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◆付き合ってない
宇宙由来の何か
しおりを挟む千年間、ずっと孤独だった。かつてはかみさまと崇められていたのに、いつしか誰も僕のことなんか信じなくなって、姿が見えなくなって、声が聞こえなくなって、最後には存在していた事さえ忘れ去られてしまった。
本当に消え去ってしまえれば良かったのにと何度思ったことだろうか。かみさまと呼ばれていた僕は、他の生物のように死ぬ事が出来なかった。何をしても死ねず、ただただ孤独に苛まれ続けて、そうして千年が過ぎてしまった。
千一年目、僕は彼に出会った。最初に、目が合った。そして彼から声をかけてきた。間違いなく僕へと向けられた言葉を聞いた瞬間に僕の目からは涙が溢れ出てきた。
僕は彼に千年間の孤独を語った。彼は隣に座って静かに話を聞いて、可哀想にと慰めてくれた。涙はとめどなく流れ続けた。
話したい事を全て話し終えた頃、彼は「俺もずっと一人だった」と言った。ああ、だから彼は見ず知らずの僕にこんなに優しくしてくれるのだと納得し、「君は何年一人でいたの?」と尋ねた。
「十万年」
涙が止まった。何を言われているのか分からず、何度も頭の中でその言葉を繰り返した。十万年。十万。千の次の位の、そのまた次の位。
唖然とする僕に向かって彼は言葉を続ける。
「君って、可哀想だよね」
さっきまで何度も言われていた言葉だったけれど、明らかに含まれている意味が違って聞こえた。
「たかだか千年一人でいるのも耐えられないなんて」
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