目覚めたら地下室!?~転生少女の夢の先~

そらのあお

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冒険者~修行~

彼の扱い

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フェリーチェたちは、‘若返りの雫’でガイの体ができてしまったので、異常がないか調べる事にした。

「ガイ、記憶は戻ってる?」

「……我こそは魔王だ!平伏せ愚民ども!」

「うん。戻ってないね」

「それにしても、骨から体ができてるなんて。あれって若返る効果なんでしょう?生きてる魔道具だから効いたのか?」

「ビンにはそう書いてたんだ。しっかし、ガイ以外に当たらなくて良かったぜ」

「アルベルト以外だったら消えてたな。まぁ、これなら普通に出歩けるだろ」

「『心眼』で見たけど、完全に人間の体じゃないみたい。心臓とかの臓器がないし、頭には魔石があるから」

「戻っていろいろ実け……調べてみよう」

「今、実験って言いかけたよな?おい、目を反らすなアルベルト!何するつもりなんだ!?」

ガイがアルベルトを問い詰めていると、ミゲルたちが姿を見せた。

「さっきから騒がしいが、またアダムか?」

「懲りない人ですね」

「兄上、少しは自重しなよ」

「お兄様、迷惑をかけたらダメです」

「お前たち失礼だな!?俺だけど!」

部屋に入りながら、口々にアダムを注意する4人はアダムの抗議に答えられなかった。
何故なら、見知らぬ青年が部屋にいたからだ。

「「「「どちら様?」」」」

「何言ってんの?僕だよ僕!ガイだよ!」

「「「「え?」」」」

困惑している4人に事情を話すと、驚きながらも納得していた。
取り合えず、全員で部屋の整理とあるもののリストを作り、上に戻る事になった。
そのまま王宮に戻り、死んだように倒れているドワーフ2名を視界に入れつつ、エヴァンたちにも事情を話した。
アダムは軽率な行動をルイスに怒られ、ガイはクロードに連行されてしまった。

「アダム!ガイに当たったから良いものの、今しっかりしないと、将来エヴァンみたいになりますよ!」

「おいこら!どういう意味だ!」

「お前たちは帰っていなさい。私はちょっと実け……調べたいのでな」

「ギャー!この似た者親子!止めろ引っ張るな!」

「大丈夫だ。優しくしてやる」

「何をだ――――!」

「まぁなんだ……よし、解散!」

クロードとガイに手を振っていたフェリーチェたち4人と、怒られているアダムを見守っていたディランとグレースは、オースティンの言葉を合図に部屋を出る事にした。

「じゃあ帰るか。叔父上、今日はありがとうございました」

「ありがとうございました。叔母上とリヒトにも会いたいので、今度そちらに伺います」

「僕もやりたかったな~。じゃあねオースティン、明日もよろしく師匠」

「ありがとうございました。明日もよろしくお願いします」

「おう!気を付けて帰れよ」

「僕たちも戻ります。叔父上、ありがとうございました」

「叔父様、ありがとうございました」

「気にするな。ゆっくり休むんだぞ。じゃなルイス、俺はクロードのとこに寄って帰るから」

部屋に取り残されルイスの説教を受けていたアダムは、この後アンドリアが乱入してきて、肉体的な説教をされる事など知るよしもなかった。
フェリーチェたちが自宅に戻り、夕食の時間になってもクロードとガイは戻って来なかった。

「あの人も夢中になると、時間を忘れてしまうのよね。後で通信を入れてみるわ」

「ガイは災難だね。そういえば、お兄様たちはいつまでお休みなの?」

「残念だが、明日には戻らないといけないんだ」

「そっか~」

「そんな顔しないでフェリ、今日はこれを渡しに帰って来たんですよ」

「な~に?」

「アルベルトにもあるぞ」

「なになに?」

明日帰ると聞いて眉を下げるフェリーチェに、ネイサンが封筒を差し出した。
隣に座っているアルベルトには、ミゲルが同じ封筒を渡した。
2人が封筒を開けるとカードと紙が入っていた。
フェリーチェの方の紙を読むと、

~招待状~

フェリーチェ・ファウスト様
この度、我が王立ラディウス学園で開催される中等部・高等部合同学園祭に招待致します。
当日は、同封されているカードをお持ち下さい。

と書いてあり、日付と受け付け場所も下に書いてあった。
アルベルトの方も同じ内容のようだ。

「「学園祭?」」

「学園祭自体は毎年あるんだが、普段は外部の招待はしてないんだ」

「今年は3年に1度の学園対抗戦があるんです。学園祭はその前哨戦で、対抗戦に出るメンバーを決めるんですよ」

「だから対抗戦がある年の学園祭には、外部から招待できるんだが、人数は限られてるんだ。学生1人につき2人までと決まってる」

「父上と母上とアルベルトとフェリーチェで4人です。もちろん、使用人は別に連れて行けますよ」

「へぇ~面白そうだね」

「対抗戦って、戦闘するの?」

「剣と魔法、他にも頭脳と芸術でも競い合うんだ」

「懐かしいわね~。対抗戦ではお父様は魔法部門で、中等部でも高等部でも優勝してたのよ。ミゲルも中等部で優勝したから、今年は兄弟で優勝かしら?」

「母上、気が早いですよ。僕たちよりも優秀な生徒はいるんですから」

「そんな事言って、2人とも負ける気なんてないくせに」

「当然です」

「出るからには負けるつもりはない。まずは学園祭だけどな」

「頑張ってミゲルお兄様、ネイサンお兄様。いっぱい応援するからね」

「僕も応援するよ」

「「ありがとう」」

和やかな夕食を終えて、就寝の時間になってもクロードたちは戻らず、彼等が姿を見せたのは午前の授業の時だった。

「「おかえりなさい。おはようございます」」

「ただいま。おはようアル、フェリ」

「え~と、ガイは大丈夫?」

「目が死んでるけど」

フェリーチェとアルベルトの視線の先には、直立不動でピクリとも動かないなガイがいた。
しかし2人を認識したのか、ガイの目がだんだん潤んできて、素早い動きでフェリーチェに抱き付いた。

「わ~ん!怖かったよ~!」

「わっ!?……よ、よしよし」

「ガイ!僕のフェリに抱き付くな!離れろ!」

「ギャー!」

抱き付いたガイに驚きながらも、慰めようと頭を撫でるフェリーチェだったが、アルベルトにはそれが許せず、すぐにガイを引き離し投げ飛ばした。

「アル、ガイも大変だったみたいだから」

「やって良い事と悪い事は、早めに躾ないとダメなんだよ」

「も~……ガイ、大丈夫ぶ?……あれ?寝てるみたい」

「昨日は寝てないからな。今日は、ガイについて分かった事を教えておく。ガイの所有者はフェリだからな」

「「……は~い」」
((寝てないからって……寝かせなかったのは自分なのに))

他人事のように言うクロードに唖然としながら、ガイについての説明を聞いた。

○ガイの体は、見た目は人間だが中身は以前と変わらず、魔道具として機能している。魔石を核として、吸収した魔素や食事を寝ている間にエネルギーに変換して動いている。
○攻撃を受けると、表面が傷付いたり剥がれるが骨は傷が付かない。表面は治癒魔法で治す事ができる。
○ガイの魔法がショボいのは、おそらく勇者の光の属性と魔王の闇の属性が反発している。もしくは、魔法の使い方を忘れている。
○体を手に入れてから、涙が出るようなった。

「昨日の段階で、分かっているのはこれだけだ。また実験すれば、他にも分かるだろ」

(はっきり実験って言っちゃった)

(今度は僕もやりたいな)

その後、クロードに引きずられたり、アルベルトに追いかけ回されたり、フェリーチェに泣き付いてはボコられるガイが、たびたび目撃されたという。


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