目覚めたら地下室!?~転生少女の夢の先~

そらのあお

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冒険者~修行~

学園祭~試合~

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午後になり、対抗戦への出場をかけた試合が始まった。
対抗戦に出れるのは、各学年で男女それぞれ3名ずつなので、1グループ6名でのリーグ戦をするようだ。

「お兄様たちは何番目なの?」

「まずは剣士の試合だから、まだまだ先だな」

「剣ならアダムとディランが出るね」

「アル、ちゃんと敬称をつけなさい」

「そうだった!」

アルベルトがクロードに注意された時、周りが騒がしくなった。

「ディラン様~!頑張って下さ~い!」
「ディラン様!カッコいい!」
「キャー!ディラン様~!」

どうやら、中等部の選手たちが現れたようで、その中のディランに女の子から黄色い声援があがった。

「ディラン様、すごい人気だね」

「あの子、顔も良いけど気性も穏やかだから、結構人気なのよ」

「……穏やか?」

サマンサの言葉に、フェリーチェはガイの頭蓋骨を鷲掴みにしていたディランを思いだし、首を傾げた。
そんなフェリーチェを、アルベルトは不思議そうに見ていた。

「どうしたのフェリ?」

「……何でもないよ~」

話している間に試合が始まったみたいで、少年達が剣を交えていた。
選手の中には、剣以外の武器を使う者もいるようだ。
試合が進みディランの番になると、再び声援があかった。

「実際ディラン…様は、どの程度なの?」

「ディランとアダムは幼い頃から、王妃様はもちろんをオースティンからも指導を受けている。学生の試合では負ける事はない」

「へぇ~」

クロードの言う通り、ディランは一撃で相手を倒した。
中等部の試合では、他に目立った実力者はいなかったので、ディランが代表の1人に選ばれた。
続いて、高等部の選手が入場してきた。

「アダム様~!」
「アダム様!勝って下さい!」
「アダム様!こっち向いて~!」

ディラン同様、アダムも人気があるようだ。

「皆、目が悪いのかな?」

「アル、アダム様は顔はカッコいいよ」

「フェリ、それフォローになってないからね。顔はって」

「あれ?」

高等部の試合でも、アダム以外はパッとせず、アダムが代表の1人に選ばれた。
そして、魔法の試合になり中等部の選手が入場してきた。
その中には、ネイサンとシェリもいる。
ここでは、ネイサンに対しての声援が多かった。
それに負けないように、フェリーチェとアルベルトも声を張り上げた。

「お兄様~!頑張れ~!」
「兄様~!負けるな~!」

2人の声が届いたのか、今まで無反応だったネイサンがフェリーチェたちの方を向いて、笑みを浮かべて手を振りフェリーチェとアルベルトも振り替えした。
周りでは、ネイサンが応えたのに驚き、フェリーチェとアルベルトを見てヒソヒソ話している。
魔法の試合の中で、ネイサン以外に目を引いたのは、やはりシェリだった。

「あの子がシェリか?」

「うん。女の子の中じゃ一番だね」

「いや、恐らくネイサン以外では勝てんだろう」

「そうなの?僕には魔力が高いの位しか分かんないけど」

「そうだな。ミゲルとネイサンは、アルに教えてもらった方法で魔力量を上げているが、あの子の魔力は以前の2人より高い。それに相手の攻撃を確認してから、魔法を出しても間に合う程の処理能力の速さがある」

「やっぱりシェリさんスゴいんだ」

「でも、速いぶん魔力操作がが雑になってるよ。それを直したら、どうなるかな?」

「それは……早めに声をかけておくか」

「「???」」

クロードの呟きに首を傾げていると、サマンサが教えてくれた。

「こういった試合は、優秀な生徒が出るでしょう。だから、引き込むために声をかける事もあるのよ」

「「へぇ~」」

女子の試合が終わり、シェリは無事に代表に選ばれた。
続いて男子の試合も進み、ネイサンの番になったが、一撃で終わってしまい代表に選ばれた。
高等部の試合になり、ミゲルが現れるとまたもや歓声が大きくなり、負けずとフェリーチェとアルベルトが声を出す。

「お兄様~!頑張って!」
「兄様~!秒殺して~!」

声援に対して無表情だったミゲルは、フェリーチェたちの方を向いて、ニヤリと笑った。
周りは相変わらずヒソヒソしている。
試合でミゲルは、アルの要望通り秒殺で倒し、何事もなく代表に選ばれた。
余談だが、高等部女子の代表の中にケイティがいて、入場してから試合中も試合後も、彼女の視線はガイに向けられていて、ガイを震えあがらせていた。
全ての試合が終わると、‘団体戦の模擬戦まで30分休憩を挟みます’と放送があり、フェリーチェとアルベルトは立ち上がる。

「あら?もう行くの?アルもフェリも頑張ってね」

「「うん」」

「気を付けるんだぞ」

「「は~い」」

フェリーチェとアルベルトは、オリビアと一緒にルフィーナとの待ち合わせ場所に向い、途中で変化するとオリビアとは別れた。
待ち合わせ場所には、ルフィーナとダイソンが待っていて、久しぶりに会った彼と挨拶を交わし、会場に向かい歩いている間に、2人は念話で打ち合わせをした。

{フェリは複数を相手にした事ないから、守りを重視して常に『探索』サーチで相手の位置を把握するんだよ}

{うん。魔法も威力を落とした方が良いかな?}

{そうだね。僕も手加減に気を付けなきゃ}

{そうだ!ねぇ、模擬戦は魔法部門と剣士部門で2試合するんだよね}

{そう聞いたけど、剣の方は他の武器も使うみたいだよ}

{なら、アレを試せないかな?}

{アレって、メイソンと作ったアレ?良いね!やってみよう!}

{うん!}

念話している間に入場口に着き、2人を見て事情を知っているミゲルとネイサン以外は、戸惑いざわついていた。
シェリは違う意味で、ざわついていたが。

「皆さんに、紹介します。こちらは、流民のアルとサヨです」

ルフィーナの紹介に合わせて2人がが会釈すると、‘じゃあ、あの2人が?’や‘嘘!?あんなに若かったの?’などの声が聞こえてきた。

「そう。この2人が、平民の間でも貴族の間でも有名なアルとサヨです。ファウスト家の客人として学園祭に来ていたので、今回の模擬戦は2人にお願いする事になりました。もちろん、学園の許可は出ています。どうですか?」

{今、貴族でも有名って言ったよね?}

{言ったね~}

ルフィーナが選手に問いかけると、一瞬の沈黙の後、歓声があがった。
どうやら異存はないようだ。
模擬戦まで時間があるので、2人はミゲルたち4人の方に向かった。
他の選手は遠巻きに見ている。

「さっきの試合、お兄…じゃなくて、ミゲルさんたちは断トツでしたね」

「一撃だもんね~。兄…ゴホンッ、ミゲルとネイサンとは一緒に修業した事もあるから実力は知ってたけど、アダム…様とディラン様は少し驚いたよ」

「……今、‘お兄様’と‘兄様’って言いかけたよな?それに、俺に敬称をつける時の嫌そうな顔」

「あれ?もしかして……」

「「何の事でしょうか?」」

疑うアダムとディランに、しらを切るサヨとアルだが、目が泳いでいるため意味はなかった。
ミゲルが呆れたようにサヨとアルを見た後、アダムとディランに通信で事情を説明した。

「まさか、貴方と戦える日が来るなんて」

「せっかくの機械だからな。全力で行くぞ」

休憩が終わり、時間となったので先に選手が入場した。
選手へ歓声があがるなか、サヨとアルが入場すると、沈黙が落ちたがルフィーナが2人を紹介すると、大きな歓声があがり、2人は顔を引き吊らせながらも笑みを浮かべた。
模擬戦は女子の魔法部門から行う事になっていたので、中等部から高等部まで各学年1人ずつ計6人とサヨが中央で対峙する。
メンバーには、シェリとケイティもいた。
選手たちは緊張でガチガチになっている。

「随分、緊張していますね。それでは、思うように動けませんよ。私は、どこにでもいる普通の魔術師です。試しにひとつ魔法を見せますね。『稲妻』ブリッツ

サヨが魔法を唱えると、空から稲光が落ち轟音と共に離れた場所の地面に直径5mのクレーターができた。
観客席には結界が施してあるのだが、衝撃でヒビが入っている。

「ほら、魔法もこれくらいの威力しかないでしょう?普通ですよ」

「「「「「……普通じゃない!」」」」」
「さすがサヨ様!」

「ほぇ?」

サヨがシェリ以外の選手にツッコミを入れられているなか、学園側は結界の強化をするために右往左往していて、クロードも頭を抱えながら協力していた。
一方、アルたちの方では、珍しい光景が広がっていた。

「サヨは手加減が上手だよね~。ちゃんと普通に見えるよ」

「そうだな。家で見た時は、あれの倍以上大きな穴が空いてたからな」

「手加減は苦手だったのに、頑張ったんですね」

「いやいやいやいや、ミゲル!ネイサンもしっかりしろ!あれが普通なわけないだろ!」

「「え?」」

「感覚が麻痺してるよ。普通は穴ができても直径30㎝位だからね」

「そうだったか?」
「そうでしたか?」
「そうなんだ~」

「「これは、ダメだ」」

 珍しくアダムがミゲルたちを諭していた時、選手の方は緊張ではなく恐怖でガチガチになっていた。
しかし、それをまだ緊張しているからだと勘違いしたサヨの言葉に、恐怖どころではなくなった。

「それじゃあ、次は当てるつもりで攻撃しますので、ちゃんと避けて下さいね」

「「「「「「え?」」」」」」

『稲妻』ブリッツ

その時、選手たちの頭には同じ事が浮かんだ。

((((((死ぬ……避けなきゃ絶対死ぬ!))))))

少女たちは、動けなかったのが嘘のように、素早く逃げたがそれで終わりではなかった。

「逃げるだけじゃなくて、攻撃して下さい!攻撃しないなら、どんどん行きますよ~!」

それを聞いて、少女たちの気持ちはひとつになった。

((((((こんな攻撃され続けたら、命はない!協力して倒す!))))))

少女たちの瞳に力が宿るのを見たサヨは、いったん攻撃を止めて話しかけた。

「それじゃあ、ここからが本番ですね。全力で……かかってきなさい!」





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