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第2話
しおりを挟む ビクター・ダリオ子爵令息はソフィアの婚約者であるが、出会った当初から婚約者という訳ではなかった。
ソフィアの母とビクターの母が女学園時代の友人同士で、ビクターの母がビクターを連れてリシャール侯爵家を訪れていた為、ソフィアとビクターは幼い頃から交流があり、元々は幼馴染という関係だった。
幼馴染という関係から婚約者に変わったのは、ビクターの両親が馬車の事故で亡くなった時である。
ビクターが10歳の頃、彼の両親が死亡したのだが、両親が亡くなって悲しみに暮れるビクターをそっちのけにダリオ子爵家は早々にビクターの父の弟家族に乗っ取られてしまった。
当時ビクターがまだ10歳という家のことは右も左もわからない子供だったことが、彼にとって大きな不運だった。
しかし、ビクターの母が生前ソフィアの母に宛てた”もし自分達が死亡した時はビクターのことを託す”という手紙がソフィアの母の元に届いた。
ビクターの父は自分の弟が執拗にダリオ子爵家の爵位を狙っていることを知っていたから、妻にも事情を説明し、万が一自分達が死亡した時にビクターが理不尽に弟――ビクターから見ると叔父――に虐げられることがないよう手を打つことにしたのである。
ソフィアの母は亡き友人の頼みならばということで、ビクターをリシャール侯爵家に引き取り、幼い頃から交流があって気心も知れているだろうとソフィアとビクターを婚約させることにした。
通常、貴族の婚姻は家にとって何かしらの利益が出るよう結ばれるものが大半だが、ソフィアとビクターの場合はリシャール家にとっては何の旨みもないものである。
しかし、夫人からの頼みからだからと言ってビクターを引き取ったことをソフィアの両親は年々後悔するようになっていった。
それと言うのも最初のうちは謙虚だったビクターは年々図々しくなっていき、今では侯爵家の実の娘であるソフィアよりも服飾品にお金をかけている。
娘の婚約者がみすぼらしい身なりでは……というところは確かにあるので無理矢理納得していたが、腑に落ちなかった。
前に一度、ソフィアの母が、度が過ぎていることを注意しようとすると”おばさんは僕が嫌いだからそんな意地悪を言うんだね”と全く意味がわからない見当違いのことを言い、おもちゃを与えられない子供のように泣き喚いた。
それ以来面倒になってしまい、ねだられたものを買い与えてしまっていた。
ビクターは今、18歳。
この国では18歳の誕生日を迎えると成人とみなされる。
もうソフィアの両親が成人した彼の生活の面倒を見てやる必要もない。
恩着せがましく言うつもりはないが、彼を家に引き取っていい暮らしをさせていたのは将来的に娘婿になるからである。
ビクターが勉強をさぼって街に入り浸っているという情報は当然両親にも伝わっており、義務を果たさない者にこの生活を続けさせる義理はないと見切りをつけた矢先に、ビクターがブリジットを伴い、ソフィアに婚約破棄を告げたのである。
ソフィアの母とビクターの母が女学園時代の友人同士で、ビクターの母がビクターを連れてリシャール侯爵家を訪れていた為、ソフィアとビクターは幼い頃から交流があり、元々は幼馴染という関係だった。
幼馴染という関係から婚約者に変わったのは、ビクターの両親が馬車の事故で亡くなった時である。
ビクターが10歳の頃、彼の両親が死亡したのだが、両親が亡くなって悲しみに暮れるビクターをそっちのけにダリオ子爵家は早々にビクターの父の弟家族に乗っ取られてしまった。
当時ビクターがまだ10歳という家のことは右も左もわからない子供だったことが、彼にとって大きな不運だった。
しかし、ビクターの母が生前ソフィアの母に宛てた”もし自分達が死亡した時はビクターのことを託す”という手紙がソフィアの母の元に届いた。
ビクターの父は自分の弟が執拗にダリオ子爵家の爵位を狙っていることを知っていたから、妻にも事情を説明し、万が一自分達が死亡した時にビクターが理不尽に弟――ビクターから見ると叔父――に虐げられることがないよう手を打つことにしたのである。
ソフィアの母は亡き友人の頼みならばということで、ビクターをリシャール侯爵家に引き取り、幼い頃から交流があって気心も知れているだろうとソフィアとビクターを婚約させることにした。
通常、貴族の婚姻は家にとって何かしらの利益が出るよう結ばれるものが大半だが、ソフィアとビクターの場合はリシャール家にとっては何の旨みもないものである。
しかし、夫人からの頼みからだからと言ってビクターを引き取ったことをソフィアの両親は年々後悔するようになっていった。
それと言うのも最初のうちは謙虚だったビクターは年々図々しくなっていき、今では侯爵家の実の娘であるソフィアよりも服飾品にお金をかけている。
娘の婚約者がみすぼらしい身なりでは……というところは確かにあるので無理矢理納得していたが、腑に落ちなかった。
前に一度、ソフィアの母が、度が過ぎていることを注意しようとすると”おばさんは僕が嫌いだからそんな意地悪を言うんだね”と全く意味がわからない見当違いのことを言い、おもちゃを与えられない子供のように泣き喚いた。
それ以来面倒になってしまい、ねだられたものを買い与えてしまっていた。
ビクターは今、18歳。
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もうソフィアの両親が成人した彼の生活の面倒を見てやる必要もない。
恩着せがましく言うつもりはないが、彼を家に引き取っていい暮らしをさせていたのは将来的に娘婿になるからである。
ビクターが勉強をさぼって街に入り浸っているという情報は当然両親にも伝わっており、義務を果たさない者にこの生活を続けさせる義理はないと見切りをつけた矢先に、ビクターがブリジットを伴い、ソフィアに婚約破棄を告げたのである。
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