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禁忌の子

救出2

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皆が沈黙して私を見てきた。

(あれ?何でこんな反応なの?足を治せるって言っただけなのに)

私は再度チェイスに尋ねた。

「え~と……皆どうしたの?私、変な事でも言った?」

「だから!お前はっ……いいか?多少の怪我や病気は魔法や薬で治る。だが、体の欠損は魔法では治せないのが常識なんだ」

「………え?」

「まぁ例外はあるだろうがな」

「……じゃあ!私はその例外だよ!」

私の言葉にチェイスはジト目で見てきた。

「くっ……ふふふ」

笑い声にそちらを向くと、レオーネが笑っていた。
いや、レオーネだけじゃなく他の人たちも笑っている。

「あの~レオーネ……様?」

「あぁ、すまないっ……ふふっ……あまりに突拍子もない発言で、しかもチェイスはそれを君が出来ると確信している様だったから……つい面白くて」

(面白かった?まぁ皆が笑ってくれて良かったけど)

「それで……本当に治せるのか?」

「はい……本人たちが望めばですが」

私はカルロスたちに目を向けた。
彼等は私を凝視していたが、カルロスがいち速く反応した。

「……もし……もし本当に治せるならやってくれ!頼む!」

「「俺たちもだ!」」

3人はそう言って頭を下げた。

「僕からも頼む、彼らは大切な者たちなんだ」

「「「レオーネ様……」」」

「分かりました。さっそく始めましょう」

私は3人に近付き、まずカルロスさんから魔法をかけた。

『復元』レストレーション

――パアッ

私が魔法をかけると患部が光に包まれた。
しばらくして光が収まると、そこには元通り足があった。
この『復元』レストレーションは無くなった部位や壊れた物を復元する魔法で消費MPは60だ。
チェイスを待つ間、作っておいた。

「足だ……俺の足がっ!」

カルロスは自分の足を触りながら泣きそうになっていた。

「痛みや違和感はありませんか?」

私が尋ねると、カルロスは立ち上がり歩いたり跳んだりして確認していた。

「とんでもねぇ……本当に治った!」

「良かったで――」

――ワァー!

私の言葉は突然の歓声にかき消された。
皆、‘すごい’だの‘奇跡’だの言っているので気恥ずかしかったが、イーサンとリアンにも魔法をかけた。
次にチェイスの息子と奥さんの元に向かうと奥さんにお礼を言われた。

「初めまして。わたしはセレーナといいます。こっちが息子のウィルです。ウィル、挨拶は?」

「はじめまして……ウィルです……」

そう言ってウィルはセレーナの背に隠れてしまった。

「ウィル……すいません。あの……先程、結界を張ってくれたのは貴女ですよね?ありがとうございました」

「初めまして……名前はないので名乗れません。結界の事は気にしないでください。むしろ私は謝らないといけません。ウィル君が殴られた時、助けに向かおうとしたチェイスを止めました。怖い思いをさせてすいませんでした」

私は2人に頭を下げた。

「とんでもない!?頭を上げてください!あそこでチェイスが現れていたら、皆無事ではいられなかったでしょう……」

「ありがとうございます。……出来れば2人の怪我を治させて欲しいのですが」

「わたしもですか?」

「はい。脱出する前に全員の治療をしたいと思います……あの兵士の態度からすると皆さん怪我していると思ったので……まずはウィル君から」

「……宜しくお願いします。ウィル、怪我を治してもらいましょう?さあ……」

ウィルはセレーナに促され恐る恐る前に出た。

「ウィル君、ちょっと怪我を見せてね」

「うん……いたくない?」

「痛くないよ!じゃあ少し、じっとしててね……『回復』ヒール

私が『回復』ヒールを唱えるとウィルの体が暖かな光に包まれた。

「なんだか……ポカポカする……」

光が収まると怪我は全て治っていた。
続けてセレーナを治し、他の怪我人たちの治療も『回復』ヒールで行い、皆に感謝されながら全員の治療が終わり、脱出について話し始めた。

「それで脱出の計画は私の案でいいんですか?」

「そうだな……安全を考えるなら今のところ最善だと思います。レオーネ様はどうですか?」

「僕も賛成だ。皆はどうだ?」

レオーネは皆が頷いたのを確認し私の方へ視線を移した。

「しかし……先程の魔法も凄かったが、魔力は大丈夫なのか?」

「問題ないです。無理な時は言うので……ところでカルロスさんたちは武器が無くても戦えますか?」

「あぁ大丈夫だ。俺たちはレオーネ様の護衛だからな、どんな状況でも戦える様に訓練してあるぜ!……まぁ、このざまじゃ説得力ないがな……」

そう言ってカルロスはうつむいてしまった。
私はその様子に焦って小声でチェイスに問いかけた。

「あっ!……え~と、護衛ということは他の人たちより強いってことだよね?」

「もちろん強い、特にカルロスはあの体で速さもあるからな。あいつに勝てる奴はそうそういないはずだ」

チェイスの答えを聞き今度はレオーネ様に問いかけた。

「あの……レオーネ様」

「どうした?」

「レオーネ様は、あの3人と一緒にいる時に拐われたんですか?」

「ああそうだ。……先程は言わなかったが、私はレオーネ・トラスト、トラスト王国の第1王子だ」

「第1王子!?」

「あぁ黙っていてすまない……あの日は自分の部屋に戻る途中だったと思うが……カルロス、イーサン、リアンどうだ?」

「え!?」

私が振り返ると3人がこちらを見ていた。

「すまねぇな嬢ちゃん気を使わせて……拐われた状況は間違いないないですレオーネ様。イーサンはどうだ?」

「えぇ……俺が一番後ろにいたのですが、最初にレオーネ様と隊長が倒れました。そうだったよなリアン」

「はい!それでレオーネ様に駆け寄ったイーサンが倒れて……それで俺も駆け寄ろうとしたら意識が遠退きました」

私は拐われた状況を聞き、ある可能性が出てきたので考え込んでいた。

(自室に移動中ってことは、城の中でしょう?しかもカルロスさんがレオーネ様と一緒に倒れた……他の2人だって抵抗もできずに?)

「チェイスたちが、レオーネ様たちが拐われたのに気付いたのはいつ?」

「翌日の昼頃だ……レオーネ様や3人が朝食に現れなくて城中探したらしい……それで俺たち夜勤の奴が呼び出されたが……その時には家族もいなくなっていた」

「他の人たちはどういう状況で拐われたんですか?」

私の問にカルロスが答えた。

「最初に目覚めた時に確認したんだが、ここにいるのは城勤めの奴等の家族でな、俺たちが拐われた日に城に差し入れやら着替えやら持って来ていたらしい……別に珍しい事じゃないぜ?」

「珍しくない?……チェイス、セレーナさんとウィル君もその日来てたのよね?」

「あぁ夜勤の奴は皆そうだな……家族がいないのに気付いたのは……夜勤明けで家に帰ってからだ」

(ということは夜勤の人が分かっていれば、誰の家族が来るかも予測できる……となれば……まずいかも)

「おい、さっきからどうしたんだ?」

「……チェイス……城の人たちも……レオーネ様や仲間、家族が拐われたんだもん冷静な判断が出来なくて当たり前だよね……それとも絶対の信頼をしているからかな……ある可能性が見えてないよ……」

「「「「「ある可能性?」」」」」

「そう……1つは事前に長い間下調べをしていて、カルロスさんたちよりも強い力を持つか、周りを欺くスキルや魔法を使える者たちの犯行……そしてもう1つ……内通者がいて、侵入と誘拐の手引きをした者または者たちがいる可能性」

「「「「「な!?」」」」」

私の言葉に皆が言葉を失っていた。
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