120 / 166
小話2~○○の日記~
一言よろしいですか?
しおりを挟む
こんにちは、私はロバートです。
ディアネス協和国でマライカ商会の会頭をしています。
それから、国王エヴァン様と宰相クロード様の学友でもあります。
彼等との出会いは、中等部の2年生の時でした。
私の家は父が一代で築いた商会で、あとを次ぐ兄の補佐をするために学園に通っていたのですが、この兄がボンク……少し頭がよろしくなく、彼の尻拭いをするために奔走する毎日。
しかも、商会の息子といっても平民の私に対する当たりは強く、友人もいませんでした。
そんなある日、溜まりにたまった不満と苛立ちが限界に達した私は、放課後に誰も近付かない倉庫で爆発しました。
「あのクソバカ兄貴が!お前の×○△#を○△×□☆!それからバカ貴族ども!お前ら○△×□#――!……ゼェ~ゼェ~……ふぅ~スッキリした~」
「それは良かったな」
「良いわけないよ。僕の日常は変わらない。どうせ僕は、あの能無し兄貴の尻拭いを死ぬまでやるんだ。アイツが死ぬまで」
「ふ~ん。そんな奴ほっとけば良いだろう?」
「だから、僕は……僕は……え!?誰ですか!?」
「誰って……フッフッフッ……俺はエヴァンだ」
私が聞こえてきた声にキョロキョロしていると、壁がガコッとずれて、そこから少年が出てきたのです。
それがエヴァン様との出会いでした。
「お、王子!?……何で壁が!え?」
「そうだ!王子だぞ!壁がずれたのは、そういう仕掛けを作ったからだ!」
「は……はぁ!?」
正直、こいつ頭大丈夫か?と思いましたが、相手は王子でしたので口には出しませんでした。
「お前、ロバートだろ?」
「え!?な、何で僕の名前……」
「他人を滅多に褒めないアイツが、将来有望そうだからって覚えさせらっ、覚えたんだ」
(今、覚えさせられたって言いかけた)
「どなたにですか?有望と言ってもらえて嬉しいですが、僕は次男ですよ」
「次男だと駄目なのか?」
「家を継ぐのは長男です。次男の僕は表に出る事はありません。だから、僕の名前なんか忘れて下さい」
「ロバート、お前……バッカだな~!」
「バッ!?な、いきなり何ですか!」
「俺は王子だ!」
「知ってますよ!」
「俺は卒業したら、冒険者になる!というか、もう登録してる!」
「冒険者!?で、でもエヴァン様は卒業したら第1王子の補佐をすると」
「知らん!それは俺の望みじゃない」
「王子なんですよ?自分の望みじゃないからって、そんな無責任な」
「確かに俺は王子だ。王族としての責務も分かってる。だがな、だからこそ俺は世界を見たい。だから自由に国を往き来できる冒険者になる」
「世界……」
「世界を見て、この国に足りないものをどうにかしたい」
「足りないものですか?」
「そうだ。まぁ、まだ漠然と感じてるだけで、コレがっていうのはないがな。だから、お前も考えてみろよ」
「いや、僕は世界は……」
「そうじゃなくて!」
「エヴァンは、無能な兄の尻拭いをするだけの人生だと諦めずに、自分が本当にやりたい事を考えろと言ってるんだ」
「そうそう、さすが分かってるなクロード……あれ?幻聴か?なぁロバート、ここには俺とお前しかいないよな?」
「えっと……貴方が熱く語りだした時から、後ろにいましたよ」
「クソッ、せっかく内密で作った抜け穴を、もう見つけたのか……じゃあまたなロバート!」
「逃がすか!勝手に冒険者登録しやがって!俺がルイスに説教されただろうが!」
エヴァン様を追いかけて行ったクロード様との初対面は、会話する事なく終わりました。
その後も、何かと絡んでくるエヴァン様と、すまなさそうにしているクロード様と過ごす時間が増え、私の考えも変わっていきました。
多少のゴタゴタはありましたが、商家の次男の私が今では商会の会頭です。
お二人との出会いに感謝しています。
ですが、1つだけ言わせて頂きたい。
私は商人であって、便利屋ではないのですよ。
エヴァン様、お忍びの度に駆け込んで来ないで下さい。
クロード様、昔はエヴァン様を止める側だったのに、フェリーチェ様とアルベルト様が来られてから、いろいろと私に押し付け過ぎじゃないですか?
この前も、学園祭の時でした。
「あの魔道具は、アルとサヨが作ったもので販売はしていない。今後、するとしたらマライカ商会を通すのて、ロバートに聞いてくれ」
初耳ですが?
おかげで私は定期的に問い合わせを受けるようになりましたよ。
クロード様たちもですが、フェリーチェ様とアルベルト様がこの国に来られてから、少しずつ何かが変わってきているような気がします。
エヴァン様、世界を見るという望みは果たせなかったかもしれませんが、国に足りないものをどうにかしたいという望みは、少しずつ果たせていると思いますよ。
クロード様、あのお二人がやり過ぎないように気を付けてあげて下さい。
何だか最近、教えているあなた方の感覚の方が、麻痺していると思います。
満足そうにしていますが、A級ましてやS級冒険者と、いい勝負する10歳児がいるわけないでしょうが!
ディアネス協和国でマライカ商会の会頭をしています。
それから、国王エヴァン様と宰相クロード様の学友でもあります。
彼等との出会いは、中等部の2年生の時でした。
私の家は父が一代で築いた商会で、あとを次ぐ兄の補佐をするために学園に通っていたのですが、この兄がボンク……少し頭がよろしくなく、彼の尻拭いをするために奔走する毎日。
しかも、商会の息子といっても平民の私に対する当たりは強く、友人もいませんでした。
そんなある日、溜まりにたまった不満と苛立ちが限界に達した私は、放課後に誰も近付かない倉庫で爆発しました。
「あのクソバカ兄貴が!お前の×○△#を○△×□☆!それからバカ貴族ども!お前ら○△×□#――!……ゼェ~ゼェ~……ふぅ~スッキリした~」
「それは良かったな」
「良いわけないよ。僕の日常は変わらない。どうせ僕は、あの能無し兄貴の尻拭いを死ぬまでやるんだ。アイツが死ぬまで」
「ふ~ん。そんな奴ほっとけば良いだろう?」
「だから、僕は……僕は……え!?誰ですか!?」
「誰って……フッフッフッ……俺はエヴァンだ」
私が聞こえてきた声にキョロキョロしていると、壁がガコッとずれて、そこから少年が出てきたのです。
それがエヴァン様との出会いでした。
「お、王子!?……何で壁が!え?」
「そうだ!王子だぞ!壁がずれたのは、そういう仕掛けを作ったからだ!」
「は……はぁ!?」
正直、こいつ頭大丈夫か?と思いましたが、相手は王子でしたので口には出しませんでした。
「お前、ロバートだろ?」
「え!?な、何で僕の名前……」
「他人を滅多に褒めないアイツが、将来有望そうだからって覚えさせらっ、覚えたんだ」
(今、覚えさせられたって言いかけた)
「どなたにですか?有望と言ってもらえて嬉しいですが、僕は次男ですよ」
「次男だと駄目なのか?」
「家を継ぐのは長男です。次男の僕は表に出る事はありません。だから、僕の名前なんか忘れて下さい」
「ロバート、お前……バッカだな~!」
「バッ!?な、いきなり何ですか!」
「俺は王子だ!」
「知ってますよ!」
「俺は卒業したら、冒険者になる!というか、もう登録してる!」
「冒険者!?で、でもエヴァン様は卒業したら第1王子の補佐をすると」
「知らん!それは俺の望みじゃない」
「王子なんですよ?自分の望みじゃないからって、そんな無責任な」
「確かに俺は王子だ。王族としての責務も分かってる。だがな、だからこそ俺は世界を見たい。だから自由に国を往き来できる冒険者になる」
「世界……」
「世界を見て、この国に足りないものをどうにかしたい」
「足りないものですか?」
「そうだ。まぁ、まだ漠然と感じてるだけで、コレがっていうのはないがな。だから、お前も考えてみろよ」
「いや、僕は世界は……」
「そうじゃなくて!」
「エヴァンは、無能な兄の尻拭いをするだけの人生だと諦めずに、自分が本当にやりたい事を考えろと言ってるんだ」
「そうそう、さすが分かってるなクロード……あれ?幻聴か?なぁロバート、ここには俺とお前しかいないよな?」
「えっと……貴方が熱く語りだした時から、後ろにいましたよ」
「クソッ、せっかく内密で作った抜け穴を、もう見つけたのか……じゃあまたなロバート!」
「逃がすか!勝手に冒険者登録しやがって!俺がルイスに説教されただろうが!」
エヴァン様を追いかけて行ったクロード様との初対面は、会話する事なく終わりました。
その後も、何かと絡んでくるエヴァン様と、すまなさそうにしているクロード様と過ごす時間が増え、私の考えも変わっていきました。
多少のゴタゴタはありましたが、商家の次男の私が今では商会の会頭です。
お二人との出会いに感謝しています。
ですが、1つだけ言わせて頂きたい。
私は商人であって、便利屋ではないのですよ。
エヴァン様、お忍びの度に駆け込んで来ないで下さい。
クロード様、昔はエヴァン様を止める側だったのに、フェリーチェ様とアルベルト様が来られてから、いろいろと私に押し付け過ぎじゃないですか?
この前も、学園祭の時でした。
「あの魔道具は、アルとサヨが作ったもので販売はしていない。今後、するとしたらマライカ商会を通すのて、ロバートに聞いてくれ」
初耳ですが?
おかげで私は定期的に問い合わせを受けるようになりましたよ。
クロード様たちもですが、フェリーチェ様とアルベルト様がこの国に来られてから、少しずつ何かが変わってきているような気がします。
エヴァン様、世界を見るという望みは果たせなかったかもしれませんが、国に足りないものをどうにかしたいという望みは、少しずつ果たせていると思いますよ。
クロード様、あのお二人がやり過ぎないように気を付けてあげて下さい。
何だか最近、教えているあなた方の感覚の方が、麻痺していると思います。
満足そうにしていますが、A級ましてやS級冒険者と、いい勝負する10歳児がいるわけないでしょうが!
65
お気に入りに追加
3,783
あなたにおすすめの小説

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分
かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。
前世の分も幸せに暮らします!
平成30年3月26日完結しました。
番外編、書くかもです。
5月9日、番外編追加しました。
小説家になろう様でも公開してます。
エブリスタ様でも公開してます。


異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです
ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。
転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。
前世の記憶を頼りに善悪等を判断。
貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。
2人の兄と、私と、弟と母。
母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。
ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。
前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。


オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。
襲
ファンタジー
〈あらすじ〉
信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。
目が覚めると、そこは異世界!?
あぁ、よくあるやつか。
食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに……
面倒ごとは御免なんだが。
魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。
誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。
やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

知らない異世界を生き抜く方法
明日葉
ファンタジー
異世界転生、とか、異世界召喚、とか。そんなジャンルの小説や漫画は好きで読んでいたけれど。よく元ネタになるようなゲームはやったことがない。
なんの情報もない異世界で、当然自分の立ち位置もわからなければ立ち回りもわからない。
そんな状況で生き抜く方法は?

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる