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第5話
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走り去ったブリジットにソフィアとソフィアの両親は呆気にとられたが、すぐに元の険しい表情に戻る。
「どうやら彼女は単なる爵位と財産目当てだったようだな。ご愁傷様」
「彼女と相思相愛だと思ったのに……僕自身を見てくれた訳じゃなくて爵位と財産目当てだったなんて……」
ビクターはブリジットに振られることは予想だにしなかったようで、彼女の掌返しに打ちひしがれている。
「恋人に振られるという予定外な展開はさておき、ビクター君。君は彼女と結婚するからソフィアと婚約破棄するという話だったね」
ソフィアの父がビクターに語りかけたが、ビクターもその続きが予想出来たのだろう。
ビクターは素早く話を繋げる。
「その話なんだけど、ブリジットに振られちゃったし、やっぱりソフィと婚約破棄するのはやっぱり無しの方向で! ソフィだって本当は嫌々婚約破棄を承諾したんだろうし、また僕と一緒にいられたら嬉しいよね?」
ビクターは神妙な表情を浮かべ語り始めたが、段々と曇りのない笑顔になっていった。
まるでソフィアが婚約破棄が無しになって嬉しいと思っていることを疑っていない笑顔だ。
(どうしてそう思えるのかわからないわ。私もビクターが恋愛的に好きという訳ではなかったから私を好きになることは求めないけれど、婚約しているのに他の令嬢に現を抜かす不誠実な人はその時点で願い下げ。婚約破棄をなかったことにしようなんてどこまでもゲスね)
「ビクター君はそう言っているが、ソフィアはどう思っているんだい?」
「私は婚約破棄のままで構いません。都合が悪いことはなかったことにして、何とか私を丸め込んで侯爵家から出て行かなくても良いようにしているのが見え見えですわ」
ソフィアは冷めきった表情で淡々と告げる。
「ソ、ソフィ……?」
ソフィアからの言葉は自分が望むようなものではなかったことにビクターは動揺する。
「ソフィアもこう言ってることだし、婚約破棄は覆らない。……ということで、ビクター君。君はもう我が家にとって不要な存在だから身一つで今すぐ出て行ってくれ」
「身一つで!? せめて僕の衣装は持って行けるだけ持って行きたいんだけど。いざという時にはそれを売るし」
「君は能天気に何も考えずに婚約破棄したのだろうけれど、本来婚約破棄・解消には非がある側が慰謝料を払うのが通例だ。本人又はその家族が支払うが、君の場合、君自身に支払い能力はなく、かと言って君の実家の子爵家は君の叔父家族が乗っ取り後、度を越えた浪費で破産寸前でお家取りつぶしはもう目の前。君の為に慰謝料を払うということはしないと思われる。だから君が何かにつけて私達に買わせた衣装を全部売って慰謝料の代わりとする」
「慰謝料……」
ビクターが呆然と呟く。
やはり慰謝料のことなど知らずに婚約破棄したようである。
「そうね。それが妥当。自分のやったことは全部自分に返ってくるのよ」
「そういうことだ。さぁ、ビクター君を門まで連れて行ってくれ」
ソフィアの父の命令に執事と侯爵家を警備している使用人が抵抗しているビクターを引きずって行く。
「ビクター。もう二度とあなたに会うことはないわ。さようなら」
ビクターに聞こえたかどうかわからない小さな声でソフィアは別れを告げる。
――こうして婚約破棄騒動は幕を閉じた。
「どうやら彼女は単なる爵位と財産目当てだったようだな。ご愁傷様」
「彼女と相思相愛だと思ったのに……僕自身を見てくれた訳じゃなくて爵位と財産目当てだったなんて……」
ビクターはブリジットに振られることは予想だにしなかったようで、彼女の掌返しに打ちひしがれている。
「恋人に振られるという予定外な展開はさておき、ビクター君。君は彼女と結婚するからソフィアと婚約破棄するという話だったね」
ソフィアの父がビクターに語りかけたが、ビクターもその続きが予想出来たのだろう。
ビクターは素早く話を繋げる。
「その話なんだけど、ブリジットに振られちゃったし、やっぱりソフィと婚約破棄するのはやっぱり無しの方向で! ソフィだって本当は嫌々婚約破棄を承諾したんだろうし、また僕と一緒にいられたら嬉しいよね?」
ビクターは神妙な表情を浮かべ語り始めたが、段々と曇りのない笑顔になっていった。
まるでソフィアが婚約破棄が無しになって嬉しいと思っていることを疑っていない笑顔だ。
(どうしてそう思えるのかわからないわ。私もビクターが恋愛的に好きという訳ではなかったから私を好きになることは求めないけれど、婚約しているのに他の令嬢に現を抜かす不誠実な人はその時点で願い下げ。婚約破棄をなかったことにしようなんてどこまでもゲスね)
「ビクター君はそう言っているが、ソフィアはどう思っているんだい?」
「私は婚約破棄のままで構いません。都合が悪いことはなかったことにして、何とか私を丸め込んで侯爵家から出て行かなくても良いようにしているのが見え見えですわ」
ソフィアは冷めきった表情で淡々と告げる。
「ソ、ソフィ……?」
ソフィアからの言葉は自分が望むようなものではなかったことにビクターは動揺する。
「ソフィアもこう言ってることだし、婚約破棄は覆らない。……ということで、ビクター君。君はもう我が家にとって不要な存在だから身一つで今すぐ出て行ってくれ」
「身一つで!? せめて僕の衣装は持って行けるだけ持って行きたいんだけど。いざという時にはそれを売るし」
「君は能天気に何も考えずに婚約破棄したのだろうけれど、本来婚約破棄・解消には非がある側が慰謝料を払うのが通例だ。本人又はその家族が支払うが、君の場合、君自身に支払い能力はなく、かと言って君の実家の子爵家は君の叔父家族が乗っ取り後、度を越えた浪費で破産寸前でお家取りつぶしはもう目の前。君の為に慰謝料を払うということはしないと思われる。だから君が何かにつけて私達に買わせた衣装を全部売って慰謝料の代わりとする」
「慰謝料……」
ビクターが呆然と呟く。
やはり慰謝料のことなど知らずに婚約破棄したようである。
「そうね。それが妥当。自分のやったことは全部自分に返ってくるのよ」
「そういうことだ。さぁ、ビクター君を門まで連れて行ってくれ」
ソフィアの父の命令に執事と侯爵家を警備している使用人が抵抗しているビクターを引きずって行く。
「ビクター。もう二度とあなたに会うことはないわ。さようなら」
ビクターに聞こえたかどうかわからない小さな声でソフィアは別れを告げる。
――こうして婚約破棄騒動は幕を閉じた。
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