141 / 166
冒険者~学園騒動~
王子様ご乱心
しおりを挟む
フェリーチェたちは、誰に止められる事なくディランの部屋にたどり着き、部屋の前に立つ兵士に挨拶して中に入った。これで良いのか王宮警備と思いつつ目的の人物を探すと、ディランはソファーに座り頭を抱えていた。
「ディラン様、大丈夫?」
「どうしたのさ?」
「フェリ、アル、止まれ。様子が変だ」
ガイが、ディランに近付こうとしてしていた2人の襟を引っ張り止めると何か聞こえてきた。
「僕のグレース……演習…危険だ…あんな……いっそ潰してっ……アルベルト!」
「な、何!?」
「フェリーチェ!」
「ひゃい!?」
「ガイ!」
「おぉ!?お前大丈夫か?隈が凄い事に……」
何かブツブツ言っていたディランがバッと顔を上げたのだが、その異様な雰囲気と隈の酷い顔に3人は思わず一歩どころか、扉まで一気に下がった。しかし、ディランは気にする事なくジリジリ近付いて行く。
「グレースが…グレースが!」
「お、落ち着け!話は聞くから!」
「こ、怖い…」
「フェリ、後ろに下がって」
「グレースが!僕のグレースがはっ!」
「「ディラン!?」」「ディラン様!?」
突然倒れたディランに驚き、慌てて外にいる兵士に声をかけたのだが、彼等は落ち着いていて1人はディランを寝室に運び、1人はどこかに歩いて行った。その手慣れた対応に、あぁ初めてじゃないのかと3人は悟った。少しして、アダムが入ってきた。
「よぉ、悪かったな。最近、毎日あれなんだ」
「「「毎日…」」」
「もうすぐ学園で野外演習があるんだよ。だから心配でああなってるんだ」
「野外演習って何をするの?」
「郊外の森で2泊3日過ごすんだ。薬草の採取とか魔物を討伐したり、それを解体して料理したり色々な」
「へぇ~、生徒だけでやるの?」
「教師が何人かと貴族は自分で護衛を連れて来る。護衛を連れてこれない者もいるから学園側が冒険者を雇い同行するぞ」
「もしかして、俺たちへの指名依頼ってそれか?」
「あいつそんな事してたのか。全くグレースの事となると…だいたいグレースは母上と同じ…」
「兄上!」
「「「「ヒィッ!?」」」」
寝ていた筈のディランが現れアダムの肩を掴んだ。
「グレースが強い事は知っています!でも、心配なんですよ!僕にとってグレースは可愛い妹なんです!」
「分かったから落ち着け!グレースは俺にとっても可愛い妹だ!心配なのは分かるが、早く通常に戻らないとその可愛い妹に心配させるぞ!良いのか!」
「心配!?それは駄目だ…あぁでも、心配するグレースも可愛いし……いや駄目だ……」
((((駄目だ……そっとしておこう))))
再び自分の世界に入ったディランをそのままに、フェリーチェたちは静かに部屋を出た。その時に見た、兵士の死んだ目が彼等の心情を表していたので、アダムが労うように肩を軽く叩くのだった。
「ディランはアダムと違ってしっかりしてると思ったけど、やっぱりエヴァンの子どもだね~」
「多方面に失礼だ!」
「いくら大事な妹でも過保護過ぎじゃない?」
「ちょっとくらい見守ってあげれば良いのにな」
(お前等が言うのか!?無自覚か!)
フェリーチェに始終引っ付き、あらゆる危険から遠ざけようとするアルベルトとガイの言葉に目を剥き心中で突っ込んだアダムは、同情のこもった目をしてフェリーチェの頭を撫でた。
「アダム様?」
「まぁ…頑張れよ」
「はい?」
「ちょっと…フェリに何してんの!」
「はぁ~アルベルト、心が狭いぞ~」
「『清掃』『清掃』『清掃』!」
「本当に失礼な奴だな!」
「心が狭いぜアダム」
「ガイ!……ぬがぁぁぁ!」
わいわい騒ぎならが移動するアダムたちを、通りかかった者たちが生暖かい目で見ていた。
「ディラン様、大丈夫?」
「どうしたのさ?」
「フェリ、アル、止まれ。様子が変だ」
ガイが、ディランに近付こうとしてしていた2人の襟を引っ張り止めると何か聞こえてきた。
「僕のグレース……演習…危険だ…あんな……いっそ潰してっ……アルベルト!」
「な、何!?」
「フェリーチェ!」
「ひゃい!?」
「ガイ!」
「おぉ!?お前大丈夫か?隈が凄い事に……」
何かブツブツ言っていたディランがバッと顔を上げたのだが、その異様な雰囲気と隈の酷い顔に3人は思わず一歩どころか、扉まで一気に下がった。しかし、ディランは気にする事なくジリジリ近付いて行く。
「グレースが…グレースが!」
「お、落ち着け!話は聞くから!」
「こ、怖い…」
「フェリ、後ろに下がって」
「グレースが!僕のグレースがはっ!」
「「ディラン!?」」「ディラン様!?」
突然倒れたディランに驚き、慌てて外にいる兵士に声をかけたのだが、彼等は落ち着いていて1人はディランを寝室に運び、1人はどこかに歩いて行った。その手慣れた対応に、あぁ初めてじゃないのかと3人は悟った。少しして、アダムが入ってきた。
「よぉ、悪かったな。最近、毎日あれなんだ」
「「「毎日…」」」
「もうすぐ学園で野外演習があるんだよ。だから心配でああなってるんだ」
「野外演習って何をするの?」
「郊外の森で2泊3日過ごすんだ。薬草の採取とか魔物を討伐したり、それを解体して料理したり色々な」
「へぇ~、生徒だけでやるの?」
「教師が何人かと貴族は自分で護衛を連れて来る。護衛を連れてこれない者もいるから学園側が冒険者を雇い同行するぞ」
「もしかして、俺たちへの指名依頼ってそれか?」
「あいつそんな事してたのか。全くグレースの事となると…だいたいグレースは母上と同じ…」
「兄上!」
「「「「ヒィッ!?」」」」
寝ていた筈のディランが現れアダムの肩を掴んだ。
「グレースが強い事は知っています!でも、心配なんですよ!僕にとってグレースは可愛い妹なんです!」
「分かったから落ち着け!グレースは俺にとっても可愛い妹だ!心配なのは分かるが、早く通常に戻らないとその可愛い妹に心配させるぞ!良いのか!」
「心配!?それは駄目だ…あぁでも、心配するグレースも可愛いし……いや駄目だ……」
((((駄目だ……そっとしておこう))))
再び自分の世界に入ったディランをそのままに、フェリーチェたちは静かに部屋を出た。その時に見た、兵士の死んだ目が彼等の心情を表していたので、アダムが労うように肩を軽く叩くのだった。
「ディランはアダムと違ってしっかりしてると思ったけど、やっぱりエヴァンの子どもだね~」
「多方面に失礼だ!」
「いくら大事な妹でも過保護過ぎじゃない?」
「ちょっとくらい見守ってあげれば良いのにな」
(お前等が言うのか!?無自覚か!)
フェリーチェに始終引っ付き、あらゆる危険から遠ざけようとするアルベルトとガイの言葉に目を剥き心中で突っ込んだアダムは、同情のこもった目をしてフェリーチェの頭を撫でた。
「アダム様?」
「まぁ…頑張れよ」
「はい?」
「ちょっと…フェリに何してんの!」
「はぁ~アルベルト、心が狭いぞ~」
「『清掃』『清掃』『清掃』!」
「本当に失礼な奴だな!」
「心が狭いぜアダム」
「ガイ!……ぬがぁぁぁ!」
わいわい騒ぎならが移動するアダムたちを、通りかかった者たちが生暖かい目で見ていた。
52
お気に入りに追加
3,783
あなたにおすすめの小説

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分
かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。
前世の分も幸せに暮らします!
平成30年3月26日完結しました。
番外編、書くかもです。
5月9日、番外編追加しました。
小説家になろう様でも公開してます。
エブリスタ様でも公開してます。

異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです
ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。
転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。
前世の記憶を頼りに善悪等を判断。
貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。
2人の兄と、私と、弟と母。
母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。
ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。
前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。


転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。
襲
ファンタジー
〈あらすじ〉
信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。
目が覚めると、そこは異世界!?
あぁ、よくあるやつか。
食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに……
面倒ごとは御免なんだが。
魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。
誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。
やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです
yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~
旧タイトルに、もどしました。
日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。
まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。
劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。
日々の衣食住にも困る。
幸せ?生まれてこのかた一度もない。
ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・
目覚めると、真っ白な世界。
目の前には神々しい人。
地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・
短編→長編に変更しました。
R4.6.20 完結しました。
長らくお読みいただき、ありがとうございました。

知らない異世界を生き抜く方法
明日葉
ファンタジー
異世界転生、とか、異世界召喚、とか。そんなジャンルの小説や漫画は好きで読んでいたけれど。よく元ネタになるようなゲームはやったことがない。
なんの情報もない異世界で、当然自分の立ち位置もわからなければ立ち回りもわからない。
そんな状況で生き抜く方法は?
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる