創作BL SS詰め合わせ

とぶまえ

文字の大きさ
上 下
7 / 40
◆付き合ってる

お姫様抱っこ

しおりを挟む


「お姫様抱っこをね、してみたいんだ」

 風呂上がりにリビングのソファーでくつろいでいたら同居している恋人が突然そんなことを言い出した。

「無理だろ」

 恋人は俺より背も低いし、筋力もない。到底出来るとは思えない。

「やってみないと分からないじゃないか」
「絶対無理。君、米買ってきた時でさえ重い重いって言いながら運んでる癖に」
「それはまた別の話だよ」
「同じ話だろ」

 とにかくやらせてくれと言って恋人は近付いてくる。

「やめて。絶対落とすだろ」
「そこはこう、君がしがみついててくれれば」
「重さに耐え切れずに君が崩れ落ちる所しか想像出来ない」
「成功をイメージするのって大切だと思うんだ」
「そういうのを妄想って呼ぶんだよ」

 しばらく押し問答を続けて、俺は段々面倒になってきてじゃあやってみろよと恋人の自由にさせることにした。恋人は笑顔で俺を横抱きにしようと背中と膝裏に手をやり、持ち上げようとする。

「ふっ、く、ゔ……」
「一瞬も持ち上げきれてないじゃん」
「もうちょっとでいける……」
「気のせいだよ」

 恋人はしばらくうんうんと唸ったあと、諦めたらしく脱力した。たったこれだけのことでぜえぜえと息を乱している。

「君重すぎない?」
「君力弱過ぎない?」
「弱くない……」

 どう考えたって弱いだろう。恋人は疲れたらしく床に座り込んだ。

「なんで急にお姫様抱っことか言い出したの?」
「友達が夜の営みの時に恋人をお姫様抱っこでベッドに運ぶって言ってたから」
「気持ち悪」
「良いじゃないか! ロマンチックだろう!」
「どこが。変な影響受けるなよ」

 俺はソファーから立ち上がった。俺を見上げてくる恋人の横でかがみ込み、背中と膝裏に手を回して持ち上げる。腕の中で恋人は目を見開いていた。

「なんでそんな簡単に出来るんだ」
「君みたいに貧弱じゃないから」

 恋人は悔しげに唸りながら抱き着くように首に腕を回してきた。

「せっかくだからベッドまで運んでくれ」
「やだよ面倒くさい。自分で歩いて」
「愛しい恋人とロマンチックなベッドインをしようとは思わないのか」
「全く思わない」
「思ってくれ」
「そろそろ手放していい?」
「やめてくれ!」

 恋人はぎゅっと強くしがみついてくる。

 その後、運べ運べとうるさいからベッドまで運んで放り投げたら本気でキレられた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

風邪をひいてフラフラの大学生がトイレ行きたくなる話

こじらせた処女
BL
 風邪でフラフラの大学生がトイレに行きたくなるけど、体が思い通りに動かない話

ダンス練習中トイレを言い出せなかったアイドル

こじらせた処女
BL
 とある2人組アイドルグループの鮎(アユ)(16)には悩みがあった。それは、グループの中のリーダーである玖宮(クミヤ)(19)と2人きりになるとうまく話せないこと。 若干の尿意を抱えてレッスン室に入ってしまったアユは、開始20分で我慢が苦しくなってしまい…?

孤独な戦い(4)

Phlogiston
BL
おしっこを我慢する遊びに耽る少年のお話。

保育士だっておしっこするもん!

こじらせた処女
BL
 男性保育士さんが漏らしている話。ただただ頭悪い小説です。 保育士の道に進み、とある保育園に勤めている尾北和樹は、新人で戸惑いながらも、やりがいを感じながら仕事をこなしていた。  しかし、男性保育士というものはまだまだ珍しく浸透していない。それでも和樹が通う園にはもう一人、男性保育士がいた。名前は多田木遼、2つ年上。  園児と一緒に用を足すな。ある日の朝礼で受けた注意は、尾北和樹に向けられたものだった。他の女性職員の前で言われて顔を真っ赤にする和樹に、気にしないように、と多田木はいうが、保護者からのクレームだ。信用問題に関わり、同性職員の多田木にも迷惑をかけてしまう、そう思い、その日から3階の隅にある職員トイレを使うようになった。  しかし、尾北は一日中トイレに行かなくても平気な多田木とは違い、3時間に一回行かないと限界を迎えてしまう体質。加えて激務だ。園児と一緒に済ませるから、今までなんとかやってこれたのだ。それからというものの、限界ギリギリで間に合う、なんて危ない状況が何度か見受けられた。    ある日の紅葉が色づく頃、事件は起こる。その日は何かとタイミングが掴めなくて、いつもよりさらに忙しかった。やっとトイレにいける、そう思ったところで、前を押さえた幼児に捕まってしまい…?

風邪ひいた社会人がおねしょする話

こじらせた処女
BL
恋人の咲耶(さくや)が出張に行っている間、日翔(にちか)は風邪をひいてしまう。 一年前に風邪をひいたときには、咲耶にお粥を食べさせてもらったり、寝かしつけてもらったりと甘やかされたことを思い出して、寂しくなってしまう。一緒の気分を味わいたくて咲耶の部屋のベッドで寝るけれど…?

咳が苦しくておしっこが言えなかった同居人

こじらせた処女
BL
 過労が祟った菖(あやめ)は、風邪をひいてしまった。症状の中で咳が最もひどく、夜も寝苦しくて起きてしまうほど。 それなのに、元々がリモートワークだったこともあってか、休むことはせず、ベッドの上でパソコンを叩いていた。それに怒った同居人の楓(かえで)はその日一日有給を取り、菖を監視する。咳が止まらない菖にホットレモンを作ったり、背中をさすったりと献身的な世話のお陰で一度長い眠りにつくことができた。 しかし、1時間ほどで目を覚ましてしまう。それは水分をたくさんとったことによる尿意なのだが、咳のせいでなかなか言うことが出来ず、限界に近づいていき…?

孤独な戦い(3)

Phlogiston
BL
おしっこを我慢する遊びに耽る少年のお話。

その関係はこれからのもの

雨水林檎
BL
年下わんこ系教師×三十代バツイチ教師のBL小説。 仕事中毒の体調不良、そんな姿を見たら感情があふれてしまってしょうがない。 ※体調不良描写があります。

処理中です...