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◆付き合ってる
続 四月三日
しおりを挟む僕にはやばい恋人がいる。名前はパラス。四月一日に冗談で告白し、二日後に嘘だと伝えたらブチ切れられてしまって口を針で縫い付けられそうになりなんやかんやで付き合うことになった。
パラスとは高校時代からの友人だった。特別冗談が通じない相手という訳では無かった。むしろ気軽に冗談を言える間柄だったと思う。僕の運が悪かったのは彼の許容範囲を超える嘘をついてしまった事だ。
彼の頭はやばいとは言え今のところは普通に付き合っている。近場をデートしたりお互いの家に行ったり。恋人という関係である事を除けば今までと大して変わらない。
付き合っているのは不可抗力とは言え、別に嫌という訳じゃない。いざ付き合ってみると満更でもないので僕って結構彼の事好きだったんだななんて思っているぐらいだ。
しかし彼の方はどう思っているのか分からない。僕への好感度は嘘をついたら口を縫いつけても良いかと思う程度しかなかったはず。少なくとも四月三日まではそうだった。今はどうなのだろう。告白されたから付き合っている以上の感情はあるのだろうか。
「君って僕のこと好き?」
デートの折、僕は思い切って彼に聞いてみた。
「好きだよ」
「どこが好き?」
「俺のこと好きなところ」
それって僕自身の好きな所はないということでは無いだろうか。
「他は? 何にもない?」
「急にどうしたの?」
「気になるんだよ。ねえ、どこか好きなところない?」
彼は顎に手を当てて考え込むような仕草をした。僕はどきどきしながら返答を待った。
「特にない」
「……そっかあ」
なんだろうかこの感情は。僕って、結構どころかかなり彼の事好きなんだな。こんなにも悲しいなんて。
あまりにも悲しかったので僕は彼を気絶させて家に拉致した。ガムテープで縛り上げ床に転がした彼の口元に針を近付ける。
「長年一緒にいたんだから好きなところの一つや二つぐらい絞り出せばあるはず」
「待って、考えるから、待って」
彼は顔を青くしている。
「か、顔とか……声とか性格とか身長」
「それって前に僕が言ったところじゃないか」
「……」
「針十本ぐらい飲んだら思い付く?」
「待って、頼むから、待って」
額に脂汗を滲ませながら悩む彼を眺めつつ、裁縫ケースの中から取り出した針を針山に刺しながら待っていたら、ようやく彼は口を開いた。
「目的の為に手段を選ばない意志が強いところ」
僕はぱあっと笑顔になり針山を放り投げた。彼を抱き起こし強く抱き締める。
「やっぱり僕ら両想いだね♡」
「……そうだね」
彼はぽそりと「嘘ついた癖に」と呟いた。確かに僕は嘘をついたけれど、現実になったんだから別に良いじゃないか。
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