞキメラ!Aクラスだぞ!」
「「「うん?」」」
「……もういい」
「変な奴だな。2人とも、今日は帰るか?」
「そうだね。アルも良い?」
「良いよ~」
ディックは、ギルドを出ていく3人を睨み付けているフルーを視界に入れながら、深い深い溜め息を吐き出した。
一方フェリーチェたちは転移で邸に帰ると、待っていたクロードたちに今日体験した話をして過ごし、ノーマンに貰った野菜とアルベルトが持ってきた猪は夕食で振る舞われた。
その夜、クロードの執務室でクロードとエヴァン、ルイスとオースティンとメイソンとブレイクが酒を片手に話していた。
「早いものだな。あの2人が冒険者か」
「お前、心配し過ぎてウロウロしてたもんな~」
「仕事を休みにして正解でしたね」
「あぁ、お前たちには感謝している。ありがとう」
「しかし、ガイを先に登録させといて正解だったな。俺たちが付き添うと騒がれるのは眼に見えてるし」
「そうじゃな。しかし、ガイはB級になったんじゃろ?十分、騒がれそうじゃが」
「何も言ってなかったから大丈夫だったんだろ?」
「甘いな~ブレイク。お前らも」
「何ですかエヴァン。ニヤニヤして気持ち悪いですよ」
「気持っ!?」
「うるさい。それで、何が言いたいんだ?」
「クソ~……いいか?まず、アルベルトとガイは騒ぎを騒ぎと思ってない」
「「「「…………………確かに」」」」
「フェリーチェは、俺たちに心配かけたくないからよっぽどの事がなければ話さないだろ」
「「「「確かに」」」」
「お前らも、弟子の成長に浮かれてたんだろ」
「……後でガイに詳しく聞いておく」
「私もサンドロに確認しておきます」
「よし!話が纏まった事だし飲もうぜ!」
5人の男たちは夜通し飲み続け朝方に気絶するように眠りについた。
しかし、その1時間後に何者かによって強制的に起こされた。
二日酔いの5人が叩き起こした者たちを見た瞬間、酔いは一気に覚め無言のまま正座をしていた。
「目は覚めたかしら?」
「随分、楽しんだようだな」
「飲みすぎは体に良くありませんよ」
5人を起こしたのは、眩しい笑顔を浮かべたサマンサとアンドリアとアンジェラだった。
その日、王宮ではフラフラしながら仕事をしている国王と宰相が、冒険者ギルドでは同じくフラフラしているS級パーティの男たちが目撃されたという。
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