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冒険者~学園騒動~
不吉な予兆
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賭けに勝ち喜ぶフェリーチェにアルベルトとガイは疑問をぶつけた。
「ところで、いつの間に魔物を倒したの?」
「攻撃魔法は使ってなかったよな?」
「『探索』と『目印』と『生命吸収』と『転移』を併用したの」
「「何だって?」」
「だから、『探索』で二人から離れてる魔物を探して、その魔物に『目印』で印をつけて、『生命吸収』でHPとMPをゼロにしてから『転移』でグレース様たちの後ろに転移させたの」
「「……ズルい!」」
「倒す方法の指定は無かったもん」
「「そうですけど!」」
その場から一歩も動かずに自分たちより魔物を倒したの方法を知り抗議する二人だったが、フェリーチェは相手にせず上機嫌でにこにこしている。
するとそこでドアをノックしてクロードが入ってきた。
「入るぞ」
「返事する前に開けるなよ」
「……チッ」
「舌打ち!俺が何か間違ったこと言いましたかね!?」
「アル、ガイ、話があるから執務室に来てくれ」
「「了解」」
「無視!?」
「フェリーチェは、ミゲルとネイサンと一緒に先に帰りなさい」
「は~い」
「……この腹黒陰険野郎!正論言われたからっ…ヒッ!?」
「何か言ったか?」
「ナンデモアリマセン ゴメンナサイ」
「……お父様」
今にも殺されそうなクロードの視線に、エヴァンは直ぐに謝った。
そんなエヴァンとグレースを残し部屋を出たフェリーチェたち。
その場で別れフェリーチェは、ミゲルたちのいる研究所に向かった。
「お鍋、お鍋、大きなお鍋~」
そう口ずさみながら去っていくフェリーチェの姿に、アルベルトとガイの頭に今朝の会話が甦った。
『皮でも剥いで手を熱湯に浸けとけば?出汁が取れるんじゃない?』
『恐ろしいわ!?何の出汁だ!何の!むしろお前が浸かれよ。龍の肉は最高級だから最高級の出汁がでるぞ!』
『はぁ!?……まぁ、魔王は禍々しいから出汁も禍々しいのになるかもしれないもんね~』
『ハッ!残念でした。この体は勇者のだ。むしろ聖なる出汁になるかもな!』
『聖なる出汁って何だ!』
ぶるりと身震いした二人はひきつった顔を見合わせる。
「ま、まさかね」
「まさかだよな」
「「は……はは……はははは」」
((どっちのだ!?どっちもか!?))
「どうした?早く行くぞ」
「「ハイ」」
恐れ慄く二人は、クロードに急かされ歩きだしたが、その背中には哀愁が漂っていた。
一方、研究所に着いたフェリーチェは、ドアを開けた状態で固まっていた。
彼女の視線の先には、床に倒れたアダムと、彼に馬乗りになり至近距離で見詰め合う(フェリーチェ視点)ミゲルの姿があった。
その二人の視線が自分に向くと、フェリーチェは動き出した。
「お邪魔しました」
「「ん?」」
ドアを閉めたフェリーチェに首を傾げた二人の耳に外の会話が聞こえてきた。
『あらフェリーチェ、中に入らないの?』
『シェ、シェリーお姉様!あ、あの今はちょっと!』
『フェリ、そんなに慌てて何かあったの?』
『ネイサンお兄様!べ、別に何もないよ!』
『……本当に?』
『うん!中でミゲルお兄様とアダム様が口付けしそうになんかなってないから!』
『『え!?』』
そんな会話が聞こえたミゲルとアダムは、自分たちの体勢を確認してお互い違う意味で慌てた。
何故なら声の主はミゲルの弟ネイサンと、ミゲルの婚約者シェリーだったからだ。
(身分差を気にしていたシェリーをやっと頷かせて婚約したのに、浮気を疑われて堪るか!しかも相手がアダムだと!)
(ヤバい!ミゲル至上主義者のネイサンに殺される!誤解だろうがあいつは殺る!殺らないにしろネチネチ嫌がらせをするに決まってる!しかも長期間な!)
二人は勢いよく立ち上がり、競うようにドアを開けて叫ぶ。
「「誤解だ!」」
数分後、事情(魔道具持ち出しを巡る追い駆けっこ)を話し必死に誤解を解いたミゲルとアダムはぐったりしていたおり、ネイサンは呆れシェリーも苦笑していた。
原因のフェリーチェは、呑気にシェリーが用意したお菓子を味わっている。
「結局、魔道具を持ち出したのはディランだったわけか」
「だから俺じゃないって言っただろうが」
「兄上は悪く無いよ。貴方の日頃の行いが悪いからでしょう」
「ソウデスネ」
「さて、それじゃあ帰るか。シェリー、送っていく」
「はい、ありがとうございます」
「お兄様、帰りにメイソンさんのとこに寄ってもいい?」
「かまわないが理由は?」
「おっきなお鍋!」
「「「「鍋?」」」」
フェリーチェの答えに四人が首を傾げる頃、クロードの執務室で話をしていたアルベルトとガイは悪寒を感じた。
その様子を見たクロードが声をかける。
「どうした?」
「な、何でもないよ」
「それより、今の話は確かなのか?」
「あぁ、つけていた《影》から連絡があった。奴等が餌に喰い付いたとな」
「そう……やっとだね」
「だな。俺たちも動かないとな」
「あぁ、今までは後手に回っていたが、今度はこちらから……帝国にしかける」
「うん」
「おう」
帝国を相手にする前に、ある意味で強敵の相手をしなければならないのだが、この時のアルベルトとガイはすっかり忘れているのであった。
「ところで、いつの間に魔物を倒したの?」
「攻撃魔法は使ってなかったよな?」
「『探索』と『目印』と『生命吸収』と『転移』を併用したの」
「「何だって?」」
「だから、『探索』で二人から離れてる魔物を探して、その魔物に『目印』で印をつけて、『生命吸収』でHPとMPをゼロにしてから『転移』でグレース様たちの後ろに転移させたの」
「「……ズルい!」」
「倒す方法の指定は無かったもん」
「「そうですけど!」」
その場から一歩も動かずに自分たちより魔物を倒したの方法を知り抗議する二人だったが、フェリーチェは相手にせず上機嫌でにこにこしている。
するとそこでドアをノックしてクロードが入ってきた。
「入るぞ」
「返事する前に開けるなよ」
「……チッ」
「舌打ち!俺が何か間違ったこと言いましたかね!?」
「アル、ガイ、話があるから執務室に来てくれ」
「「了解」」
「無視!?」
「フェリーチェは、ミゲルとネイサンと一緒に先に帰りなさい」
「は~い」
「……この腹黒陰険野郎!正論言われたからっ…ヒッ!?」
「何か言ったか?」
「ナンデモアリマセン ゴメンナサイ」
「……お父様」
今にも殺されそうなクロードの視線に、エヴァンは直ぐに謝った。
そんなエヴァンとグレースを残し部屋を出たフェリーチェたち。
その場で別れフェリーチェは、ミゲルたちのいる研究所に向かった。
「お鍋、お鍋、大きなお鍋~」
そう口ずさみながら去っていくフェリーチェの姿に、アルベルトとガイの頭に今朝の会話が甦った。
『皮でも剥いで手を熱湯に浸けとけば?出汁が取れるんじゃない?』
『恐ろしいわ!?何の出汁だ!何の!むしろお前が浸かれよ。龍の肉は最高級だから最高級の出汁がでるぞ!』
『はぁ!?……まぁ、魔王は禍々しいから出汁も禍々しいのになるかもしれないもんね~』
『ハッ!残念でした。この体は勇者のだ。むしろ聖なる出汁になるかもな!』
『聖なる出汁って何だ!』
ぶるりと身震いした二人はひきつった顔を見合わせる。
「ま、まさかね」
「まさかだよな」
「「は……はは……はははは」」
((どっちのだ!?どっちもか!?))
「どうした?早く行くぞ」
「「ハイ」」
恐れ慄く二人は、クロードに急かされ歩きだしたが、その背中には哀愁が漂っていた。
一方、研究所に着いたフェリーチェは、ドアを開けた状態で固まっていた。
彼女の視線の先には、床に倒れたアダムと、彼に馬乗りになり至近距離で見詰め合う(フェリーチェ視点)ミゲルの姿があった。
その二人の視線が自分に向くと、フェリーチェは動き出した。
「お邪魔しました」
「「ん?」」
ドアを閉めたフェリーチェに首を傾げた二人の耳に外の会話が聞こえてきた。
『あらフェリーチェ、中に入らないの?』
『シェ、シェリーお姉様!あ、あの今はちょっと!』
『フェリ、そんなに慌てて何かあったの?』
『ネイサンお兄様!べ、別に何もないよ!』
『……本当に?』
『うん!中でミゲルお兄様とアダム様が口付けしそうになんかなってないから!』
『『え!?』』
そんな会話が聞こえたミゲルとアダムは、自分たちの体勢を確認してお互い違う意味で慌てた。
何故なら声の主はミゲルの弟ネイサンと、ミゲルの婚約者シェリーだったからだ。
(身分差を気にしていたシェリーをやっと頷かせて婚約したのに、浮気を疑われて堪るか!しかも相手がアダムだと!)
(ヤバい!ミゲル至上主義者のネイサンに殺される!誤解だろうがあいつは殺る!殺らないにしろネチネチ嫌がらせをするに決まってる!しかも長期間な!)
二人は勢いよく立ち上がり、競うようにドアを開けて叫ぶ。
「「誤解だ!」」
数分後、事情(魔道具持ち出しを巡る追い駆けっこ)を話し必死に誤解を解いたミゲルとアダムはぐったりしていたおり、ネイサンは呆れシェリーも苦笑していた。
原因のフェリーチェは、呑気にシェリーが用意したお菓子を味わっている。
「結局、魔道具を持ち出したのはディランだったわけか」
「だから俺じゃないって言っただろうが」
「兄上は悪く無いよ。貴方の日頃の行いが悪いからでしょう」
「ソウデスネ」
「さて、それじゃあ帰るか。シェリー、送っていく」
「はい、ありがとうございます」
「お兄様、帰りにメイソンさんのとこに寄ってもいい?」
「かまわないが理由は?」
「おっきなお鍋!」
「「「「鍋?」」」」
フェリーチェの答えに四人が首を傾げる頃、クロードの執務室で話をしていたアルベルトとガイは悪寒を感じた。
その様子を見たクロードが声をかける。
「どうした?」
「な、何でもないよ」
「それより、今の話は確かなのか?」
「あぁ、つけていた《影》から連絡があった。奴等が餌に喰い付いたとな」
「そう……やっとだね」
「だな。俺たちも動かないとな」
「あぁ、今までは後手に回っていたが、今度はこちらから……帝国にしかける」
「うん」
「おう」
帝国を相手にする前に、ある意味で強敵の相手をしなければならないのだが、この時のアルベルトとガイはすっかり忘れているのであった。
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