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冒険者~学園騒動~

緊急事態

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ガイが、拾った球体と関係がある人物へと通信を入れると直ぐに繋がった。
念のため、防音の結界を張っている。

『今度は何をやった?』
「……第一声がそれは酷いと思います。言っとくが、今回は俺たちじゃないからな」
『……それで?』
「おい、その間は何だ!」
『分かった分かった。早く用件を言え』
「本当に俺たちじゃなぞ!聞いてんのかミゲル!」
「ガイは、ミゲルお兄様の信用がないね」
「日頃の行いだよ」
「そこ!他人事の様に言うな!信用ないのはお前たちも含めてだからな!」
「「またまた~」」
「いやいやいやいや!なに、自分は関係ないみたいな顔してんの!?」
『はぁ~…ガイ、じゃれてないで用件を言え』
「何で俺だけ怒られんの!?」

どうやら連絡の相手は、フェリーチェたちの義兄であるミゲルだったようだ。
一通り弄られたガイが、不満を滲ませた声で現状の説明を始めた。

『魔物が全くいない?ギルドの報告と違うな。調査を怠ったか……』
「いや、それはない。俺も調査に同行して確認している」
『そうか。なら何か不足の事態が起きたと言う事か…演習を中止させるべきかなら、何故学園の責任者ではなく私に知らせた?』
「あぁ~…その不足の事態についてミゲルに確認したい事があるんだよ。そこの研究所で開発中の魔道具があっただろ?」
『どの魔道具だ?』
「偵察用のやつだよ。あの、球体のやつ。失くなってないか?」
『……少し待て。ガサッ…ガシャ……ない……アダム~!また・・勝手にっ…ブツッ』
「……切れた」
「ミゲルお兄様、怒ってたね」
今回のは・・・・濡れ衣だと思うけどね」
「何はともあれ連絡を待つしかないな」
「「うん」」

いったん結界を解除した三人は、ブレンダたちの元に戻った。
ちょうどグレースたちも話し合いが終わったので出発する事になった。
距離の事を考えて、出発地点ではなく目的地に向かう事にしたようだ。
しかし、そこで遂に彼女たちが動きを見せた。

「あ~ら、そこにいるのはグレース様ではないですか?」
「ふん、間抜けな取り巻きも一緒ではないか」
「そうやって群れていないと何もできないなんて、この国の王族とはとても思えませんわね」

突然現れたメリンダとダリオ一行に、グレースたちは目が点になった。
心情的には、‘何言ってんだこいつら’である。
そして、その思いを遠慮なく口にする。

「「「「班活動厳守の演習中なので」」」」
「「………」」

グレースたちの正論に、メリンダとダリオは黙り込んだが、それは一瞬の事だった。

「そ、そんな事より、魔物は狩れたのかしら?」
「み、見たところ手ぶらのようだが!」
「……ずっと見ていたのですから知っているでしょうに」
「な、何の事ですの?」
「言いがかりは止めたまえ!」
「まぁ良いでしょう。……この周辺には魔物が全くいません。私たちはそれを異常事態と判断しましたので、先生方に報告に向かうところです」
「まぁ、自分たちの無能をそう言って誤魔化すつもりなのですね」
「浅はかだな。我らはちゃんと魔物を狩ったぞ。魔物がいないなどと虚偽の報告をするつもりか」

もちろん、グレースたちをずっとつけていた彼女たちが狩りをしてないのは明白だ。
大方、姿の見えない数名の護衛が代わりに狩っているのだろう。
呆れ果てたグレースは、彼女たちを無視して出発する事にした。

「みなさん、移動しましょう」
「「「はい」」」
「ちょっと待ちなさい!」
「無視するな!」

喚く二人を無視して歩き出したグレースだったが、その前に立ち塞がる者たちがいた。

「待て」
「ガイ?何故止めるのですか?」
「森の様子がおかしい」
「え?」

グレースを止めたガイとフェリーチェ、アルベルトも警戒して辺りをうかがっている。
そして、ブレンダたち護衛組も何かに気付いたのかグレースたちを護るように囲んで警戒を強くする。
そんな緊張感が漂う中、余裕に満ちた声が響いた。

「まぁ、そんなに慌ててどうされたの?」
「ふん、見苦しいな」

嘲笑を浮かべるメリンダとダリオに、何かを感じたのかグレースが問いかけた。

「いったい何をしたのですか?」
「あら恐い顔……私はただ、グレース様のお手伝いをしたまでですわ」
「我々は見物させともらうとしよう。精々、頑張って課題をこなすが良い」
「課題ですって?……まさか!?」

目を見開くグレースの耳に、ガイの無情な声が届いた。

「全員戦闘準備だ!魔物が来る!」







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