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冒険者~始まり~

レベルが上がりました

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危なげ無くキメラを倒した少女をポカ~ンと周りが見ている中、当人は倒したキメラをアイテムボックスにしまい呑気に戦闘の説明をしていた。

「それにしてもいつの間に魔法陣を書いたんだ?戦いながらは無いよな?」
「戦闘中に書くのはサポートが無ければ無理ですからね。それに、フェリは魔法陣を書くのがへっゴホッゴホッ、書くのは苦手だから使わないと言ってなかったかい?」
「そのつもりだったけど、せっかくお父様に教えてもらったし、自分でもいろいろ作ったから試してみたかったの」
「「いろいろ?」」
「うん。それぞれの属性で討伐用と捕獲用と、あとは余興用かな」
「最後のは何だ。まぁ良い、それでどつやって魔法陣を?」
「魔道具を使ったのかい?」
「違うよ。スキルを使ったの」
「「スキル?」」

フェリーチェの答えに首を傾げるミゲルとネイサンに、ガイが笑みを浮かべて口を挟んだ。

「フェリは魔法陣を書くのがアレ・・だから無理に使う必要はないが、戦う術は多いに越したことはないだろ。だが、かと言って戦いながら魔法陣を書くなんてフェリには絶対に無理だ。通常でもアレ・・だし」
「その時ちょうど別件でフェリのアレ・・が問題になってたからね。僕たちは夜通しオヤツを食べながら話し合ったのさ」
「フェリは途中で寝たがな」
「お前たちはまたそんな事をして……」
「俺たち寝なくても大丈夫だしな~」
「夜にお菓子食べても太ったりしないから大丈夫だしね~」
「では報告しましょうか?今のアルの言葉を添えて……母上に」
「「モウシマセン。ゴメンナサイ」」

以前あった騒動で母サマンサは、大好きな甘味を制限しているため、アルベルトの言葉は確実に彼女の神経を逆撫でする事になるだろう。
ネイサンの言葉にすかさずアルベルトとガイは頭を下げたのだった。
しかし、2人が頭を下げた方が良い相手は、今現在プルプル震えているフェリーチェなのだが誰も気付いていない。
フェリーチェは涙目でキッっと2人を睨んだ。

「さっきからアレアレアレって……アルもガイも酷いよ!はっきり言えば良いでしょ!下手くそだって!」
「そ、そんな事ないよ!下手くそなんかじゃないさ。だだちょっとそのっ……ねぇ~ガイ!」
「俺!?そ、そうだぞ、下手くそじゃないからな。そう!独特なんだよ!よく言うだろ個性的な◯◯ですね~って!それだ!」
「それ……フォローのつもりなの?」
「アルとガイは気遣いを学んだ方が良いですね」
「ネイサン、お前もさっき……」
「なんの事ですか兄上」
「お前な……まぁ良い。フェリ、機嫌を治してスキルについて教えてくれるか?」

しれっとしているネイサンに呆れながらもスキルが気になるミゲルはフェリーチェに尋ねた。

「む~……使ったスキルは『念写』だよ。私、書くのは苦手・・だけど、記憶力とはっきりイメージするのは得意だから」
「『念写』……成る程な。確かに頭にイメージしたものを写す念写ならわざわざ書く必要はないな」
「あぁ、教本・・を作る時に覚えたスキルだったね」
「覚えたと言うか……私はコピーしただけだけど」
「頑張ったのは人探しだよな。俺とアルが手分けしたんだ」
「そうそう。『念写』のスキル持ちってなかなかいなかったから大変だったよね~」

話し込んでいるフェリーチェたちから少し離れた場所では、魔法陣について同じ説明をクロードから聞いたオースティンが疑問に思っていた事を口にした。

「それにしても、アンジェラの魔道具はフェリーチェがデザインしてたよな。本当に書くのが下手なのか?」
「あの時の魔道具は紙にデザインを書いたりせんで金属を魔力で加工したもんを見たからのぉ。ワシには分からんわい」
「俺も直接見たわけじゃないが、子供のうちは上手く書けないのではないか?」
「私も一度ミランダの報告を聞いたときはそう思っていたが、練習で何度か魔法陣を書かせみて何故あの時ミランダが悟りを開いたような顔をしていたのか理解できた」
「「「悟り……」」」
「それより奴等も大人しくなったし、今のうちに連行させる。お前たちはフェリたちを頼む」
「おう」

クロードはいまだに呆けているザランたちの元に向かったので、オースティンたちはフェリーチェたちの方に向かった。

「良くやったなフェリーチェ」
「ウム、武器の扱いも良かったぞ」
「動きも良かった」
「ありがとうございます。師匠」
「レベルは確認したか?」
「まだです。えっと……ステータス」

3人の師匠に誉められ、はにかんでお礼を伝えたフェリーチェはオースティンに言われてステータスを開いた。



名前  フェリーチェ・ファウスト 
 Lv.  1→15

HP…2856→3506
MP…15685→16435

ステータス見たフェリーチェは、レベルが上がっているのを確認してホッとした。

「やった!ちゃんと上がってる!」
「相手がキメラだったから結構上がったね」
「3体だからな。この調子で……お、おい、どうしたんだ?」
「「え?」」

ガイの戸惑った声に、フェリーチェとアルベルトが彼の視線の先を見ると、オースティンとメイソンとブレイクが目頭を押さえていた。

「えっと……3人とも大丈夫ですか?」
「もしかして泣いてるの?」
「いきなり何でだ?」
「クッ……すまん。あの・・……あの・・あのフェリーチェがと思うと……頑張ったな」
「最初はどうなるかと……頑張ったわい」
「どうすれば良いか途方にくれたものだが……頑張ったな」
「「「…………」」」

アルベルトとガイが呆れている中、フェリーチェは悩んでいた。
自分は誉められているのか、貶されているのか、喜ぶべきなのか、怒るべきなのかを。
悩んだ結果、一先ず頬を膨らませて師匠たちが泣き止むのを待つ事にした。
もっとも数時間後、同じ光景を見る事になるのだが、フェリーチェは知るよしもなかった。
一方、同じくオースティンたちの言葉を聞いていたミゲルとネイサンはボソボソと話していた。

「ねぇ兄上、叔父上たちの言う‘頑張った’はに向けた言葉でしょうね?」
「それは叔父っ……フェリーチェに決まってるだろ……」
「ですよね。あっ、あともうひとつ」
「なんだ?」
「フェリーチェですが、レベルの割に数値が高くないですか?」
「明らかに10歳のステータスじゃないだろ。MPは私たちより数値が高いな」
「叔父上たち分かってますかね?」
「分かっているさ。だが、フェリーチェの将来を思えば常識に捕らわれず鍛えた方が良いと判断したんだろ」
「そうですね。てっきりアルベルトとガイに引き摺られて‘10歳の常識’が分からなくなっているのかと思いましたよ」
「そ、そんな事は無いだろ。……無い筈だ……たぶん」

ネイサンの発言を否定しつつも、‘もしかしたら’という思いでミゲルの瞳は揺れていた。
ちょうどその時、クロードたちの方から怒鳴り声が聞こえてきた。





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