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出会い

ファウスト家

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馬車が止まり扉が開くと、クロードが先に降りて私とアルを抱えて降ろした。
クロードが玄関に歩きだしたので、後ろを着いていくと、玄関が開き執事が出てきた。

「お帰りなさいませ旦那様」

「あぁ全員そろっているか?」

「はい。執務室に集まっております」

「そうか、2人の紹介は執務室でするから着いてきてくれ」

「「は~い」」

クロードに言われたとうり着いていくと、ある部屋の前で立ち止り、ドアを開けて中に入るよう促された。
部屋の中には4人いて、1人はソファに座っていたがクロードの姿を見ると立ち上がり口を開いた。

「お帰りなさいませ、あなた」

「あぁ、ただいま。さっそく紹介するがこの2人が……」

私たちを紹介するために、こちらを向いたクロードは眉間に皺を寄た。

「おい、どうしたんだ?そんな……ゴーストでも見たような顔をして」

「「あっ」」

「あ?」

「「あなたって……結婚してたの!?」」

「どういう意味だ」

「いや~何となく独身なのかなぁって思ってて」

「エヴァンが魔術バカって言ってたから、そういうのは興味ないのかと」

「私は公爵家の当主だから結婚するのは当たり前だ……まったく……改めて、妻のサマンサだ」

どうやらクロードは結婚していたようで、サマンサは青の髪に水色の瞳で、美人というより可愛い系の人だった。

「初めまして、クロードの妻のサマンサです。宜しくお願いします」

「初めまして、僕はアルベルトです。今日から宜しくお願いします」

アルが自己紹介すると、クロードがアルを凝視していた。
正直、私もそうしたい気持ちだったが自己紹介は大事だ。

「初めまして、私はフェリーチェです。宜しくお願いします」

「まぁ、旦那様には聞いていましたが、しっかり挨拶できて凄いわね」

サマンサが関心していると、クロードが戸惑いながらアルに話しかけた。

「おい、アルベルト、どうしたんだ?しゃべり方が……」

「いやだなぁクロード様、僕はいつもと変わりませんよ?」

アルがニコニコしながらクロードを見つめていると、諦めたのか他の人の紹介をしだした。

「まぁいい、出迎えたのが執事長のヘンリー、隣がヘンリーの妻でメイド長のミーガン」

「執事長のヘンリーです。宜しくお願いします」

「メイド長のミーガンです。宜しくお願いします」

ヘンリーは銀髪で蒼い瞳の男の人、ミーガンは明るい茶髪に栗色の瞳の女の人で、2人は穏やかに笑みをうかべながら頭を下げた。

「「宜しくお願いします」」

「次に、執事兼護衛のライリー、アルベルトの専属になる。メイド兼護衛のオリビア、フェリーチェの専属だ」

「「護衛?」」

「アルベルト様の専属のライリーです。宜しくお願いします」

「フェリーチェ様の専属のオリビアです。宜しくお願いします」

ライリーは白髪で銀の瞳をしていて、美形だが無表情。
オリビアは緑の髪に翠の瞳をした美人で、こちらはニコニコしているが、目は笑ってない。
2人とも10代後半位で、挨拶してくれたが不本意なのが滲み出ている。

「「宜しくお願いします」」

「他にも使用人がいるが、取り合えずこの4人は覚えておいてくれ」

「「はい」」

「では部屋に案内しよう。サマンサはもういいぞ。ヘンリーとミーガンは仕事に戻ってくれ」

「はい、分かりました」

「「失礼致します」」

クロードに案内され廊下を歩いている間、後ろの方から探るような視線を感じていた。

{ねぇアル……私たち、かなり警戒されてるね}

{そうだね。さっきから鑑定かけようとしてるから全部弾いてるよ。逆に怪しまれてるけど}

{私もだよ。でも、見られるわけにはいかないしね}

{それにしても、クロードはどこまで話したのかな?それによって対応も変わるんだけどね}

{後で聞いてみようよ}

{そうだね}

しばらく
歩くとクロードが立ち止まり、ライリーが前に出てドアを開くと、全員で中に入った。

「ここは、アルベルトの部屋だ。家具は揃えているが、必要な物があれば用意する。配置は好きに動かしていいからな」

「ありがとうございます」

「では次だ」

部屋を出て、隣の部屋のドアを今度はオリビアが開けて全員で中に入った。

「ここがフェリーチェの部屋だ。さっき言ったように足りない物があれば言ってくれ」

「はい、ありがとうございます」

「取り合えず部屋の案内はこれくらいにしよう。何か聞きたい事はあるか?」

クロードに聞かれたので、アルが思っていた事を質問した。

「クロード様、僕たちの事はどこまで話しているんですか?」

「優秀な孤児がいたから養子にすると言っているが」

「そうですか……出来ればこの2人じゃない方がいいんだけど……信用できないから」

「「何だと!」」

アルの言葉にライリーとオリビアが反応するが、クロードは冷静に聞いてきた。

「理由を聞いても?」

「理由ねぇ……当主に命じられているにも関わらず、護衛対象に殺気を見せるし、許可なく鑑定しようとする。正直言って……不愉快だ」

「貴様!クロード様に向かって何様だ!」

ライリーが怒鳴り、オリビアもアルを睨みつけ殺気が膨れ上がる。

(あ~あ、そんな事したらアルの龍スイッチが入っちゃうよ。まぁそれが狙いなんだろうけど)

私がさりげなくクロードに近付き、結界を張るとクロードが小声で話しかけつきた。

「すまないなフェリーチェ」

「どうして、こんなまわりくどい事するんですか?」

「あの2人は実力はあるが、視野が狭くてな。最初から黒龍だなんだと説明してもどうせ突っ掛かるから、痛い目を見た方が早いと思ってな」

「痛い目って……まぁアルも分かってるから、手加減はすると思いますけど」

私たちが話している間に、部屋の空気が重くなってきた。
原因はもちろんアルだ。

「粋がるなよ人間風情が……その程度の力で我等をどうにか出来ると本当に思っているのか!」

アルが殺気を叩き付けると2人は膝をつきながらも、負けじと睨み返す。

「貴様は何者だ!何が目的で子どもに化けて入り込んだ!」

「返答しだいでは、私たちの命と引き換えにしても貴方たちを殺します!」

「引き換えに?……クックッ、ハーハッハッハ!貴様ら程度では、我に傷一つつけることなどできぬわ!」

「「ぐっ」」

アルはさらに殺気を放ち、ドス黒いオーラを纏いだした。
それを見ながら、私とクロードは呑気におしゃべりをしていた。

「アルはノリノリですねぇ。いつまで続けるんですか?」

「さぁな……早く降参してくれればいいんだが」

「そういえば、サマンサさんやヘンリーさんたちは知ってるんですか?」

「言ってあるが、サマンサは自分の子どもとして育てると言っていたから、君たちさえよければ母と呼んでくれ」

「え?……いいんですか?」

「もちろんだ。私もそのつもりだからな」

「じゃっ、じゃあ……えっと……あのっ……お父様……って呼んでもいいですか?」

私が緊張しながら聞くと、クロードが頭を優しく撫でてくれた。

「フム……やはり娘はいいな。私たちもフェリと呼んでも?」

「はい!」

この世界で初めて‘父’と呼べる存在が嬉しくて、ニコニコしていると横から声がかかった。

「僕に面倒を押し付けておいて、ずいぶん楽しそうだね。フェリ、‘お・と・う・さ・ま’」

声の方を向くと、アルがジト目で私たちを見ていた。

「「あっ」」

どうやら向こうは終わったらしい。
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