1 / 7
第1話
しおりを挟む
季節の花々が色とりどりに咲き誇るリシャール侯爵邸の庭園で、ソフィアは一人読書をしながら優雅なアフタヌーンのティータイムを満喫していた。
ソフィアは勉強の息抜きに庭園でお茶を楽しみながら読書することをほぼ毎日の日課としている。
そんな静寂の時間を邪魔するように、バタバタと品のない足音が複数聞こえる。
一体何事かとソフィアが思っているうちに、その足音が止まり、目の前にはソフィアの知らない令嬢を連れたビクター・ダリオ子爵令息がいた。
令嬢は穏やかな午後には全く相応しくない胸元が大胆に開いた真っ赤なドレスを着ており、ややきつめの顔立ちである。
そしてソフィアが見たことがない令嬢ということは、恐らく子爵や男爵など下級貴族の娘なのだろうと推測する。
「ソフィ。君とは婚約破棄する! そして僕は恋人であるブリジット・サル―男爵令嬢と結婚する!」
ビクターの言葉にブリジットは勝ち誇った顔をソフィアに向ける。
(なるほど。最近勉強をさぼって屋敷から抜け出して街の方に入り浸っていると使用人から報告があったけれど、そういうことだったのね。そしてそんな勝ち誇った顔をしなくてもこんなのでよろしければ喜んでお譲りしますわ)
「わかりましたわ。お父様とお母様には私から伝えておきます」
「頼んだよ。そしてブリジットと結婚するにあたり、ソフィにはリシャール侯爵家を出て行って欲しい。リシャール侯爵家は僕達夫婦が盛り立てていくから」
「ソフィアさんはこの家のことは気にしなくてもいいのよ。だから安心してどこへでも行って下さい」
ビクターとブリジットはとんでもないことを満面の笑みで告げる。
「それは私の台詞ですわ。リシャール侯爵家は私の家。あなたは、私のお母様の温情で我が家に居候しているだけの存在。私と結婚しないならば、あなたはこの家で暮らす必要はない。あなたの方こそ即刻我が家から出て行って頂きますわ!」
「僕はこの家の息子だ! だってあれだけおじさんとおばさんは僕によくしてくれてるんだもの」
「あなたはリシャール侯爵家の息子ではありませんわ。あなたの籍は今現在リシャール侯爵家には入っていません」
「嘘だ! じゃあおじさんとおばさんを連れてきて確認しろ! ソフィの言葉なんて信じない!」
ソフィアはため息をついて、自分の専属使用人であるマリアに声をかける。
「マリア。お父様とお母様をここに呼んで来て下さる?」
「畏まりました」
ソフィアは勉強の息抜きに庭園でお茶を楽しみながら読書することをほぼ毎日の日課としている。
そんな静寂の時間を邪魔するように、バタバタと品のない足音が複数聞こえる。
一体何事かとソフィアが思っているうちに、その足音が止まり、目の前にはソフィアの知らない令嬢を連れたビクター・ダリオ子爵令息がいた。
令嬢は穏やかな午後には全く相応しくない胸元が大胆に開いた真っ赤なドレスを着ており、ややきつめの顔立ちである。
そしてソフィアが見たことがない令嬢ということは、恐らく子爵や男爵など下級貴族の娘なのだろうと推測する。
「ソフィ。君とは婚約破棄する! そして僕は恋人であるブリジット・サル―男爵令嬢と結婚する!」
ビクターの言葉にブリジットは勝ち誇った顔をソフィアに向ける。
(なるほど。最近勉強をさぼって屋敷から抜け出して街の方に入り浸っていると使用人から報告があったけれど、そういうことだったのね。そしてそんな勝ち誇った顔をしなくてもこんなのでよろしければ喜んでお譲りしますわ)
「わかりましたわ。お父様とお母様には私から伝えておきます」
「頼んだよ。そしてブリジットと結婚するにあたり、ソフィにはリシャール侯爵家を出て行って欲しい。リシャール侯爵家は僕達夫婦が盛り立てていくから」
「ソフィアさんはこの家のことは気にしなくてもいいのよ。だから安心してどこへでも行って下さい」
ビクターとブリジットはとんでもないことを満面の笑みで告げる。
「それは私の台詞ですわ。リシャール侯爵家は私の家。あなたは、私のお母様の温情で我が家に居候しているだけの存在。私と結婚しないならば、あなたはこの家で暮らす必要はない。あなたの方こそ即刻我が家から出て行って頂きますわ!」
「僕はこの家の息子だ! だってあれだけおじさんとおばさんは僕によくしてくれてるんだもの」
「あなたはリシャール侯爵家の息子ではありませんわ。あなたの籍は今現在リシャール侯爵家には入っていません」
「嘘だ! じゃあおじさんとおばさんを連れてきて確認しろ! ソフィの言葉なんて信じない!」
ソフィアはため息をついて、自分の専属使用人であるマリアに声をかける。
「マリア。お父様とお母様をここに呼んで来て下さる?」
「畏まりました」
180
お気に入りに追加
3,770
あなたにおすすめの小説
【完結】高嶺の花がいなくなった日。
紺
恋愛
侯爵令嬢ルノア=ダリッジは誰もが認める高嶺の花。
清く、正しく、美しくーーそんな彼女がある日忽然と姿を消した。
婚約者である王太子、友人の子爵令嬢、教師や使用人たちは彼女の失踪を機に大きく人生が変わることとなった。
※ざまぁ展開多め、後半に恋愛要素あり。
飽きて捨てられた私でも未来の侯爵様には愛されているらしい。
希猫 ゆうみ
恋愛
王立学園の卒業を控えた伯爵令嬢エレノアには婚約者がいる。
同学年で幼馴染の伯爵令息ジュリアンだ。
二人はベストカップル賞を受賞するほど完璧で、卒業後すぐ結婚する予定だった。
しかしジュリアンは新入生の男爵令嬢ティナに心を奪われてエレノアを捨てた。
「もう飽きたよ。お前との婚約は破棄する」
失意の底に沈むエレノアの視界には、校内で仲睦まじく過ごすジュリアンとティナの姿が。
「ねえ、ジュリアン。あの人またこっち見てるわ」
ティナはエレノアを敵視し、陰で嘲笑うようになっていた。
そんな時、エレノアを癒してくれたのはミステリアスなマクダウェル侯爵令息ルークだった。
エレノアの深く傷つき鎖された心は次第にルークに傾いていく。
しかしティナはそれさえ気に食わないようで……
やがてティナの本性に気づいたジュリアンはエレノアに復縁を申し込んでくる。
「君はエレノアに相応しくないだろう」
「黙れ、ルーク。エレノアは俺の女だ」
エレノアは決断する……!
【完結】幼い頃から婚約を誓っていた伯爵に婚約破棄されましたが、数年後に驚くべき事実が発覚したので会いに行こうと思います
菊池 快晴
恋愛
令嬢メアリーは、幼い頃から将来を誓い合ったゼイン伯爵に婚約破棄される。
その隣には見知らぬ女性が立っていた。
二人は傍から見ても仲睦まじいカップルだった。
両家の挨拶を終えて、幸せな結婚前パーティで、その出来事は起こった。
メアリーは彼との出会いを思い返しながら打ちひしがれる。
数年後、心の傷がようやく癒えた頃、メアリーの前に、謎の女性が現れる。
彼女の口から発せられた言葉は、ゼインのとんでもない事実だった――。
※ハッピーエンド&純愛
他サイトでも掲載しております。
【完結】婿入り予定の婚約者は恋人と結婚したいらしい 〜そのひと爵位継げなくなるけどそんなに欲しいなら譲ります〜
早奈恵
恋愛
【完結】ざまぁ展開あります⚫︎幼なじみで婚約者のデニスが恋人を作り、破談となってしまう。困ったステファニーは急遽婿探しをする事になる。⚫︎新しい相手と婚約発表直前『やっぱりステファニーと結婚する』とデニスが言い出した。⚫︎辺境伯になるにはステファニーと結婚が必要と気が付いたデニスと辺境伯夫人になりたかった恋人ブリトニーを前に、ステファニーは新しい婚約者ブラッドリーと共に対抗する。⚫︎デニスの恋人ブリトニーが不公平だと言い、デニスにもチャンスをくれと縋り出す。⚫︎そしてデニスとブラッドが言い合いになり、決闘することに……。
身勝手な我儘を尽くす妹が、今度は辺境伯である私の夫を奪おうとした結果――。
銀灰
恋愛
誰も止められない傲慢な我儘を尽くす妹のマゼンタが次に欲したものは、姉ヘリオトの夫、辺境伯であるロイだった。
ヘリオトはロイに纏わり付くマゼンタに何も出来ぬまま、鬱々とした日々を送る。
これまでのように、心優しい夫の心さえも妹に奪われるのではないかと、ヘリオトは心を擦り減らし続けたが……騒動の結末は、予想もしていなかったハッピーエンドへと向かうことになる――!
その結末とは――?
勝手に勘違いして、婚約破棄したあなたが悪い
猿喰 森繁
恋愛
「アリシア。婚約破棄をしてほしい」
「婚約破棄…ですか」
「君と僕とでは、やはり身分が違いすぎるんだ」
「やっぱり上流階級の人間は、上流階級同士でくっつくべきだと思うの。あなたもそう思わない?」
「はぁ…」
なんと返したら良いのか。
私の家は、一代貴族と言われている。いわゆる平民からの成り上がりである。
そんなわけで、没落貴族の息子と政略結婚ならぬ政略婚約をしていたが、その相手から婚約破棄をされてしまった。
理由は、私の家が事業に失敗して、莫大な借金を抱えてしまったからというものだった。
もちろん、そんなのは誰かが飛ばした噂でしかない。
それを律儀に信じてしまったというわけだ。
金の切れ目が縁の切れ目って、本当なのね。
穏便に婚約解消する予定がざまぁすることになりました
よーこ
恋愛
ずっと好きだった婚約者が、他の人に恋していることに気付いたから、悲しくて辛いけれども婚約解消をすることを決意し、その提案を婚約者に伝えた。
そうしたら、婚約解消するつもりはないって言うんです。
わたくしとは政略結婚をして、恋する人は愛人にして囲うとか、悪びれることなく言うんです。
ちょっと酷くありません?
当然、ざまぁすることになりますわね!
どうでもいいですけどね
志位斗 茂家波
恋愛
「ミラージュ令嬢!!貴女との婚約を破棄する!!」
‥‥と、かつての婚約者に婚約破棄されてから数年が経ちました。
まぁ、あの方がどうなったのかは別にどうでもいいですけれどね。過去は過去ですから、変えようがないです。
思いついたよくある婚約破棄テンプレ(?)もの。気になる方は是非どうぞ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる