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◆付き合ってない
魔法使いの学生
しおりを挟む「椅子、蹴らないでくれない?」
さっきからガンガンと後ろの席から椅子を蹴りつけてくる同級生にそう言うと、同級生は一際強く椅子を蹴ってきた。
「人にお願いする時は目を見て言うものだよ。顔ぐらいこっちに向けたらどうなんだ」
「俺に構って欲しくてそれやってんの?」
「そうに決まってるだろ。気になる子に振り向いて欲しいという可愛げ溢れる行動じゃないか」
どこが可愛げに溢れてるんだ。迷惑極まりない。
振り返ったら調子に乗るだけなので、俺は前を向いたままスマホを弄った。同級生はまだぎゃーぎゃーと何かを言っている。無視していると、そいつは席を立って俺の前に回り込んできた。
「魔法使いなんて古風な存在の癖に何最先端の文明の利器を使ってるんだ」
「心配しなくても君と連絡先交換したりしないよ」
「どうして」
「君と連絡先なんて交換して俺がどう得するんだよ。俺がスマホ持ってることにすら文句つけてくるような奴なのに」
「僕の連絡先がスマホに入っていると恋愛運が上がるよ」
「どうせ君に付き纏われるようになるだけだろ」
「素晴らしい効果じゃないか」
地獄みたいな効果だ。そもそも普段から突っかかってきて面倒くさいのに。連絡先なんて教えたら四六時中メールを送ってきそうだ。
また無視していると、そいつはしゃがんで下から俺の顔を覗き込んできた。
「目障りなんだけど」
「君ってどういう人がタイプ?」
「君以外なら誰でもいい」
「そんなこと言ったら殺人鬼やテロリストも対象に入るよ」
「君じゃないなら好きになれるよ」
「……」
同級生はおもむろに俺のスマホを掴んで取り上げた。そして、窓を開けて迷いもせず外に放り投げる。
「……君さ」
「なんだい」
「本当に俺に好かれる気ある?」
「気概に満ちてるよ」
「嫌われようとする気概だとしたら百点満点だよ」
立ち上がって窓の下を覗き込んだ。地面に叩き付けられたスマホが見える。魔法で浮かせて手元に戻したけれど、画面は粉々で酷い有様だった。面倒臭いな、と思いながら数回撫でて画面を直した。
その様子をじっと見ていた同級生は機嫌良さげに笑った。
「やっぱり魔法使いって凄いね。何でも出来る。素敵な存在だ」
「何でも出来るなら君の存在を消してるよ」
出来ることなんて少ない。親の代やそのまた上の代なら色々な事が出来たらしいけれど、代を重ねる毎に魔法の力が弱まっていて、俺に出来ることなんてこんな手品レベルの事だけだ。
「空とか飛べる?」
「飛べない」
「一緒に青空デートに行かないかい」
「一人で勝手に屋上から飛び降りてろよ」
そんなどうでもいい話をしている内に、貴重な休み時間は終わってしまった。
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