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第1話
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「レジーヌ・ルーキエ公爵令嬢! お前とは婚約破棄する! よくも私の愛しいマーシャを虐めてくれたな! そんな性根の卑しいお前とは婚約破棄して、私は新たにマーシャと婚約することをここに宣言する!」
「ダミアン様ぁ、わたし、怖かったぁ~!」
「マーシャ、あの女は私が成敗してやるから安心しろ」
その茶番劇は唐突に始まった。
今日は王立学園の卒業パーティーの日。
シャルロット・ルーキエ公爵令嬢は学園の生徒会役員の一人で、卒業パーティーの裏方として参加している。
彼女は給仕の担当者から飲み物が足りないと連絡を受け、それをすぐに会場に手配するというひと仕事を終えて、パーティー会場である学園のホールに戻ってきたところで、茶番劇が始まった。
王太子ダミアンは側近二人と令嬢一人を連れて、シャルロットの姉であるレジーヌと対峙している。
側近は宰相の息子と騎士団長の息子、令嬢はマーシャ・オランド子爵令嬢だ。
マーシャはダミアンがレジーヌに婚約破棄を告げた瞬間、口角を上げてにんまりと笑っていた。
観衆は皆、興味津々にこの茶番劇に注目している。
(あらあら。やっぱりこうなってしまいましたか。お姉様は気が強くてプライドも高い。彼女を側妃として認めるのではなく、排除しようとするからこうなるのよ。お姉様のことだから徹底的に排除しようとしたのでしょうけれど、彼女がそれを逆手にとって王太子殿下に虐められたと泣きつけばお姉様の印象が悪くなる。お姉様には残念でしたが、これは彼女の方が上手でしたわね)
この国は国王のみ一夫多妻が認められている。
なので、公爵令嬢であるレジーヌを正妃として娶り、ダミアンとレジーヌの間に男児が生まれた後、マーシャを娶るのは法律上問題がない。
「そ、そんな……! ダミアン王太子殿下、悪い所は直すから考え直しを!」
婚約破棄を告げられたレジーヌはぺたんと地面に足をつき、泣いて縋るがダミアンの中ではレジーヌは愛しい恋人を虐げた悪女となっている為、ダミアンは聞く耳を持たない。
「考え直すことなどない。もうお前の顔を見るのも不愉快だ。去れ」
ダミアンは冷たくそう吐き捨てて、もうレジーヌのことを見ようともしない。
レジーヌはよろよろと立ち上がり、泣きながらカーテシーをして会場から退場した。
(さて、これからどうなるのかしらね。そもそも王太子殿下は国王陛下夫妻に許可を取って婚約破棄と新たな婚約を宣言されたのかしら? 許可があったかどうかは知らないけれど、こんなに大勢の目の前で宣言されたらなかったことにはならない。この婚約破棄の決着はお父様と国王陛下で話し合われることになるのでしょうが、あまり我が家の不利益にならないようにはして頂きたいですわね。お姉様の新たな婚約もどうなることやら)
「ダミアン様ぁ、わたし、怖かったぁ~!」
「マーシャ、あの女は私が成敗してやるから安心しろ」
その茶番劇は唐突に始まった。
今日は王立学園の卒業パーティーの日。
シャルロット・ルーキエ公爵令嬢は学園の生徒会役員の一人で、卒業パーティーの裏方として参加している。
彼女は給仕の担当者から飲み物が足りないと連絡を受け、それをすぐに会場に手配するというひと仕事を終えて、パーティー会場である学園のホールに戻ってきたところで、茶番劇が始まった。
王太子ダミアンは側近二人と令嬢一人を連れて、シャルロットの姉であるレジーヌと対峙している。
側近は宰相の息子と騎士団長の息子、令嬢はマーシャ・オランド子爵令嬢だ。
マーシャはダミアンがレジーヌに婚約破棄を告げた瞬間、口角を上げてにんまりと笑っていた。
観衆は皆、興味津々にこの茶番劇に注目している。
(あらあら。やっぱりこうなってしまいましたか。お姉様は気が強くてプライドも高い。彼女を側妃として認めるのではなく、排除しようとするからこうなるのよ。お姉様のことだから徹底的に排除しようとしたのでしょうけれど、彼女がそれを逆手にとって王太子殿下に虐められたと泣きつけばお姉様の印象が悪くなる。お姉様には残念でしたが、これは彼女の方が上手でしたわね)
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なので、公爵令嬢であるレジーヌを正妃として娶り、ダミアンとレジーヌの間に男児が生まれた後、マーシャを娶るのは法律上問題がない。
「そ、そんな……! ダミアン王太子殿下、悪い所は直すから考え直しを!」
婚約破棄を告げられたレジーヌはぺたんと地面に足をつき、泣いて縋るがダミアンの中ではレジーヌは愛しい恋人を虐げた悪女となっている為、ダミアンは聞く耳を持たない。
「考え直すことなどない。もうお前の顔を見るのも不愉快だ。去れ」
ダミアンは冷たくそう吐き捨てて、もうレジーヌのことを見ようともしない。
レジーヌはよろよろと立ち上がり、泣きながらカーテシーをして会場から退場した。
(さて、これからどうなるのかしらね。そもそも王太子殿下は国王陛下夫妻に許可を取って婚約破棄と新たな婚約を宣言されたのかしら? 許可があったかどうかは知らないけれど、こんなに大勢の目の前で宣言されたらなかったことにはならない。この婚約破棄の決着はお父様と国王陛下で話し合われることになるのでしょうが、あまり我が家の不利益にならないようにはして頂きたいですわね。お姉様の新たな婚約もどうなることやら)
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