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◆付き合ってない
魔法使いと同居人
しおりを挟む早朝、僕は淹れたてのコーヒーを飲みつつ窓から朝焼けを眺めるという優雅な時を過ごしていた。今日はとてもいい天気だ。素晴らしい一日になるに違いない。
そんな事を思っていると、二階から穏やかな時間を台無しにする騒々しい音が聞こえてきた。何かが落ちる音と、物をひっくり返す音、扉を開け放つ音、それからまた何かが落ちる音。
僕はコーヒーを机に置き階段の方に目をやった。そこには息を乱して床に這いつくばっている同居人がいた。凄い剣幕で僕のことを睨んでいる。
「俺に何したんだよ……!?」
「下半身動かなくした」
「何の為に」
「どうなるのかなと思って」
「ふざけんな」
ささやかな悪戯なのに同居人はそれはもうお怒りのようだ。
「よくここまで来れたね。階段ほぼ落ちて来ただろ。君には床を這いつくばる才能があるよ」
「俺の事馬鹿にしてるだろ?」
「やだな、全人類を馬鹿にしてるよ。君に限った話じゃない」
「それ聞いてああ良かったなんて思うとでも思ってんの?」
思っているのだけれど彼はそうじゃないらしい。僕は彼に側に行きかがみ込んで頭を撫でた。彼はそれはもう嫌そうな顔をする。
「魔法が使えないって不便だよね。魔法が使えたらそれぐらいすぐ自分で治せるのに」
治してあげると、彼は嫌そうな顔のまま起き上がる。
「治してくれてありがとうございますは?」
「人の身体で遊んで申し訳ありませんだろ」
彼は立ち上がり、二階の自室に戻って行った。いつもなら朝ご飯の準備をしてくれる時間なのに。拗ねたのだろうか。
まあなんでもいいやと思いながら僕は少し冷めたコーヒーを飲み始めた。
数分してから彼はまた階段を降りてきた。何故か金槌を手に持っている。
「何か作るの?」
僕が言い終わるより前に、彼は僕を椅子ごと床に突き飛ばすと、金槌を振り上げて膝に躊躇なく叩き付けた。激痛と共に骨が砕ける絶対に聞こえてはいけない類の音が聞こえた。
「い゙ぎぅ゙ゔ……!」
「魔法使いって便利だよね。それぐらいすぐ自分で治せるだろ」
床でのたうつ僕を見て彼は気が済んだようでさっさと台所に消えていった。僕は何とか骨を修復して起き上がり、倒れた椅子を元に戻す。
彼はいつも容赦も躊躇もなくやり返してくる。そこらの人間なんて、また何かされるのではないかと怖がって逃げていくのに。
台所からは何かを焼く音が聞こえてくる。彼は多分もう僕のことはどうでもいいと思っている。僕の足を叩き折った罪悪感なんてそもそも存在しないだろう。酷い話だ。
まあでも、そういうところが凄く好きで一緒に暮らしている。
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