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出会い
問い
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フェリーチェが完全に眠ったのを確認して、フィアフルは彼等に視線を向けた。
その目にはフェリーチェに向けていた暖かみは無く、そこには何の感情も浮かんではいなかった。
その目を見て彼等に緊張が走った。
「クスッ……そんなに緊張しなくても取って喰いやしないさ」
オースティンが警戒しながら尋ねた。
「お前は何者だ……その子は本当に妹なのか?」
オースティンの質問に、フィアフルの雰囲気が変わり始め表情が無くなった。
「妹じゃないとしたらどうするのだ?コレは貴様等とは何の関係もない者だろう」
「そんな事は関係ない!その子に何かするつもりなら許さない!」
「許さない?可笑しなことを言う……コレは我のものだ。それをどうしようと指図される謂れはない」
「なら力づくでも離してもらう!」
オースティンの言葉を合図にルイス、メイソン、ブレイクが攻撃体勢に入った。
「ククッハーハッハッハ……笑わせるな!貴様等ごときに我がどうこう出来ると思っているのか!戦いにもならん!攻撃した瞬間……死ぬぞ」
フィアフルの瞳は怪しく光り、瞳孔は獣の様に縦長になり全身を黒いオーラが炎の様に包んでいた。
そんなフィアフルを見てロバートは震え、アンジェラがエヴァンを庇い、オースティン、ルイス、メイソン、ブレイクが前に出て構えた。
フィアフルの殺気に圧倒されながらも、一歩も引かずオースティンが叫んだ。
「嘗めるな!俺たちはこれでもS級パーティーだ!そう簡単に殺せると思うなよ!」
「分からんな……人間とは傲慢で他者を見下し、苦しめる、自分のことしか考えぬ生き物だろう?エルフやドワーフ、獣人もたいして変わらんがな。何故、会ったばかりのコレに拘る?戦えば貴様等の主も死ぬ……今、引き下がれば見逃してやるぞ?」
フィアフルが言った言葉に、オースティンが反応する前にエヴァンが答えた。
「有難い申し出だが断らせてもらおう。貴様の言葉を信用する事は出来ん。それに、助けられる可能性があるなら子どもを見捨てる事など出来ない」
エヴァンの言葉に頷き、オースティンたちがフィアフルを見ると、呆れた様に肩をすくめていた。
「やれやれ、どうあっても引かぬか……ならば死ぬがいい」
そう言ってフィアフルは魔力を高め始めた。
その膨大な魔力に自分たちの死を感じたが、誰一人逃げる者はおらず、それどころかフィアフルを睨み付けていた。
それを見てフィアフルは口元に笑みを浮かべ魔力をかき消した。
「ごめんごめん……ちょっと試させてもらったよ。心配しなくても君たちは殺さないから安心して。僕たちの事情は特殊だから誰でもは話せないんだ」
「お前……」
オースティンたちはフィアフルの言葉に緊張を解き座り込んだ。
「なんだい君たち、さっきまでの威勢はどうしたの?」
「煩い!あんな殺気当てられて平気な訳あるか!本当に何者なんだよ!」
オースティンの問いにフィアフルはあっけらかんと答えた。
「僕はただの黒龍だよ」
「「「………はぁ!?」」」
エヴァン、オースティン、ルイスが驚きの声をあげ、他の者は目を見開き固まっていた。
「あれ?どうしたの?」
フィアフルが不思議そうに聞いたが誰も答えなかった。
いち早く正気を取り戻したのは、意外な事にロバートだった。
「皆様、一度落ち着きましょう。お茶を用意しますので。フィアフル様たちの事情を聞かなければいけませんし」
ロバートと言葉に無言で従い元の場所に座り直した。
フィアフルはというと抱えてたフェリーチェの寝顔を愛おしそうに見ていた。
ロバートが用意したお茶を飲み一息ついたところで、フィアフルがきりだした。
「僕らの事情を話す前に、君たちの事をちゃんと話してくれないかい?さっきも言ったけど誰にでも話せる事ではないんだ」
「では私からだな……私はエヴァン・ディアネス、ディアネス共和国の現国王だ」
「俺はオースティン・ディアネス、王弟だが城を出て冒険者をしている。階級はS級だ」
「わたしはアンジェラ・ディアネス、オースティンの妻で教会のシスターをしていますが、B級の冒険者でもあります」
「私はルイス・フォスター、ディアネス共和国エルフ族代表の長子でA級冒険者です」
「俺はブレイク・ロペス、ディアネス共和国獣人族代表の弟でA級冒険者だ」
「ワシはメイソン・タイナー、ディアネス共和国ドワーフ族代表の叔父だがA級冒険者で鍛冶屋でもある」
「私はロバート、マライカ商会の会頭をしています」
6人が順番に自分の素性を話したので、フィアフルも自分たちの事を話し出した。
「僕は龍神の一角、黒龍のフィアフル。そして、……アンブラー帝国辺境伯ベイリー家の長子フェリーチェだ」
「「「「「「!?」」」」」」
驚きつつもエヴァンが問いかけた。
「まさか龍神とは……しかし、フェリーチェがベイリー家の娘というのが本当なら、何故一緒に行動しているのだ?」
「話す前にもう1つ、君たちは何処から戻って来たんだい?」
「私たちはトラスト王国にいたのだが、第1王子と他にも何人か拐われてな、国に戻るよう言われたんだ。手伝うと提案したんだが、断られてな」
「なら話は早いかなその件も関係あるし……フェリーチェはね存在を消された子どもなんだ」
「存在を消された?……もしかして、双子か!?あの国は、まだそんなことをしているのか!」
「そう、フェリは名も与えられず生まれた時からずっと暗い地下室で監禁され、食事もまともに与えられず過ごしていた。家族はフェリに1度も会わず、メイド長が食事を運んではフェリが動かなくなるまで叩いていたし、最近は毒や薬の実験台にされてた」
「………………」
あまりの事に誰も声が出なかったが、話は終わらない。
「でも、フェリに転機が訪れたんだ。フェリの食事を運ぶ役に1人下級兵士が加わったんだけど、その兵士はトラスト王国の諜報員が変化した者で、フェリはスキルでそれを見破った。諜報員は拐われた仲間を探しに潜り込んでたけど、見つけられなくてフェリに協力を頼んだ……フェリの脱出に手を貸す事を条件にね」
「第1王子たちを拐ったのは帝国だったのか」
「フェリは協力する事にした。フェリにとっても最後のチャンスだったから」
「最後?」
「領主が帰還したら、開発した魔物を呼び寄せる魔道具の実験をする事になってたんだ……フェリに持たせてね。そんな事すれば、フェリは死ぬ。だから協力したのさ生きるために」
「それでどうなったんだ?」
「フェリは無事役目を果たした。そのまま逃げれば良かったのに、魔道具の情報を得るためフェリは地下室に戻った。情報を集めるために屋敷内を探っていた時に捕らえられていた僕と会ったんだ。結局、魔道具も手に入れ、僕も助けた。そして、旅に出たんだ。奴らはフェリの事、死んだと思ってるよ」
「帝国はそんな物まで……しかも、自分の娘に持たせるなどっ!」
エヴァンは込み上げる感情を抑えるように手を握りしめた。
それは、他の者たちも同じだったが、オースティンがある疑問を口にした。
「しかし、どうやって獣人たちやお前を助けたんだ?フェリーチェは子どもだぞ……そんな力」
「魔法だよ……フェリは魔法を自分で覚え、更にオリジナルの魔法を作ってたんだ」
「「「「「「はぁ!?」」」」」」
全員が驚く中、ルイスが唖然と呟いた。
「オリジナル魔法ですか……子どもがどうやって」
「フェリがいた地下室には本が大量にあってね。フェリにはスキルがあったから教えられなくても読む事が出来た。でも、外の事を知らないから自分の凄さに気付いてないし、皆が同じ様に出来ると思ってるよ」
「そんなこと……」
ルイスが言葉を詰まらせると、オースティンが質問した。
「だが、いくら助けられたとはいえ龍神のお前がその子と一緒にいる理由は何だ?」
「理由か……フェリが僕の前で泣いたからかな」
「泣いた?」
「そう……僕はフェリが泣き出した時、理由が分からなくて記憶を見たんだ。見た限りフェリは声をあげて泣いたことは無かった。なのに僕が枷と首輪のことを聞いたら、声をあげて泣いたんだ」
「それは……」
「フェリは手枷と足枷、隷族の首輪つけられ魔道具を持たされた。そんなフェリに父親が何て言ったと思う?」
「何て言ったんだ」
「‘これで厄介者を処分出来る’と言ったんだよ……フェリはそれでも泣きもせず、魔道具を手に入れ僕の元のまで来てくれた。でも限界だったんだろうね」
「何だよそれ!父親がすることでも、言うことでもねぇだろ!」
憤るオースティンの横でアンジェラが静かに泣いていた。
「酷すぎます……せっかく授かった子に何故っ……」
「彼にとってフェリは子どもじゃなかったのさ……フェリは自分て考えて行動出来るし、魔法のセンスもあるから時々忘れてしまうけど、まだ4歳の子どもだ……僕はもうフェリがあんな風に泣く姿を見たくない……幸せにしたいと思ったんだ。だから‘フェリーチェ’と名付けた」
「フェリーチェ‘幸せに’という意味でしたね」
「これが僕たちの事情だよ。ねぇエヴァン……君はディアネス共和国国王として、僕たちを受け入れられるかい?」
フィアフルの問いにエヴァンは直ぐには答えられなかった。
エヴァンには国王として、国と民を護る責任がある。
黒龍のフィアフルはもちろん、存在を消されたとしてもアンブラー帝国の貴族の血を引くフェリーチェは争いの種になる恐れがある。
それでも、エヴァンには2人を切り捨てることが出来ず悩んでいた。
他の者はエヴァンを見守ることしか出来ず沈黙が続いたところで、フィアフルが口を開いた。
「答えは直ぐに出さなくてもいいよ。帰って誰かに相談してもいいし、断られても何もしない……それは約束するよ。ただ、フェリを利用しようとしたり、傷付けて泣かせたら……何をするか分からない。それだけは忘れないでエヴァン」
フィアフルはそう言うと立ち上がり歩き始めた。
「どこに行くのだフィアフル」
「少し離れて休むよ。この辺りには結界を張ってるから安心して休んで大丈夫だ……おやすみ」
フィアフルの姿が見えなくなっても、誰も休もうとはしなかった。
その目にはフェリーチェに向けていた暖かみは無く、そこには何の感情も浮かんではいなかった。
その目を見て彼等に緊張が走った。
「クスッ……そんなに緊張しなくても取って喰いやしないさ」
オースティンが警戒しながら尋ねた。
「お前は何者だ……その子は本当に妹なのか?」
オースティンの質問に、フィアフルの雰囲気が変わり始め表情が無くなった。
「妹じゃないとしたらどうするのだ?コレは貴様等とは何の関係もない者だろう」
「そんな事は関係ない!その子に何かするつもりなら許さない!」
「許さない?可笑しなことを言う……コレは我のものだ。それをどうしようと指図される謂れはない」
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フィアフルの瞳は怪しく光り、瞳孔は獣の様に縦長になり全身を黒いオーラが炎の様に包んでいた。
そんなフィアフルを見てロバートは震え、アンジェラがエヴァンを庇い、オースティン、ルイス、メイソン、ブレイクが前に出て構えた。
フィアフルの殺気に圧倒されながらも、一歩も引かずオースティンが叫んだ。
「嘗めるな!俺たちはこれでもS級パーティーだ!そう簡単に殺せると思うなよ!」
「分からんな……人間とは傲慢で他者を見下し、苦しめる、自分のことしか考えぬ生き物だろう?エルフやドワーフ、獣人もたいして変わらんがな。何故、会ったばかりのコレに拘る?戦えば貴様等の主も死ぬ……今、引き下がれば見逃してやるぞ?」
フィアフルが言った言葉に、オースティンが反応する前にエヴァンが答えた。
「有難い申し出だが断らせてもらおう。貴様の言葉を信用する事は出来ん。それに、助けられる可能性があるなら子どもを見捨てる事など出来ない」
エヴァンの言葉に頷き、オースティンたちがフィアフルを見ると、呆れた様に肩をすくめていた。
「やれやれ、どうあっても引かぬか……ならば死ぬがいい」
そう言ってフィアフルは魔力を高め始めた。
その膨大な魔力に自分たちの死を感じたが、誰一人逃げる者はおらず、それどころかフィアフルを睨み付けていた。
それを見てフィアフルは口元に笑みを浮かべ魔力をかき消した。
「ごめんごめん……ちょっと試させてもらったよ。心配しなくても君たちは殺さないから安心して。僕たちの事情は特殊だから誰でもは話せないんだ」
「お前……」
オースティンたちはフィアフルの言葉に緊張を解き座り込んだ。
「なんだい君たち、さっきまでの威勢はどうしたの?」
「煩い!あんな殺気当てられて平気な訳あるか!本当に何者なんだよ!」
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「僕はただの黒龍だよ」
「「「………はぁ!?」」」
エヴァン、オースティン、ルイスが驚きの声をあげ、他の者は目を見開き固まっていた。
「あれ?どうしたの?」
フィアフルが不思議そうに聞いたが誰も答えなかった。
いち早く正気を取り戻したのは、意外な事にロバートだった。
「皆様、一度落ち着きましょう。お茶を用意しますので。フィアフル様たちの事情を聞かなければいけませんし」
ロバートと言葉に無言で従い元の場所に座り直した。
フィアフルはというと抱えてたフェリーチェの寝顔を愛おしそうに見ていた。
ロバートが用意したお茶を飲み一息ついたところで、フィアフルがきりだした。
「僕らの事情を話す前に、君たちの事をちゃんと話してくれないかい?さっきも言ったけど誰にでも話せる事ではないんだ」
「では私からだな……私はエヴァン・ディアネス、ディアネス共和国の現国王だ」
「俺はオースティン・ディアネス、王弟だが城を出て冒険者をしている。階級はS級だ」
「わたしはアンジェラ・ディアネス、オースティンの妻で教会のシスターをしていますが、B級の冒険者でもあります」
「私はルイス・フォスター、ディアネス共和国エルフ族代表の長子でA級冒険者です」
「俺はブレイク・ロペス、ディアネス共和国獣人族代表の弟でA級冒険者だ」
「ワシはメイソン・タイナー、ディアネス共和国ドワーフ族代表の叔父だがA級冒険者で鍛冶屋でもある」
「私はロバート、マライカ商会の会頭をしています」
6人が順番に自分の素性を話したので、フィアフルも自分たちの事を話し出した。
「僕は龍神の一角、黒龍のフィアフル。そして、……アンブラー帝国辺境伯ベイリー家の長子フェリーチェだ」
「「「「「「!?」」」」」」
驚きつつもエヴァンが問いかけた。
「まさか龍神とは……しかし、フェリーチェがベイリー家の娘というのが本当なら、何故一緒に行動しているのだ?」
「話す前にもう1つ、君たちは何処から戻って来たんだい?」
「私たちはトラスト王国にいたのだが、第1王子と他にも何人か拐われてな、国に戻るよう言われたんだ。手伝うと提案したんだが、断られてな」
「なら話は早いかなその件も関係あるし……フェリーチェはね存在を消された子どもなんだ」
「存在を消された?……もしかして、双子か!?あの国は、まだそんなことをしているのか!」
「そう、フェリは名も与えられず生まれた時からずっと暗い地下室で監禁され、食事もまともに与えられず過ごしていた。家族はフェリに1度も会わず、メイド長が食事を運んではフェリが動かなくなるまで叩いていたし、最近は毒や薬の実験台にされてた」
「………………」
あまりの事に誰も声が出なかったが、話は終わらない。
「でも、フェリに転機が訪れたんだ。フェリの食事を運ぶ役に1人下級兵士が加わったんだけど、その兵士はトラスト王国の諜報員が変化した者で、フェリはスキルでそれを見破った。諜報員は拐われた仲間を探しに潜り込んでたけど、見つけられなくてフェリに協力を頼んだ……フェリの脱出に手を貸す事を条件にね」
「第1王子たちを拐ったのは帝国だったのか」
「フェリは協力する事にした。フェリにとっても最後のチャンスだったから」
「最後?」
「領主が帰還したら、開発した魔物を呼び寄せる魔道具の実験をする事になってたんだ……フェリに持たせてね。そんな事すれば、フェリは死ぬ。だから協力したのさ生きるために」
「それでどうなったんだ?」
「フェリは無事役目を果たした。そのまま逃げれば良かったのに、魔道具の情報を得るためフェリは地下室に戻った。情報を集めるために屋敷内を探っていた時に捕らえられていた僕と会ったんだ。結局、魔道具も手に入れ、僕も助けた。そして、旅に出たんだ。奴らはフェリの事、死んだと思ってるよ」
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それは、他の者たちも同じだったが、オースティンがある疑問を口にした。
「しかし、どうやって獣人たちやお前を助けたんだ?フェリーチェは子どもだぞ……そんな力」
「魔法だよ……フェリは魔法を自分で覚え、更にオリジナルの魔法を作ってたんだ」
「「「「「「はぁ!?」」」」」」
全員が驚く中、ルイスが唖然と呟いた。
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「そんなこと……」
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「理由か……フェリが僕の前で泣いたからかな」
「泣いた?」
「そう……僕はフェリが泣き出した時、理由が分からなくて記憶を見たんだ。見た限りフェリは声をあげて泣いたことは無かった。なのに僕が枷と首輪のことを聞いたら、声をあげて泣いたんだ」
「それは……」
「フェリは手枷と足枷、隷族の首輪つけられ魔道具を持たされた。そんなフェリに父親が何て言ったと思う?」
「何て言ったんだ」
「‘これで厄介者を処分出来る’と言ったんだよ……フェリはそれでも泣きもせず、魔道具を手に入れ僕の元のまで来てくれた。でも限界だったんだろうね」
「何だよそれ!父親がすることでも、言うことでもねぇだろ!」
憤るオースティンの横でアンジェラが静かに泣いていた。
「酷すぎます……せっかく授かった子に何故っ……」
「彼にとってフェリは子どもじゃなかったのさ……フェリは自分て考えて行動出来るし、魔法のセンスもあるから時々忘れてしまうけど、まだ4歳の子どもだ……僕はもうフェリがあんな風に泣く姿を見たくない……幸せにしたいと思ったんだ。だから‘フェリーチェ’と名付けた」
「フェリーチェ‘幸せに’という意味でしたね」
「これが僕たちの事情だよ。ねぇエヴァン……君はディアネス共和国国王として、僕たちを受け入れられるかい?」
フィアフルの問いにエヴァンは直ぐには答えられなかった。
エヴァンには国王として、国と民を護る責任がある。
黒龍のフィアフルはもちろん、存在を消されたとしてもアンブラー帝国の貴族の血を引くフェリーチェは争いの種になる恐れがある。
それでも、エヴァンには2人を切り捨てることが出来ず悩んでいた。
他の者はエヴァンを見守ることしか出来ず沈黙が続いたところで、フィアフルが口を開いた。
「答えは直ぐに出さなくてもいいよ。帰って誰かに相談してもいいし、断られても何もしない……それは約束するよ。ただ、フェリを利用しようとしたり、傷付けて泣かせたら……何をするか分からない。それだけは忘れないでエヴァン」
フィアフルはそう言うと立ち上がり歩き始めた。
「どこに行くのだフィアフル」
「少し離れて休むよ。この辺りには結界を張ってるから安心して休んで大丈夫だ……おやすみ」
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