目覚めたら地下室!?~転生少女の夢の先~

そらのあお

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冒険者~修行~

学園祭~迷子~

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学園祭の招待状をもらってから一ヶ月後、フェリーチェとアルベルトは馬車で移動していた。
同じ馬車にはクロードとサマンサが乗っていて、もう1台の馬車にはライリーとオリビアそして、使用人の仕事を叩き込まれたガイが乗っていた。

「楽しみだな~。お兄様たちの試合は午後からだったよね」

「そうよ。午前は生徒会で見回りをしたり、クラスの手伝いをしているはずよ」

「じゃあ会えないの?」

「難しいかもしれないわね。でも、商店の主張店もあるし生徒が出店したりしてるから、午後まで退屈しないと思うわ」

「うん!どんなお店かな~」

フェリーチェとサマンサが、和やかな会話をしている横では、アルベルトとクロードが真面目な顔で話していた。

「アル、分かってるな」

「えっと、目立たず騒がず巻き込まれず。迷子になったら、動かず連絡する……でしょう?」

「学園は広いからな。はぐれたら、その場を動かない方が見つけやすい」

「それは分かったよ。でもさ‘巻き込まれず’は、自分たちじゃどうしようもないよ」

「それはそうだ。だが意識していれば、気を付けるだろう。いざとなれば、私の名前を出してかまわんからな」

「は~い」

それから他愛ない話をしていると、学園に着いたらしく馬車が停車した。
馬車を降りて受け付けに向かうと、長い列ができていたが、係員の仕事が早くあまり待つ事なく受付をすませ中に入れた。

「「おぉ~」」

「フフフッ……それじゃあ行きましょうか」

「私たちは先に学園長に会ってくる。終わったら連絡を入れるから、後で合流しよう」

クロードとサマンサが、ライリーを伴って別行動となり、フェリーチェたちは店を見て回った。

「オリビア、あれ何?」

「あれは、学生の店ですね。魔道具の店のようです」

「あれって卵?」

「魔物の卵ですよ。卵から孵化させると、野生の魔物より懐きやすく従魔にしやすいのです」

「へぇ~…………フェリ、そんな目で見てもダメだからね」

「フェリーチェ様、従魔は魔物の生態や育て方をしっかり学んでからの方がよろしいですよ」

「……は~い」

「あっ!骸骨がある。ほら仲間だよ、ガイ!………はどこ行った!?」

「「え?」」

アルベルトの言葉に、全員がガイのいた場所を見ると彼の姿がなくなっていた。

「さっきから静かだと思ってたけど、そういえばガイに魔道具渡してたっけ?」

「私は渡してないよ」

「探した方が良さそうですね」

「父様に連絡しておくよ」

しばらく近くを探してみたが見つからず、『探索』サーチで探す事にした。

「どうですか?」

「あっちの建物の中みたい」

「あそこは教室などがある棟ですね」

「何でまたそんなとこに。取り合えず行ってみよう」

3人はガイを探しに向かった。
ガイがいる建物に入ると、学生が慌ただしく動きながらもフェリーチェとアルベルトをチラチラ見ていた。

「お二人とも私から離れないで下さい」

「「うん」」

「フェリ、どっちの方?」

「えっと……そこを右」

「貴様等ここで何をしている!」

フェリーチェの案内で右に曲がろうとした時、突然怒鳴られたので声の方を向くと、少年3人が立っていた。
すかさずオリビアが2人を隠すように前に出た。

「当家の使用人が1人迷い混んだようで、探しておりました」

「……おい、誰が貴様に話せと言った。使用人ごときが、俺に直接話しかけるな!」

「……申し訳ありません」

オリビアに怒鳴る少年の後ろの2人はニヤニヤしているが、フェリーチェはムッとした顔をして、アルベルトの目は冷めていた。
その後もオリビアに怒鳴る少年に、2人は我慢できず前に出た。

「いい加減にして!オリビアは貴方の質問に答えただけでしょ!」

「何だガキ!俺か誰が分かって言ってるのか!」

「知るわけないでしょ。名乗りもしないで怒鳴り散らして。君こそ誰に向かってものを言ってるか分かってるのか?」

「生意気な!俺はボブ・ダイナーだ!ダイナー伯爵家の次男だぞ!」

「「モブ?」」

「ボブだ!貴様等がどこの家の者か知らんが、伯爵家に楯突いてただで済むと思うなよ!」

嫌な笑みを浮かべるボブに、アルベルトが口を開こうとした時、ボブたちの後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。

「何を騒いでいる」

「な!?ミ、ミゲル……様」

「またお前かボブ。様はいらん、学園内で身分は関係ないからな。いったい今度は何だ?」

「グッ……俺は何も……」

「嘘は良くないよ。僕たちに怒鳴ってたじゃないか」

「ただじゃ済まさないって言った!」

「黙れ!このガ――」

「アルにフェリか?何をしてるんだ」

「え?」

2人の声を聞いて、ミゲルがボブたちを避けながらフェリーチェたちの方に歩いてきた。

「あのね、ガイが迷子になったから探してたの」

「そしたら、あいつ等が絡んできたんだ」

「何をやってるんだあの骨は」

「申し訳ありませんミゲル様」

「お前が謝る事じゃない。しょうがない、私も一緒に行くよ」

「「良いの?」」

「少しの間なら大丈夫だ。お前たちだけでは心配だしな。ボブ、私の弟と妹と当家の使用人が世話になったな。失礼する」

「そ、それじゃあファウスト家の……」

ミゲルたちが去った後には、顔を青ざめさせ動けない3人が取り残されていた。
それからフェリーチェたちは、ミゲルに付き添われていたので、ガイを見つけるまで絡まれる事はなかった。

「ここにいるみたい」

「ここですか?」

「ここって」

「ここは……魔道具研究室だな」

「「魔道具研究室……ガイ!?」」

フェリーチェとアルベルトがドアを開けて中に入ると、そこには女の子に馬乗りされて服を脱がされかけてるガイがいた。

「「「「「「…………………」」」」」」

中の2人とフェリーチェたちは無言で見つめ合い、ミゲルとオリビアがフェリーチェとアルベルトの目を隠しながらドアを閉めた。

「「お邪魔しました」」

「行かないで―――!助けて―――!」

「ダメよ!まだこれからなんだから!」

部屋の中から助けを求められ、フェリーチェたちはもう一度中に入った。
ガイは女の子を振り切り、ミゲルの後ろに隠れた。

「お前は何をしてるんだ。ケイティ」

「あら、ミゲルじゃない。何をしてるかですって?もちろん、魔道具の研究よ。もしかして、彼の知り合い?彼は何なの?見た目は人間なのに、魔道具よね!しかも、自我があるわ!見つけた瞬間、わたしに彼を研究しなさいという神の声が聞こえたわ!」

「「「………………」」」

「幻聴だな。こいつは人間で、当家の使用人だ。返してもらうぞ。お前は生徒会の仕事に戻れ」

「「生徒会!?」」

「人間ですって?わたしの目は誤魔化されないわよ!貴方はわたしのスキルを知ってるでしょう?それでも人間だと言うの?」

「仕事に戻れって言ったのは聞いてないね」

「そうだね。スキルって何だろ」

「こいつは人間だ。それが我がファウスト家の見解であり、お前にこいつを調べる権利はない」

「あら、貴方が家の名前を出すなんて……分かったわ。今回は引くわよ。でも、わたしは諦めないわ!いつか彼を調べて調べて調べつくしてあげるから!では、ごきげんよう!」

「ヒィ!」

彼女は去り際に、捕食者の目でガイを見てから颯爽と歩いて行った。
フェリーチェたちは、それを唖然と見送ってから口を開いた。

「な、何か変わった人だね」

「生徒会って本当なの?」

「ああ見えて、優秀なんだ。ただ、魔道具の事になるとな。さて、ガイも見つかった事だし外に出ようか」

「うん。でもその前に……ガイ、この指輪してなよ。『隠匿』の効果が付与されてるから」

「こっちのピアスは『通信』ができるから、何かあったら使ってね」

「アルベルト、フェリーチェもありがとう!」

ガイはすぐに指輪をはめて、ピアスを右耳に突き刺した。
もちろん、ガイには痛みも出血もなかったが、フェリーチェたちは、それに若干引きながら出口に向かって歩きだした。
外に出ると、仕事のあるミゲルと別れて店のある場所に向かったが、そこでも騒動に巻き込まれる事になど、本人たちは知るよしもなく呑気に歩いていた。




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