創作BL SS詰め合わせ

とぶまえ

文字の大きさ
上 下
25 / 40
◆付き合ってない

魔法使いと同居人

しおりを挟む


 早朝、僕は淹れたてのコーヒーを飲みつつ窓から朝焼けを眺めるという優雅な時を過ごしていた。今日はとてもいい天気だ。素晴らしい一日になるに違いない。
 そんな事を思っていると、二階から穏やかな時間を台無しにする騒々しい音が聞こえてきた。何かが落ちる音と、物をひっくり返す音、扉を開け放つ音、それからまた何かが落ちる音。
 僕はコーヒーを机に置き階段の方に目をやった。そこには息を乱して床に這いつくばっている同居人がいた。凄い剣幕で僕のことを睨んでいる。

「俺に何したんだよ……!?」
「下半身動かなくした」
「何の為に」
「どうなるのかなと思って」
「ふざけんな」

 ささやかな悪戯なのに同居人はそれはもうお怒りのようだ。

「よくここまで来れたね。階段ほぼ落ちて来ただろ。君には床を這いつくばる才能があるよ」
「俺の事馬鹿にしてるだろ?」
「やだな、全人類を馬鹿にしてるよ。君に限った話じゃない」
「それ聞いてああ良かったなんて思うとでも思ってんの?」

 思っているのだけれど彼はそうじゃないらしい。僕は彼に側に行きかがみ込んで頭を撫でた。彼はそれはもう嫌そうな顔をする。

「魔法が使えないって不便だよね。魔法が使えたらそれぐらいすぐ自分で治せるのに」

 治してあげると、彼は嫌そうな顔のまま起き上がる。

「治してくれてありがとうございますは?」
「人の身体で遊んで申し訳ありませんだろ」

 彼は立ち上がり、二階の自室に戻って行った。いつもなら朝ご飯の準備をしてくれる時間なのに。拗ねたのだろうか。
 まあなんでもいいやと思いながら僕は少し冷めたコーヒーを飲み始めた。

 数分してから彼はまた階段を降りてきた。何故か金槌を手に持っている。

「何か作るの?」

 僕が言い終わるより前に、彼は僕を椅子ごと床に突き飛ばすと、金槌を振り上げて膝に躊躇なく叩き付けた。激痛と共に骨が砕ける絶対に聞こえてはいけない類の音が聞こえた。

「い゙ぎぅ゙ゔ……!」
「魔法使いって便利だよね。それぐらいすぐ自分で治せるだろ」

 床でのたうつ僕を見て彼は気が済んだようでさっさと台所に消えていった。僕は何とか骨を修復して起き上がり、倒れた椅子を元に戻す。

 彼はいつも容赦も躊躇もなくやり返してくる。そこらの人間なんて、また何かされるのではないかと怖がって逃げていくのに。

 台所からは何かを焼く音が聞こえてくる。彼は多分もう僕のことはどうでもいいと思っている。僕の足を叩き折った罪悪感なんてそもそも存在しないだろう。酷い話だ。

 まあでも、そういうところが凄く好きで一緒に暮らしている。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

そばにいてほしい。

15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。 そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。 ──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。 幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け 安心してください、ハピエンです。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

短編エロ

黒弧 追兎
BL
ハードでもうらめぇ、ってなってる受けが大好きです。基本愛ゆえの鬼畜です。痛いのはしません。 前立腺責め、乳首責め、玩具責め、放置、耐久、触手、スライム、研究 治験、溺愛、機械姦、などなど気分に合わせて色々書いてます。リバは無いです。 挿入ありは.が付きます よろしければどうぞ。 リクエスト募集中!

風邪をひいてフラフラの大学生がトイレ行きたくなる話

こじらせた処女
BL
 風邪でフラフラの大学生がトイレに行きたくなるけど、体が思い通りに動かない話

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

【R18】触手

おとめ
BL
触手物。 ぐろえろ注意

保育士だっておしっこするもん!

こじらせた処女
BL
 男性保育士さんが漏らしている話。ただただ頭悪い小説です。 保育士の道に進み、とある保育園に勤めている尾北和樹は、新人で戸惑いながらも、やりがいを感じながら仕事をこなしていた。  しかし、男性保育士というものはまだまだ珍しく浸透していない。それでも和樹が通う園にはもう一人、男性保育士がいた。名前は多田木遼、2つ年上。  園児と一緒に用を足すな。ある日の朝礼で受けた注意は、尾北和樹に向けられたものだった。他の女性職員の前で言われて顔を真っ赤にする和樹に、気にしないように、と多田木はいうが、保護者からのクレームだ。信用問題に関わり、同性職員の多田木にも迷惑をかけてしまう、そう思い、その日から3階の隅にある職員トイレを使うようになった。  しかし、尾北は一日中トイレに行かなくても平気な多田木とは違い、3時間に一回行かないと限界を迎えてしまう体質。加えて激務だ。園児と一緒に済ませるから、今までなんとかやってこれたのだ。それからというものの、限界ギリギリで間に合う、なんて危ない状況が何度か見受けられた。    ある日の紅葉が色づく頃、事件は起こる。その日は何かとタイミングが掴めなくて、いつもよりさらに忙しかった。やっとトイレにいける、そう思ったところで、前を押さえた幼児に捕まってしまい…?

嫌がる繊細くんを連続絶頂させる話

てけてとん
BL
同じクラスの人気者な繊細くんの弱みにつけこんで何度も絶頂させる話です。結構鬼畜です。長すぎたので2話に分割しています。

処理中です...