全日本霊体連合組合

釜瑪 秋摩

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組合加入

第5話 まだまだ続くよ全連の話

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 そのあとも、怒涛のように全連ぜんれんのことを聞かされ続けた。
 組合員には、いろいろな幽霊がいるけれど、この世に残るすべての幽霊が加入しているわけではないという。
 亡くなったときの状態によっては、すぐに話のできる状態じゃない人もいるそうだ。

「そういった意味では、高梨たかなしさんはすぐにお話ができたので、わたくしも助かりました」

「話ができても、加入を断られることも多いのよね」

「なんで?」

「まぁ……未練を残してとどまっているのですから……」

 ある程度、時間が経たないと、未練や執着が強すぎて、話を聞いてもらうのも難しいらしい。
 そういう相手には、数年おきに訪ねていくそうだ。
 話ができても、恨みを強く持っている相手は、逆に加入させられないと、三軒さんげんは肩をすくめる。

「以前、そういうかたが入られたんだけど……」

 とんでもなく恐ろしい怨霊化をし、周りの霊たちを巻き込んで吸収してしまったという。
 それとともに、生きている人にも祟り、呪い、小森たちの手に負えなくなった……。

「そこで、『SCC』のかたがたに、手を借りることに――」

「今度はSCC? また提携先? そこはなんの機関なの?」

「高梨さん、鋭いですねぇ……SCCは、スピリチュアル・カウンセリング・センターSpiritual Counseling Centerといって、霊能者の団体なんです」

「霊能者……」

「SCCでは、わたくしたちの怨霊化を鎮めてくださったり、上へあがるお手伝いをしていただいたりしているんですが……」

「あのときは、あまりにも強くなりすぎてしまって……」

 仕方なく、消滅させたそうだ。
 巻き込まれて吸収された霊たちも、結局助けられなかったと、小森こもりはうつむいて沈痛な表情を浮かべた。

 それにしても――。

 強くなると周りの霊を吸収してしまうのか。
 ぶっちゃけ、俺は怖い話は大好物だった。
 動画はもちろん、マンガや小説などでも読んでいたほどだ。

 それでたまに、目にしたことはある。
 たくさんの霊が固まって一つになっている、という表現を。
 本当にそんなのがあるんだ、と、話を聞きながら思っていた。

 あとはSCCだ。
 霊能者……ということは、生きている人だよな?
 どんな提携なんだ?

 っていうか、いつまで続くんだ? 説明。
 わからないことばかりなのに、新しい情報を聞かされ続けて、なにを覚えたらいいのやら、サッパリだ。
 俺の疑問をよそに、小森は話を続けていく。

「高梨さんには、加入いただけて本当に助かります」

「助かる?」

「ええ。霊にはいくつかの種類に別れているんですが、高梨さんの場合は『浮遊霊』に属されるんです」

「ああ、そういう種類なら知ってるよ。地縛霊とか生霊とか、そんなんだろ?」

「その通りよ。組合員さんの中でも、地縛霊のかたがたは動けないから、動ける浮遊霊のかたには様々な場所へ応援に出かけていただくのよ」

「今は組合員さんたちも、そう多くはないので……担当できる場所が持ち回りになっているんですよ」

「担当……?」

 なにか嫌な予感がする。
 持ち回りだの、様々な場所へ応援にでかけるだの……。

「ええ。禁足地に立ち入られないように、高梨さんには、担当になった場所にくる人たちを、怖がらせていただかないといけませんから」

――やっぱりそうか。

 だよな、だよね。
 そんなことだろうとは思っていたよ!

「怖がらせるったって……俺、どうすればいいのかわかんないよ?」

「大丈夫ですよ。その辺は、何度か現場を見ていただければ、すぐに覚えられますから」

「現場を見る!?」

「そりゃあ……口で説明するよりも早いですから」

「いや……でも俺は……あっ! そうだ! そんなことより、会費とかはどうなってんの? 俺、払えないって言ったよな?」

 どんどん嫌な話になってきて、俺は慌てて別な話をぶっ込んだ。
 会費を払えないとなったら、ひょっとすると加入できないと言われるかも……?
 そう思ったのに、小森も三軒も、また声をあげて笑いだす。

「会費など、ありませんよ。私たちの誰も、お金なんか必要としないでしょう?」

「むしろ、組合員さんたちには禁足地をまもっていただいているので、組合から報酬をお出しすべきなんですよね」

「えっ? 報酬が出るの?」

 それならやってもいいかな? なんて思う俺は、あさましいヤツだ……。
 けど、廃村だなんだと、心霊スポットと言われているところに行かなきゃいけないのなら、報酬を貰えるんでなければ、行きたくなんかない。

「報酬といっても現金ではありませんが……それに見合ったものは、ありますよ」

 なんだ、現金じゃあないのか……。
 いや、持ったとしても使いようがないんだけれど。
 変にガッカリ感が湧いてくる。

「そんなに気を落とさなくても……まあ、報酬に関しては、追々で……」

 小森と三軒は立ち上がり、廊下に続くドアを開けた。

「とりあえず、これから本部の中をご案内します」

「申込書にはもう記入いただいているから、本部内を回ってくるあいだに、いろいろな手続きは終わっているはずよ」

 小森と一緒に廊下へ出ると、三軒に見送られて、俺は二階へ続く階段を上った。
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