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第11話 友だちとの再会
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塾もバイトもない学校帰り、駅で私はオノくんと出くわした。
正確には、私は改札のこちら側、オノくんは向こう側にいて、なぜかそこにはカズちゃんもいた。
カズちゃんは地元の高校に行ったはずで、駅に用はないのに、どうして?
オノくんはカズちゃんの横を素通りして、自転車置き場へ向かって行く。本当は私も、自転車を取りに行きたいのだけど……。
「コイちゃん、久しぶりだねー」
「……そうだね」
にこやかに話しかけてくるカズちゃんは、昔のままにみえる。
私の肘のあたりを掴むと顔を近づけてきて言った。
「私ね、今、オノくんにアプローチしてるの」
「えっ? でもカズちゃん、彼氏いるんじゃ……」
「だって~、オノくん急に背が伸びて超カッコよくなったじゃない?」
目がハートに見えそうなほど熱を込めて、自転車を押してくるオノくんを見つめている。
そして私に向き直ると、強い力で両手を握ってきた。
「ねぇ、コイちゃん、私たち、友だちだもんね? 応援してくれるよね?」
「応援って……私、もう二人と別の学校だし、なにもできないよ」
「でもコイちゃん、オノくんと同じ電車でしょ? 変な女が近づいて来ないように見張っててよ! ね? お願い!」
「同じ電車じゃないよ。時々は、今日みたいに一緒になっちゃうこともあるけど、いつもは違うから」
私はカズちゃんの手を解き、自分の自転車に向かった。オノくんのほうは、とっくに自転車を出してきて、駅舎の脇にいる。
「コイちゃんって意地悪ね。友だちだと思ってたのに」
捨て台詞のようなことを言うと、カズちゃんはオノくんのほうへ走っていった。
友だちだと思ってた、って……。
自転車の鍵を外しながら、鼻で笑ってしまった。オノくんは私のことを嫌っているから、今ごろは二人で私の悪口でも言ってるだろう。
二人は駅舎から正面に伸びた道へと歩いていく。
私はいつものように、遠回りで線路沿いの商店街へと向かった。
互いの姿が見えなくなる角で、一度、振り返った。オノくんのほうも振り返った。どんな顔をしているのかわからないけれど、きっとムカつくと言いたい顔をしていると思う。
(勝手にムカついていればいいよ。私はもう、あんな人たちとは友だちでもなんでもないんだから)
胸の奥に嫌な思いが沈みこみ、なんともいえない感情が溢れる。
今日は喫茶店に寄る気分にもなれず、そのまま自転車に乗ろうとしたところで、携帯が鳴っていることに気づいた。
液晶には、オーちゃんの名前。
「もしもし?」
「コイちゃん……コイちゃん、今日は忙しい?」
「今日? これから? 特になにもないけど……」
「あのね、どうしても頼みたいことがあって……うちに来れないかなぁ?」
オーちゃんが沈んだ声を出すのは珍しい。なにか困ったことがあるのかもしれないと思い、私は一度、家に帰って荷物を置いてから、オーちゃんの家に行くと約束をした。
オーちゃんの家は、私の駅からさらに二駅、東京寄りにある。私は自転車を飛ばして駅へとんぼ返りして来た。
正確には、私は改札のこちら側、オノくんは向こう側にいて、なぜかそこにはカズちゃんもいた。
カズちゃんは地元の高校に行ったはずで、駅に用はないのに、どうして?
オノくんはカズちゃんの横を素通りして、自転車置き場へ向かって行く。本当は私も、自転車を取りに行きたいのだけど……。
「コイちゃん、久しぶりだねー」
「……そうだね」
にこやかに話しかけてくるカズちゃんは、昔のままにみえる。
私の肘のあたりを掴むと顔を近づけてきて言った。
「私ね、今、オノくんにアプローチしてるの」
「えっ? でもカズちゃん、彼氏いるんじゃ……」
「だって~、オノくん急に背が伸びて超カッコよくなったじゃない?」
目がハートに見えそうなほど熱を込めて、自転車を押してくるオノくんを見つめている。
そして私に向き直ると、強い力で両手を握ってきた。
「ねぇ、コイちゃん、私たち、友だちだもんね? 応援してくれるよね?」
「応援って……私、もう二人と別の学校だし、なにもできないよ」
「でもコイちゃん、オノくんと同じ電車でしょ? 変な女が近づいて来ないように見張っててよ! ね? お願い!」
「同じ電車じゃないよ。時々は、今日みたいに一緒になっちゃうこともあるけど、いつもは違うから」
私はカズちゃんの手を解き、自分の自転車に向かった。オノくんのほうは、とっくに自転車を出してきて、駅舎の脇にいる。
「コイちゃんって意地悪ね。友だちだと思ってたのに」
捨て台詞のようなことを言うと、カズちゃんはオノくんのほうへ走っていった。
友だちだと思ってた、って……。
自転車の鍵を外しながら、鼻で笑ってしまった。オノくんは私のことを嫌っているから、今ごろは二人で私の悪口でも言ってるだろう。
二人は駅舎から正面に伸びた道へと歩いていく。
私はいつものように、遠回りで線路沿いの商店街へと向かった。
互いの姿が見えなくなる角で、一度、振り返った。オノくんのほうも振り返った。どんな顔をしているのかわからないけれど、きっとムカつくと言いたい顔をしていると思う。
(勝手にムカついていればいいよ。私はもう、あんな人たちとは友だちでもなんでもないんだから)
胸の奥に嫌な思いが沈みこみ、なんともいえない感情が溢れる。
今日は喫茶店に寄る気分にもなれず、そのまま自転車に乗ろうとしたところで、携帯が鳴っていることに気づいた。
液晶には、オーちゃんの名前。
「もしもし?」
「コイちゃん……コイちゃん、今日は忙しい?」
「今日? これから? 特になにもないけど……」
「あのね、どうしても頼みたいことがあって……うちに来れないかなぁ?」
オーちゃんが沈んだ声を出すのは珍しい。なにか困ったことがあるのかもしれないと思い、私は一度、家に帰って荷物を置いてから、オーちゃんの家に行くと約束をした。
オーちゃんの家は、私の駅からさらに二駅、東京寄りにある。私は自転車を飛ばして駅へとんぼ返りして来た。
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