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出会い
誕生祭~歪み~
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(あれ?私、何してたんだっけ……パレード見てたらサイクロプスとかワイバーンが襲ってきて……そうだ、お母様たちがいなくなって探してたんだ。それから……お母様とアンジェラさんが泣いてて……何で泣いてたんだっけ?……あぁ……お兄様たちが……治さなきゃ……誰?誰がこんな……何か耳障りな声が聞こえる……あいつかな?)
(……なら……ころさないと)
(でも……目的を聞き出さないと)
(どうして?おにいさまたちに、けがさせたのに)
(お兄様たちは助けられた)
(でも……いたかった……おかあさまもないてた……ゆるすの?)
(許さない)
(ゆるさない)
(喪いたくない)
(うばわれたくない)
フェリーチェの頭が、感情がスーと冷えていく。
フェリーチェは男に向かって歩き出した。
引き止める声が聞こえ、目を見開くレグルスを視界のすみに捉えたが、私は歩みを止めなかった。
「あ゛あ゛ーーーい゛た゛い゛!た゛す゛け゛でーーー!」
「うるさいですね。あなたは誰で目的は何ですか?」
「ギィヤーーーーー!」
「答えなさい」
フェリーチェが手を振ると男が動きを止め立ち上がり、唖然としたまま呟いた。
「痛みが無くなりましたぁ。あなたが助けてくれたんですかぁ?ありがとうございますぅ。わたしはぁゼロ、殺し屋でぇす。」
痛みが無くなり喜んだゼロがフェリーチェに近付き手を握った瞬間、スキルを発動する。
「『生命吸収』」
「あれぇ?力がぬけますぅ~」
フェリーチェはゼロが逃げられないようにギリギリまでHPとMPを吸収する。
「たくさん苦しんで下さい」
「え?」
フェリーチェはその後、あらゆる魔法を使い骨を粉々に砕いては治し、何ヵ所も貫いては治し、切り刻んでは治して何度も何度も繰り返していたが、最初は叫んで助けを求めていたゼロの反応が無くなっていた。
そして、フェリーチェも動けなくなっていた。
(あれ?うごかない)
「フェリ、終わりだよ」
(まだだよ……まだまだ、くるしめないといけないの)
「もう、いいんだ」
(ころさなきゃ……また、うばわれる……じゃましないで)
「奪われないよう皆で考えよう。だから、もう終わろう。お母様たちも心配してるよ」
(おかあさま……うん……)
「フェリーチェ」
「……アル?何で大きくなってるの?私……何して……」
「大丈夫、全部終わったよ。家に戻ろう?」
「うん……すぅ~」
「お休みフェリーチェ」
アルベルトはフェリーチェが眠りにつくと、抱き上げて黙って見守っていた者たちの元に連れていった。
「フェリーチェは大丈夫なのか?」
「大丈夫だよオースティン。眠ってるだけだから」
「アル、フェリはいったいどうしたの?」
「お母様、話は戻ってからだよ。エヴァンたちもお父様とファウスト家にいるから、急いで戻ろう」
「アイツはどうする?」
「僕が連れていくよ。しばらく眠らせておく」
「おい、俺たちも行くぞ。その男、気になるからな」
レグルスとケイレブも行く事になった。
「みんな輪になって、転移するから」
アルベルトに言われた通り輪になると、直ぐに転移した。
――シュン
転移先はファウスト家の応接室で、クロードが待っていた。
ちょうどその時、ミゲルとネイサンが目を覚ました。
「うっ……私は……あっ、ネイサン!?ネイサンはっ!」
「落ち着けミゲル」
「父上!ネイサンが!」
「兄上……私は大丈夫です」
「ネイサン……どうなってる?」
「あなたたちは助かったのよ。アンジェラとケイレブ……フェリーチェが助けてくれたの」
「「母上……アンジェラさん、ケイレブさんありがとうございました。」」
「いいえ、わたしはフェリーチェが来るまでもたせていただけですから」
「同じく。その子がいなければどうにも出来なかった」
2人がフェリーチェの方を見るが、眠ったままだった。
「フェリは……寝ているのか?」
「何があったんですか?」
その疑問に答えられる者はおらず、沈黙が続いたがアルベルトが静かに口を開いた。
「取り合えず、エヴァンたちと待っててもらえないかな?さっきのことを話す前に、確認したい事があるんだ」
「分かった。皆、行くぞ」
戸惑いながらもクロードに促され移動した。
2人だけになった部屋でアルベルトはフェリーチェを起こした。
「フェリ……起きて、フェリーチェ」
「うっ……アル?……っお兄様たちは?」
「大丈夫。皆、助かったよ。ここはファウスト家だ。眠る前のこと覚えてる?」
「何となく……何か、頭の中で声がして……あれは……私?」
「やっぱりか。たぶんそれは、しいて言うなら『4歳のフェリーチェ』かな?」
「え?……どういうこと?」
「これはあくまで推測だけと、フェリは前世の『小夜』としての記憶と知識があって、今は『小夜』が前面に出てるけど、ちゃんと『4歳のフェリーチェ』の意識もあるよね?」
「うん。時々、引っ張られてるっていうか……子どもみたいに甘えたり、拗ねたりしちゃうの。分かってても止められない感じかな」
「それだよ。普段は『小夜』がある程度『4歳のフェリーチェ』を制御……抑制してる状態だけど、今回は『4歳のフェリーチェ』の‘奪われたくない’って感情に『小夜』も同調したから」
「抑制できずに、ああなったって事?」
「『小夜』は前世の幸せな記憶があるけど、『4歳のフェリーチェ』には今がやっと感じられる幸せだからね。言い方は悪いけど、その差が歪みになってるんだ」
「失いこと、奪われることへの畏れの強さか……どうしよう?皆、変に思ったよね」
「この際だから、話した方がいいかもしれない。今後も同じことが無いとも限らないし、事情を知ってる僕が一緒にいる時か分からないからね」
「……分かった」
アルベルトとフェリーチェはエヴァンたちの元へ向かった。
部屋にはエヴァンたち王族と、オースティンのパーティー、ファウスト家、3種族代表、レグルスとケイレブが待っていた。
まずはクロードが口を開いた。
「それで何があった?」
「まずは、私から話すわ」
そう言ってサマンサは避難してからの事を話し出した。
話を聞き終えたクロードは怒りを感じながらも、どこかホッとしたように見えた。
「しかし、何故レグルスたはちはあそこにいたんだ?」
「暇だったから散歩してたんだよ」
「邪悪な魔力を感じました。近くにサマンサ様たちの魔力があったので急いで駆け付けたんです」
「しかし、あのゼロとかいう男、いきなり苦しみ出したんだ」
「それは僕のせいだよ。あいつが召喚したサイクロプスを強制的に返したから」
「お前、そんな事も出来るのか!?」
「魔力のゴリ押しだけどね。後処理を話し合ってる時に、フェリの魔力が変質したからオースティンと転移したんだ」
アルベルトの言葉にクロードが反応した。
「魔力が変質?何があった」
「それはわたしも感じました。ミゲルとネイサンの治療をした後に」
「その事について説明する前に、言わないといけない事があるんだ。お父様は薄々感ずいてるみたいだけどフェリは……転生者だ」
「「「「転生者!?」」」」
「やはりか」
フェリーチェが転生者という事に、驚く者と納得する者、様々だった。
「私は……前世の記憶があります。前世は『小夜』という名前で、日本という国に生まれました。孤児院に捨てらたけど、院長先生夫婦に大事にしてもらって兄弟もいて幸せでした。でも、18歳の時に通り魔に刺されて死にました。意識が戻ったら、あの地下室だったので驚きました」
フェリーチェが話し終わると、エヴァンが何か思い出しながら口を開いた。
「なぁ……ニホンって言ったよな?」
「はい」
「あぁ~……うちのじいさんは転移者なんだが、確かニホンから来たって言ってたんだよ。なぁアネモスじぃ」
「確かそうだったと思うよ。と言うことは同郷なのかな?」
「不思議な縁があるもんだな」
「それで?それだけじゃないだろう?」
呑気な2人を無視してクロードが先を促した。
「うん。これから話す事は、フェリーチェの中に『小夜』の意識と『4歳のフェリーチェ』の意識があるという前提の話しになる」
「分かった」
アルベルトの言葉に全員が頷いたので、2つの意識の歪みについて話した。
話し終り、うつむくフェリーチェに声をかけたのはミゲルとネイサンだった。
「フェリ、助けてくれてありがとう。それから、そんな思いをさせてすまなかった」
「フェリ、本当にありがとう。妹にそんな思いをさせるなんて情けないです。苦手とか言ってないで接近戦の訓練をしなくてはいけないね」
「そうだな。あれくらいの攻撃、避けて反撃できないとな」
「ミゲルお兄様、ネイサンお兄様」
「頼もしいわね。ねぇフェリ、感情を抑制する必要はないわ。記憶があっても今の貴女は子どもなの。甘えたり、拗ねたり、我が儘を言ってもいいのよ」
「お母様」
「そうだな。子どもにされて嫌な事はないさ。ミゲルやネイサンなんか、甘えたで我が儘だったぞ。当然、やり過ぎれは怒ったがな。フェリもやり過ぎた時は、同じように怒るから安心しろ」
「「ちょっ、父上!?」」
「お父様……うん、ありがとう」
フェリーチェが笑うと、見守っていた者たちもホッとしていた。
穏やかな空気が流れるなか、空気を読まない人間は何処にでもいるもので、此処も例外ではなかった。
「ところで、さっきから気になってたんだけど、フェリーチェと一緒に来たあんたは誰なんだ?アルベルトはどこに行ったんだ?」
「……兄上……空気読んで下さいよ。話の流れで分かるでしょう!」
「わたしも分かりましたよお兄様」
「我が息子ながら情けない」
「あ~……フォロー出来ない。話さなかったのは俺だけど」
「それじゃあ、改めて」
アルベルトが変化して、子どもの姿になりにっこり笑いながら言った。
「僕がアルベルトだよ。本当は人間じゃなくて黒龍なんだ!よろしくね、アダム!」
「「黒龍!?」」
アルベルトの正体を知って驚くディランとグレース。
しかし、アダムはアダムだった。
「アルベルト!?……小さくなったり、大きくなったり……器用だな!」
「「「そこじゃねぇ!」」」
アダムのズレた感想にミゲルとネイサンとディランがツッコムと笑いが広がった。
その中で1人の男が内心、冷や汗をかいていた。
(あぁ~聞かなくて良かった。まさかあれがアルベルトだったとは。兄弟かと思ったぜ)
そして、その男を冷やかに見ている騎士が1人。
(野生の勘はするどいのに、どっか抜けてるんだよな)
(……なら……ころさないと)
(でも……目的を聞き出さないと)
(どうして?おにいさまたちに、けがさせたのに)
(お兄様たちは助けられた)
(でも……いたかった……おかあさまもないてた……ゆるすの?)
(許さない)
(ゆるさない)
(喪いたくない)
(うばわれたくない)
フェリーチェの頭が、感情がスーと冷えていく。
フェリーチェは男に向かって歩き出した。
引き止める声が聞こえ、目を見開くレグルスを視界のすみに捉えたが、私は歩みを止めなかった。
「あ゛あ゛ーーーい゛た゛い゛!た゛す゛け゛でーーー!」
「うるさいですね。あなたは誰で目的は何ですか?」
「ギィヤーーーーー!」
「答えなさい」
フェリーチェが手を振ると男が動きを止め立ち上がり、唖然としたまま呟いた。
「痛みが無くなりましたぁ。あなたが助けてくれたんですかぁ?ありがとうございますぅ。わたしはぁゼロ、殺し屋でぇす。」
痛みが無くなり喜んだゼロがフェリーチェに近付き手を握った瞬間、スキルを発動する。
「『生命吸収』」
「あれぇ?力がぬけますぅ~」
フェリーチェはゼロが逃げられないようにギリギリまでHPとMPを吸収する。
「たくさん苦しんで下さい」
「え?」
フェリーチェはその後、あらゆる魔法を使い骨を粉々に砕いては治し、何ヵ所も貫いては治し、切り刻んでは治して何度も何度も繰り返していたが、最初は叫んで助けを求めていたゼロの反応が無くなっていた。
そして、フェリーチェも動けなくなっていた。
(あれ?うごかない)
「フェリ、終わりだよ」
(まだだよ……まだまだ、くるしめないといけないの)
「もう、いいんだ」
(ころさなきゃ……また、うばわれる……じゃましないで)
「奪われないよう皆で考えよう。だから、もう終わろう。お母様たちも心配してるよ」
(おかあさま……うん……)
「フェリーチェ」
「……アル?何で大きくなってるの?私……何して……」
「大丈夫、全部終わったよ。家に戻ろう?」
「うん……すぅ~」
「お休みフェリーチェ」
アルベルトはフェリーチェが眠りにつくと、抱き上げて黙って見守っていた者たちの元に連れていった。
「フェリーチェは大丈夫なのか?」
「大丈夫だよオースティン。眠ってるだけだから」
「アル、フェリはいったいどうしたの?」
「お母様、話は戻ってからだよ。エヴァンたちもお父様とファウスト家にいるから、急いで戻ろう」
「アイツはどうする?」
「僕が連れていくよ。しばらく眠らせておく」
「おい、俺たちも行くぞ。その男、気になるからな」
レグルスとケイレブも行く事になった。
「みんな輪になって、転移するから」
アルベルトに言われた通り輪になると、直ぐに転移した。
――シュン
転移先はファウスト家の応接室で、クロードが待っていた。
ちょうどその時、ミゲルとネイサンが目を覚ました。
「うっ……私は……あっ、ネイサン!?ネイサンはっ!」
「落ち着けミゲル」
「父上!ネイサンが!」
「兄上……私は大丈夫です」
「ネイサン……どうなってる?」
「あなたたちは助かったのよ。アンジェラとケイレブ……フェリーチェが助けてくれたの」
「「母上……アンジェラさん、ケイレブさんありがとうございました。」」
「いいえ、わたしはフェリーチェが来るまでもたせていただけですから」
「同じく。その子がいなければどうにも出来なかった」
2人がフェリーチェの方を見るが、眠ったままだった。
「フェリは……寝ているのか?」
「何があったんですか?」
その疑問に答えられる者はおらず、沈黙が続いたがアルベルトが静かに口を開いた。
「取り合えず、エヴァンたちと待っててもらえないかな?さっきのことを話す前に、確認したい事があるんだ」
「分かった。皆、行くぞ」
戸惑いながらもクロードに促され移動した。
2人だけになった部屋でアルベルトはフェリーチェを起こした。
「フェリ……起きて、フェリーチェ」
「うっ……アル?……っお兄様たちは?」
「大丈夫。皆、助かったよ。ここはファウスト家だ。眠る前のこと覚えてる?」
「何となく……何か、頭の中で声がして……あれは……私?」
「やっぱりか。たぶんそれは、しいて言うなら『4歳のフェリーチェ』かな?」
「え?……どういうこと?」
「これはあくまで推測だけと、フェリは前世の『小夜』としての記憶と知識があって、今は『小夜』が前面に出てるけど、ちゃんと『4歳のフェリーチェ』の意識もあるよね?」
「うん。時々、引っ張られてるっていうか……子どもみたいに甘えたり、拗ねたりしちゃうの。分かってても止められない感じかな」
「それだよ。普段は『小夜』がある程度『4歳のフェリーチェ』を制御……抑制してる状態だけど、今回は『4歳のフェリーチェ』の‘奪われたくない’って感情に『小夜』も同調したから」
「抑制できずに、ああなったって事?」
「『小夜』は前世の幸せな記憶があるけど、『4歳のフェリーチェ』には今がやっと感じられる幸せだからね。言い方は悪いけど、その差が歪みになってるんだ」
「失いこと、奪われることへの畏れの強さか……どうしよう?皆、変に思ったよね」
「この際だから、話した方がいいかもしれない。今後も同じことが無いとも限らないし、事情を知ってる僕が一緒にいる時か分からないからね」
「……分かった」
アルベルトとフェリーチェはエヴァンたちの元へ向かった。
部屋にはエヴァンたち王族と、オースティンのパーティー、ファウスト家、3種族代表、レグルスとケイレブが待っていた。
まずはクロードが口を開いた。
「それで何があった?」
「まずは、私から話すわ」
そう言ってサマンサは避難してからの事を話し出した。
話を聞き終えたクロードは怒りを感じながらも、どこかホッとしたように見えた。
「しかし、何故レグルスたはちはあそこにいたんだ?」
「暇だったから散歩してたんだよ」
「邪悪な魔力を感じました。近くにサマンサ様たちの魔力があったので急いで駆け付けたんです」
「しかし、あのゼロとかいう男、いきなり苦しみ出したんだ」
「それは僕のせいだよ。あいつが召喚したサイクロプスを強制的に返したから」
「お前、そんな事も出来るのか!?」
「魔力のゴリ押しだけどね。後処理を話し合ってる時に、フェリの魔力が変質したからオースティンと転移したんだ」
アルベルトの言葉にクロードが反応した。
「魔力が変質?何があった」
「それはわたしも感じました。ミゲルとネイサンの治療をした後に」
「その事について説明する前に、言わないといけない事があるんだ。お父様は薄々感ずいてるみたいだけどフェリは……転生者だ」
「「「「転生者!?」」」」
「やはりか」
フェリーチェが転生者という事に、驚く者と納得する者、様々だった。
「私は……前世の記憶があります。前世は『小夜』という名前で、日本という国に生まれました。孤児院に捨てらたけど、院長先生夫婦に大事にしてもらって兄弟もいて幸せでした。でも、18歳の時に通り魔に刺されて死にました。意識が戻ったら、あの地下室だったので驚きました」
フェリーチェが話し終わると、エヴァンが何か思い出しながら口を開いた。
「なぁ……ニホンって言ったよな?」
「はい」
「あぁ~……うちのじいさんは転移者なんだが、確かニホンから来たって言ってたんだよ。なぁアネモスじぃ」
「確かそうだったと思うよ。と言うことは同郷なのかな?」
「不思議な縁があるもんだな」
「それで?それだけじゃないだろう?」
呑気な2人を無視してクロードが先を促した。
「うん。これから話す事は、フェリーチェの中に『小夜』の意識と『4歳のフェリーチェ』の意識があるという前提の話しになる」
「分かった」
アルベルトの言葉に全員が頷いたので、2つの意識の歪みについて話した。
話し終り、うつむくフェリーチェに声をかけたのはミゲルとネイサンだった。
「フェリ、助けてくれてありがとう。それから、そんな思いをさせてすまなかった」
「フェリ、本当にありがとう。妹にそんな思いをさせるなんて情けないです。苦手とか言ってないで接近戦の訓練をしなくてはいけないね」
「そうだな。あれくらいの攻撃、避けて反撃できないとな」
「ミゲルお兄様、ネイサンお兄様」
「頼もしいわね。ねぇフェリ、感情を抑制する必要はないわ。記憶があっても今の貴女は子どもなの。甘えたり、拗ねたり、我が儘を言ってもいいのよ」
「お母様」
「そうだな。子どもにされて嫌な事はないさ。ミゲルやネイサンなんか、甘えたで我が儘だったぞ。当然、やり過ぎれは怒ったがな。フェリもやり過ぎた時は、同じように怒るから安心しろ」
「「ちょっ、父上!?」」
「お父様……うん、ありがとう」
フェリーチェが笑うと、見守っていた者たちもホッとしていた。
穏やかな空気が流れるなか、空気を読まない人間は何処にでもいるもので、此処も例外ではなかった。
「ところで、さっきから気になってたんだけど、フェリーチェと一緒に来たあんたは誰なんだ?アルベルトはどこに行ったんだ?」
「……兄上……空気読んで下さいよ。話の流れで分かるでしょう!」
「わたしも分かりましたよお兄様」
「我が息子ながら情けない」
「あ~……フォロー出来ない。話さなかったのは俺だけど」
「それじゃあ、改めて」
アルベルトが変化して、子どもの姿になりにっこり笑いながら言った。
「僕がアルベルトだよ。本当は人間じゃなくて黒龍なんだ!よろしくね、アダム!」
「「黒龍!?」」
アルベルトの正体を知って驚くディランとグレース。
しかし、アダムはアダムだった。
「アルベルト!?……小さくなったり、大きくなったり……器用だな!」
「「「そこじゃねぇ!」」」
アダムのズレた感想にミゲルとネイサンとディランがツッコムと笑いが広がった。
その中で1人の男が内心、冷や汗をかいていた。
(あぁ~聞かなくて良かった。まさかあれがアルベルトだったとは。兄弟かと思ったぜ)
そして、その男を冷やかに見ている騎士が1人。
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