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第19話 婚約①
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シルヴィアがルークを連れて、ローランズ公爵邸に帰ってきた翌朝。
ダイニングで朝食を食べていたシルヴィアに父であるデイヴィットが告げる。
「そうそう、シルヴィ。今日も午前中にルーク殿が我が家に来るから、食べ終わったら彼をお迎えするのに相応しい装いをしておけ」
(は!? 今日も来る? 一体何をしに?)
「お父様、彼は一体何の用事で来られるのですか?」
「それは彼が来てからシルヴィに話す。今の時点で言えることはシルヴィ、お前に関する話だ」
食後の紅茶を全て飲んで、シルヴィアは自室に戻り、言われた通りにルークを出迎えるのに相応しいように着替えて身なりを整えた。
今日のドレスは落ち着いた印象のネイビーのドレスだ。
ドレスのスカート部分には細かいダイヤモンドの粒が縫い付けられており、光が当たる度キラキラと輝く。
髪型は全体的にコテで巻いてくるくるにした後、ハーフアップにしてもらい、真珠の髪飾りをつける。
準備が出来たシルヴィアは玄関に出向く。
するとちょうどルークが到着したようである。
今日のルークは仕立ての良い一張羅の正装で、手には真っ赤な薔薇の大きなブーケを持っている。
「おはよう、シルヴィ。今日も君に会えて僕は嬉しいよ」
ルークは今日も朝から麗しい笑顔だ。
「ルーク、おはようございます」
「今日は閣下と会う約束があってお邪魔させてもらったんだけど、閣下と会う前にシルヴィと話をしなくちゃいけないから、まずシルヴィの部屋で話をさせてもらってもいいかい? 誓って不埒なことをするつもりはないし、部屋のドアを開けて外から使用人が部屋の様子を確認できるようにして構わないから」
ルークは真剣な表情だったので、シルヴィアは彼を信用することにした。
「わかりましたわ。では、私の部屋で話を聞かせて頂きます」
「ありがとう、シルヴィ。じゃあ君の部屋に案内してくれる?」
「はい。では、ついて来て下さい。それとカレナは私と一緒に来て」
カレナはシルヴィア付きのメイドの一人である。
シルヴィアより3歳年上で、年齢が近く、主従関係ではあるもののシルヴィアにとっては姉のような存在である。
「シルヴィアお嬢様、畏まりました」
シルヴィアの部屋はローランズ公爵邸の二階の角部屋である。
彼女が自室で気に入っているところは日当たりが良く、部屋から公爵邸の庭園が見えるところだ。
シルヴィアとルークは部屋の中に入り、カレナは開いたドア付近で控える。
「ここがシルヴィの部屋かぁ~…。結構女の子っぽい部屋だね」
ルークはきょろきょろと室内を見渡す。
「可愛いものは人並に好きなので部屋は割と可愛い感じにしていますの」
レースのカーテンや繊細な彫刻入りの書き物机、猫足のソファーに天蓋付きのベッド。
ただし、可愛いと言ってもレースやフリルでゴテゴテしたものばかりではなく、アンティーク調の上品さのあるもので、室内は家具を含めて落ち着いた色合いのものが多い。
「ルーク、こちらに座って下さい」
シルヴィアはソファーに腰掛け、ルークに座るよう指示する。
「失礼するよ」
ルークが隣に腰掛けたところで、本題に入る。
「それで、私に何のお話が?」
「単刀直入に言おう。シルヴィ、僕と婚約してくれないか?」
「え……? どうして私と婚約……? な、何かの冗談ですわよね?」
ルークは真剣な表情をしており、ふざけた様子は全くない。
「冗談なんかではない。僕は真面目に言っている」
「私とあなた、一昨日会ったばかりですわ。婚約する理由がわかりません」
(昨日、ルークの屋敷で”責任を取って欲しいということであれば責任を取る”とは言っていたけれど、あの時は軽い感じで言ってたから口から出まかせで言ってるだけかと思ったのに……)
「理由を言わないと、シルヴィは当然納得はしないだろうから説明するね。シルヴィは早く次の婚約者を決めないと足元を見られて、君が望まない婚約をする羽目になる可能性がある。それを回避する為に僕との婚約だ。僕以上に条件面でシルヴィの婚約相手にいい者はいない」
「望まない婚約って具体的には? 婚約破棄されたばかりでまだ次の婚約なんて考えられないのですが……」
「確かに考えられないのはわかる。わかるけれど、早急に決めなければならない話なんだ。望まない婚約っていうのは、訳ありと後妻、王家から婚約破棄をなかったことにしての復縁。考えられるのはこの三つ。訳ありと後妻は説明はいらないだろうから省略するね。王家からの復縁については文字通りの復縁。だけど、元々の婚約とは条件が違う」
ルークはそこで一度区切り、説明を続ける。
「シルヴィ、君は酒場で”婚約者の両親は婚約破棄と新たな婚約について了承している”と言っていたけれど、それは嘘で、僕はフィリップ王太子殿下が国王陛下夫妻の了承を得ないまま婚約破棄したと思っている」
「え……?」
ダイニングで朝食を食べていたシルヴィアに父であるデイヴィットが告げる。
「そうそう、シルヴィ。今日も午前中にルーク殿が我が家に来るから、食べ終わったら彼をお迎えするのに相応しい装いをしておけ」
(は!? 今日も来る? 一体何をしに?)
「お父様、彼は一体何の用事で来られるのですか?」
「それは彼が来てからシルヴィに話す。今の時点で言えることはシルヴィ、お前に関する話だ」
食後の紅茶を全て飲んで、シルヴィアは自室に戻り、言われた通りにルークを出迎えるのに相応しいように着替えて身なりを整えた。
今日のドレスは落ち着いた印象のネイビーのドレスだ。
ドレスのスカート部分には細かいダイヤモンドの粒が縫い付けられており、光が当たる度キラキラと輝く。
髪型は全体的にコテで巻いてくるくるにした後、ハーフアップにしてもらい、真珠の髪飾りをつける。
準備が出来たシルヴィアは玄関に出向く。
するとちょうどルークが到着したようである。
今日のルークは仕立ての良い一張羅の正装で、手には真っ赤な薔薇の大きなブーケを持っている。
「おはよう、シルヴィ。今日も君に会えて僕は嬉しいよ」
ルークは今日も朝から麗しい笑顔だ。
「ルーク、おはようございます」
「今日は閣下と会う約束があってお邪魔させてもらったんだけど、閣下と会う前にシルヴィと話をしなくちゃいけないから、まずシルヴィの部屋で話をさせてもらってもいいかい? 誓って不埒なことをするつもりはないし、部屋のドアを開けて外から使用人が部屋の様子を確認できるようにして構わないから」
ルークは真剣な表情だったので、シルヴィアは彼を信用することにした。
「わかりましたわ。では、私の部屋で話を聞かせて頂きます」
「ありがとう、シルヴィ。じゃあ君の部屋に案内してくれる?」
「はい。では、ついて来て下さい。それとカレナは私と一緒に来て」
カレナはシルヴィア付きのメイドの一人である。
シルヴィアより3歳年上で、年齢が近く、主従関係ではあるもののシルヴィアにとっては姉のような存在である。
「シルヴィアお嬢様、畏まりました」
シルヴィアの部屋はローランズ公爵邸の二階の角部屋である。
彼女が自室で気に入っているところは日当たりが良く、部屋から公爵邸の庭園が見えるところだ。
シルヴィアとルークは部屋の中に入り、カレナは開いたドア付近で控える。
「ここがシルヴィの部屋かぁ~…。結構女の子っぽい部屋だね」
ルークはきょろきょろと室内を見渡す。
「可愛いものは人並に好きなので部屋は割と可愛い感じにしていますの」
レースのカーテンや繊細な彫刻入りの書き物机、猫足のソファーに天蓋付きのベッド。
ただし、可愛いと言ってもレースやフリルでゴテゴテしたものばかりではなく、アンティーク調の上品さのあるもので、室内は家具を含めて落ち着いた色合いのものが多い。
「ルーク、こちらに座って下さい」
シルヴィアはソファーに腰掛け、ルークに座るよう指示する。
「失礼するよ」
ルークが隣に腰掛けたところで、本題に入る。
「それで、私に何のお話が?」
「単刀直入に言おう。シルヴィ、僕と婚約してくれないか?」
「え……? どうして私と婚約……? な、何かの冗談ですわよね?」
ルークは真剣な表情をしており、ふざけた様子は全くない。
「冗談なんかではない。僕は真面目に言っている」
「私とあなた、一昨日会ったばかりですわ。婚約する理由がわかりません」
(昨日、ルークの屋敷で”責任を取って欲しいということであれば責任を取る”とは言っていたけれど、あの時は軽い感じで言ってたから口から出まかせで言ってるだけかと思ったのに……)
「理由を言わないと、シルヴィは当然納得はしないだろうから説明するね。シルヴィは早く次の婚約者を決めないと足元を見られて、君が望まない婚約をする羽目になる可能性がある。それを回避する為に僕との婚約だ。僕以上に条件面でシルヴィの婚約相手にいい者はいない」
「望まない婚約って具体的には? 婚約破棄されたばかりでまだ次の婚約なんて考えられないのですが……」
「確かに考えられないのはわかる。わかるけれど、早急に決めなければならない話なんだ。望まない婚約っていうのは、訳ありと後妻、王家から婚約破棄をなかったことにしての復縁。考えられるのはこの三つ。訳ありと後妻は説明はいらないだろうから省略するね。王家からの復縁については文字通りの復縁。だけど、元々の婚約とは条件が違う」
ルークはそこで一度区切り、説明を続ける。
「シルヴィ、君は酒場で”婚約者の両親は婚約破棄と新たな婚約について了承している”と言っていたけれど、それは嘘で、僕はフィリップ王太子殿下が国王陛下夫妻の了承を得ないまま婚約破棄したと思っている」
「え……?」
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