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1年目~発覚~

今日から僕は……

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初めまして僕の名前は佐藤流さとうながれ、何処にでもいる平凡で普通な15歳です。僕の家族は、サラリーマンの父と、スーパーでパートをしている母、短大に入学する姉、父方の祖父です。あと父方の祖母もいましたが、いろいろあって離れて暮らしています。まぁ、離れてと言っても隣町ですけど。今日は高校の入学式でした。僕は、特にやりたいことが無かったので、家の近くの普通の高校に入学するはずでした。そう‘でした’です。過去形です。僕は今、無事に入学式を終えて自分のクラスでオリエンテーションの説明を聞いています。しかし、配られたパンフレットから目が離せないので正直、教壇で説明をしている先生の話が聞こえていません。というが、聞きたくありません。理由は、このパンフレットを見てもらえれば分かってくれると思います。

――・――・――・――・――・――
オリエンテーションプログラム

1…生徒会長の挨拶
2…風紀委員長の挨拶
3…部活動紹介
4…生徒会と風紀委員によるPSIサイ能力デモンストレーション(危険は自己回避してください。責任はいっさい取りません)
5…新入生の挨拶

――・――・――・――・――・――

分かってもらえましたか?分からない方はもう一度、4番を読んでもらえますか?4番です。PSIサイ能力デモンストレーション……PSIサイ能力です。簡単に言うと超能力です。この世界には、超能力者とそうでない者がいます。超能力者が最初に現れたのは、今から300年位前でその頃は人口の1割にも満たなない人数だったそうです。最初は迫害されていたそうですが、時代の変化でいつしか彼等を『特別な存在』『選ばれた者』『新人類』として特別扱いするようになり、超能力者の人口が増えてからは、あらゆるものが差別化されるようになりました。次第に彼等は選民意識を持つようになり、それは人口の6割が超能力者になった今でも変わりません。むしろ酷くなってきています。住居に仕事、そして学校……そうです。学校です。
これまでの調査で、超能力は0歳から15歳の間に発現すると言われています。なので小・中までは、超能力者もそうで無い者も一緒に学び、高校から分けられます。
僕は今、後悔しています。何故ちゃんと学校を調べなかったのか。僕がこの学校を選んだ理由は、家から近いからです。合格して喜んでいたのに、まさかこんな落とし穴があるとは思いませんでした。しょうがないので、ここは正直に話そうと思いますが、その前に確認しなくてはいけないことがあります。

「あの、僕は佐藤流といいます。聞きたいことがあるのですが」
「俺は猿渡大さわたりだいだ。聞きたいことってなんだ?」
「例えばの話です。例えばですよ。例えばですからね」
「例えば多いいな!で?」
「例えば、この学校に普通の人が入学していた場合どうなりますか?」
「はぁ?有り得ねぇだろ。凡人があの試験を通れる筈がねぇ。なんせこの学校は、日本で一・二を争う超能力者の学校なんだからな。お前も知ってるだろ?」

知りませんでした。ここは話を合わせておきましょう。

「勿論ですよ。ですから、例えばの話です」
「まぁ、仮にそんな身の程知らずな奴がいたら即退学だろうな。しかも、この学校を退学なんて記録が残れば、どの学校にも入れねぇし、下手したら捕まるかもな」
「……成る程」
「てか、何でそんなこと聞いたんだ?まさかお前……」
「例えばの話です。例えば、例えば、例えば」
「わ、分かったから!顔近かいし怖いって!」

失礼な人です。しかし、どうしたものか。わざとでは無いにしろ、超能力者でも無いのに入学してしまいました。言い訳も通用しそうもありませんね。取り合えず……

「――となります。それでは時間ですので、みなさん移動して下さい」

取り合えず、様子を見ようと思います。これは熟考した結果であり、決して考えるのが面倒になったわけではありません。それにしても、僕は何故合格できたんでしょうか?謎です。
担任の先生に誘導されて来たのは、野球場やサッカー場みたいなドームでした。クラスごとに観客席に座り待機しています。暫くすると、生徒会の腕章を着けた男子生徒が出て来ました。美形なので、女子がキャーキャー言ってます。

「それではこれよりオリエンテーションを始めます。まずは生徒会長……僕の挨拶だけど、長々と話すのは嫌いだから簡単にすませるよ。これから3年間、君達が有意義に過ごしてくれると嬉しいな。以上、次は風紀委員長どうぞ」

本当に簡単に終わらせました。随分と自由な方ですね。先生方も受け入れているようです。おや、風紀委員長は女子みたいですね。これまた美人です。

「わたしが言いたい事はひとつだ。風紀を乱した者は……どんな理由があろうと、容赦なくブッ飛ばす。以上だ」

無表情で物騒なことを言いました。これまた、先生方は受け入れられているようです。極力、あの2人には近付かない方が良さそうです。次は部活動紹介ですが、見る限り僕が入れそうな部活はありませんでした。だって僕は普通な人間ですから、火だるまになっているボールを持ったり投げたりできません。他にも能力を使わないとできないものばかりでした。こうなったら、帰宅部ですかね。

「あの猿渡くん、度々すみませんがお聞きしたいことがあります」
「大でいいぜ。それで何が聞きたいんだ?」
「では、僕のことも流と呼んで下さい。聞きたいのは、部活のことです」
「部活?早いな。もう決めたのか?まぁ部活は必須だから、入りたいとこが早目に決まって良かったな」

まさかの必須でした。どうしましょう。

「……いえ、まだ決めていません。大くんは、決まりましたか?」
「まだだけど、俺はやっぱり運動部が良いかな~。お前は?」
「運動は苦手なので、文化部に入ろうと思っています」
「確かに苦手そうだな」

失礼な人です。僕は見た目は地味眼鏡ですが、運動は得意なんですからね。とにかく、僕でも大丈夫そうな部活を探さないと。しかし、運動部と違って文化部は口頭での紹介だけだったので、判断できませんでした。僕が悩んでいるうちに、生徒会と風紀委員のデモンストレーションが始まったのですが、さっきから風紀委員長が放った火の玉を生徒会長が瞬間移動で避けて、観客席に直撃して爆発が起きています。皆さん、自分の能力や友人同士で助け合い無事のようです。見慣れない光景にぼ~っとしている時でした。火の玉が僕の方に飛んできました。僕は隣の猿渡くんを見たのですが、隣の女子との話しに夢中で助けてくれそうもありません。どうやら僕はここで死んでしまうようです。

(父さん、母さん、姉ちゃん、じいちゃん、ばあちゃん、先立つ僕を許して下さい。願わくば、隣の阿呆ヅラした友人?も道連れになりますように)

僕は信じてもいない神に祈りながら、顔に直撃は嫌だったので火の玉に向かい右手を伸ばし、襲うだろう衝撃に目を瞑りました。しかし、いくら待っても熱くなりません。不思議に思いながらも目を瞑っていると、周りがザワザワしてきたので、そ~っと目を開けると阿呆ヅラが増した大くんと、動きを止めて僕を凝視している生徒会長と風紀委員長他、僕以外の人たちがいました。

「流……お、お前どうやってアレを止めたんだ?いや、消したのか?」
「何のことですか?」
「何のことって……今、風紀委員長様の火を消しただろ?あの方の攻撃は接触したものを爆発させるんだ。お前の前に直撃したとこも爆発したたろ?」
「そうなんですか?」
「そうなんですかって……まぁ、能力の詮索はタブーだから、話したくないなら良いけどよ」

そんな拗ねた顔されても、心当たりがないのだからしょうがないでしょう?偶然消えたのか、風紀委員長が止めたかだと思うのですけど、彼女の顔を見る限り違うようです。ここは笑って誤魔化しましょう。ん?何故、彼女は僕を睨むのでしょうか?

「余裕だな流。風紀委員長様を挑発するなんて、俺には無理だぜ」
「……そんなことは、していませんよ」

どうやら、笑ったのは逆効果だったようです。まぁ、やってしまったものはしょうがないので、彼女と接触しないようにしましょう。そんなこんなで、無事に……と、言って良いのか分かりませんが、初日が終わりました。憂鬱な気分で家に帰ると、玄関の前で姉のりんが暗い顔で立っていたので声をかけました。

「姉ちゃん、何してんの?」
「流……ちょっとね。それより、言うことがあるでしょう?」
「ん?……ただいま」
「おかえり」
「姉ちゃんもお帰り」
「ただいま。さぁ、入ろうか」

時間は進み、夕食の時間になりました。食卓には全員揃っています。学校のことは、どうやって話しましょうか。

「凜と流は入学式だったな。学校はどうだった?」
「親が入学式に参加できないなんて、残念だったわ」

両親から話をふってくれました。今、話してしまいましょう。

「「実は……ん?」」

姉とハモってしまいました。姉の方も何かあったのでしょうか?

「姉ちゃんどうぞ」
「流が先に話して良いよ」
「いやいや姉ちゃんから」
「そう?じゃあ話すわ。実は、わたしが入学した短大なんだけど……超能力者の学校だったの!」
「「え?」」
「姉ちゃんも!?」
「「え?」」
「姉ちゃんもって、流もなの!?」
「うん。入学式が終わった後に気付いたんだ」
「ねぇ、入学試験は筆記以外で何があった?」
「神経衰弱とか短距離走とか」
「透視と瞬間移動ね」
「読唇術とか高跳びとか」
「多分テレパシーと空中浮遊ね」
「……風景画とか燃焼の実験とか」
「念写とパイロキネシスかな」
「……え?」
「わたしも同じことやったわ。まさか超能力の検査だとは思わなかったけど、今思えば納得よ」

僕は、試験のことを思い返しました。でも、いくら考えても合格した理由が分かりません。神経衰弱では、担当者が並べ直したもを覚えていただけです。昔から記憶力には自信がありますから。短距離走でも普通に走っただけです。10mを走るのに3秒もかからないでしょう?読唇術は、担当者が紙を見ながら口を動かしていたので、唇を読んだだけです。読唇術は幼い時に習うでしょう?高跳びだって全力でやりました。5m位跳べるのは普通ですよね。あっ!僕は少し滞空時間が長いのでした。勘違いしたのでしょうか?風景画だって、担当者の眼鏡に反射していたものを描いただけですし、燃焼の実験は持っていた燃焼火材を指で擦ったら火が出てしまっただけです。どうやら考えていたことを声に出していたようで、姉がうんうん頷いています。2人で頭を捻っていると、眉間をもみもみしている父の横で、母が遠慮がちに言いました。

「あのね。凜ちゃん、流くん。それは普通できないことだと思うわ」
「「え?」」
「あ~……記憶力は遺伝だろうが、どうやってそんなに早く走れるようになった?」

父が聞いてきたので、姉と僕は答えました。

「「ばあちゃんが、今時これくらいできなきゃ虐められるって」」
「読唇術は?」
「「ばあちゃんが、できるのが普通だって教えてくれた」」
「高く跳べるのは?」
「「ばあちゃんが、忍者の修行だって」」
「何でそこで忍者なんた!?風景画は、絵が得意だからな。燃焼材なんて何で持ってたんだ?」
「「ばあちゃんが、いつか使う日が来るから常に持っていなさいって」」
「じゃあ最後に、その学校を進めたのは誰だ?」
「僕は、家に一番近い学校を探してたら、ばあちゃんがパンフレットくれたんだ」
「わたしはも」
「あの人は……まったく!」

僕たちの話を聞いて、父が頭を抱えてしまいました。声をかけるか迷っていると、今の今まで無言で食事をしていた祖父が静かに呟きました。

「まんまと、あのババアの罠に嵌まったようじゃな。今の学校より近い場所に、普通の学校があるぞ」
「「え?」」

嵌められたとは何だろうか?明日にでも、祖母に聞きに行こうと思います。とにかく、今日から僕は超能力者学校の生徒になってしまいました。











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