19 / 41
第19話
しおりを挟む
例によっていつものカフェの個室に呼び出されたエレオノーラはダミアンから彼の掴んだ情報を聞く。
「まぁ! 本当にそんなことを言っていたの?」
「はい。因みにお伺いしますが、本当に屋敷では虐めているのですか?」
「いいえ。そんなことは勿論やっておりませんわ。……と言うより今、ダミアン様が仰られたことの内ほとんど全部お義母様かマリアンが私に対してやっていることですわ。自分が私にしていることを立場を入れ替えて被害者面してシモン王太子殿下に泣きつこうだなんて、どれだけ面の皮が厚いのかしら」
「真相はやっぱりそんなところだったのですね。シモン王太子殿下は凄く憤っていましたよ」
「それはさておき、その情報は使えるわね」
「そうですね。私がマリアン嬢にエレオノール嬢を陥れることが出来ればあなたがエレオノール嬢の代わりにシモン王太子殿下の婚約者になれると唆して行動に移させれば良いかもしれません」
「やらせるなら殺人未遂なんて良さそうですわ。マリアンに自作自演させて、私が犯人という状況を作り上げる。自作自演で殺人未遂を起こすなら、毒が一番対策を取りやすいですわね。毒を飲む勇気は必要ですが、解毒薬があれば安心です」
「殺人未遂? もう少し穏便なものにしませんか?」
殺人未遂という不穏な単語にダミアンが眉を上げて顔を顰める。
「いいえ。やるなら殺人未遂ですわ。中途半端な事件を起こして、中途半端な罪状が付くのは不可です。逆に死刑の方が都合が良いですわ。マリアンを殺害しようとした罪で死刑判決を受け、お父様の力を借りて脱走し、婚約者と共にそのままルズベリー帝国に行く。そしてその彼と結婚して、そのまま帝国で暮らしますわ。私がマリアンを屋敷で虐めていたことを証拠も無しに真に受けて憤っていたならば、放っておいても死刑判決になりそうですし」
「本当の婚約者とは? その話から察するに帝国の貴族ですか?」
「帝国の第二皇子ですわ。正式に婚約は結んでいます。向こうには時が来たらシモン王太子殿下とは婚約解消し、もしその約束を破った場合はペナルティーが課せられますわ」
エレオノーラは紅茶を一口飲む。
「実は私の実の母であるクリスティーンお母様はマリアンの母のお義母様に毒殺されているのです。毒も恐らくまだ隠し持っているでしょうね。毒は簡単に処分は出来ません。なので、ダミアン様がマリアンに私を陥れる話を持ち掛け、お義母様に相談に乗ってもらうように唆す。後はダミアン様が動向を探って、軌道修正が必要な時は軌道修正をお願いします。ここからが正念場なので、頑張りましょう」
「了解しました」
打ち合わせ通り、ダミアンはマリアンに話を持ち掛ける。
殺人未遂を起こす手順を教え、”上手くやれれば、あなたを虐めていた邪魔なエレオノール嬢は消せて、あなたがシモン王太子殿下の婚約者になれる”と甘言を吐く。
その甘美な響きにマリアンは抗えず陥落し、早速ルイズに相談する。
マリアンはルイズから毒と解毒薬を譲り受け、マリアン専属のメイドーーキャロルに茶葉に毒を染み込ませる作業をさせたり、毒の瓶をエレオノーラの机の引き出しに入れておいたり、当日の動きをキャロルと打ち合わせする等、事前準備を行う。
このキャロルはエレオノーラとも打ち合わせ済みなので、マリアンが言うことに頷き、言われた通りにやるよう指示されていた。
そして、当日を迎えた。
当日は手筈通りに何もかも上手くいき、エレオノーラは地下牢に連行された。
拷問を受けるところまでは想定の範囲内だったが、頭ではわかっていても鞭で打たれるのは痛かった。
最後にエレオノーラは学園の卒業パーティーで死刑を言い渡されることになった。
「お前の処遇は学園の卒業式パーティーで言い渡してやろう。お前の罪を皆に知らしめる絶好の機会だ」
こうしてエレオノーラは手首を鎖で繋がれ罪人のような姿で近衛に連れられ、学園の卒業式でシモンに死刑を突き付けられる。
死刑判決が告げられた時、ざわめきが起き、その囁きはエレオノーラの耳にも入って来ていた。
普段から人付き合いを頑張っていた甲斐があって、エレオノーラがマリアンを害したと信じる者はいなかった。
判決を受けたエレオノーラは、判決に対し返事をすると、最後の挨拶をしようと扉付近で振り返る。
「皆様、今までお世話になりました。皆様と楽しく学園生活を送れたことは私の人生の宝物ですわ。皆様、またお会いする日まで。ご機嫌よう」
そして再び会えることを暗示する挨拶を残して退場する。
「まぁ! 本当にそんなことを言っていたの?」
「はい。因みにお伺いしますが、本当に屋敷では虐めているのですか?」
「いいえ。そんなことは勿論やっておりませんわ。……と言うより今、ダミアン様が仰られたことの内ほとんど全部お義母様かマリアンが私に対してやっていることですわ。自分が私にしていることを立場を入れ替えて被害者面してシモン王太子殿下に泣きつこうだなんて、どれだけ面の皮が厚いのかしら」
「真相はやっぱりそんなところだったのですね。シモン王太子殿下は凄く憤っていましたよ」
「それはさておき、その情報は使えるわね」
「そうですね。私がマリアン嬢にエレオノール嬢を陥れることが出来ればあなたがエレオノール嬢の代わりにシモン王太子殿下の婚約者になれると唆して行動に移させれば良いかもしれません」
「やらせるなら殺人未遂なんて良さそうですわ。マリアンに自作自演させて、私が犯人という状況を作り上げる。自作自演で殺人未遂を起こすなら、毒が一番対策を取りやすいですわね。毒を飲む勇気は必要ですが、解毒薬があれば安心です」
「殺人未遂? もう少し穏便なものにしませんか?」
殺人未遂という不穏な単語にダミアンが眉を上げて顔を顰める。
「いいえ。やるなら殺人未遂ですわ。中途半端な事件を起こして、中途半端な罪状が付くのは不可です。逆に死刑の方が都合が良いですわ。マリアンを殺害しようとした罪で死刑判決を受け、お父様の力を借りて脱走し、婚約者と共にそのままルズベリー帝国に行く。そしてその彼と結婚して、そのまま帝国で暮らしますわ。私がマリアンを屋敷で虐めていたことを証拠も無しに真に受けて憤っていたならば、放っておいても死刑判決になりそうですし」
「本当の婚約者とは? その話から察するに帝国の貴族ですか?」
「帝国の第二皇子ですわ。正式に婚約は結んでいます。向こうには時が来たらシモン王太子殿下とは婚約解消し、もしその約束を破った場合はペナルティーが課せられますわ」
エレオノーラは紅茶を一口飲む。
「実は私の実の母であるクリスティーンお母様はマリアンの母のお義母様に毒殺されているのです。毒も恐らくまだ隠し持っているでしょうね。毒は簡単に処分は出来ません。なので、ダミアン様がマリアンに私を陥れる話を持ち掛け、お義母様に相談に乗ってもらうように唆す。後はダミアン様が動向を探って、軌道修正が必要な時は軌道修正をお願いします。ここからが正念場なので、頑張りましょう」
「了解しました」
打ち合わせ通り、ダミアンはマリアンに話を持ち掛ける。
殺人未遂を起こす手順を教え、”上手くやれれば、あなたを虐めていた邪魔なエレオノール嬢は消せて、あなたがシモン王太子殿下の婚約者になれる”と甘言を吐く。
その甘美な響きにマリアンは抗えず陥落し、早速ルイズに相談する。
マリアンはルイズから毒と解毒薬を譲り受け、マリアン専属のメイドーーキャロルに茶葉に毒を染み込ませる作業をさせたり、毒の瓶をエレオノーラの机の引き出しに入れておいたり、当日の動きをキャロルと打ち合わせする等、事前準備を行う。
このキャロルはエレオノーラとも打ち合わせ済みなので、マリアンが言うことに頷き、言われた通りにやるよう指示されていた。
そして、当日を迎えた。
当日は手筈通りに何もかも上手くいき、エレオノーラは地下牢に連行された。
拷問を受けるところまでは想定の範囲内だったが、頭ではわかっていても鞭で打たれるのは痛かった。
最後にエレオノーラは学園の卒業パーティーで死刑を言い渡されることになった。
「お前の処遇は学園の卒業式パーティーで言い渡してやろう。お前の罪を皆に知らしめる絶好の機会だ」
こうしてエレオノーラは手首を鎖で繋がれ罪人のような姿で近衛に連れられ、学園の卒業式でシモンに死刑を突き付けられる。
死刑判決が告げられた時、ざわめきが起き、その囁きはエレオノーラの耳にも入って来ていた。
普段から人付き合いを頑張っていた甲斐があって、エレオノーラがマリアンを害したと信じる者はいなかった。
判決を受けたエレオノーラは、判決に対し返事をすると、最後の挨拶をしようと扉付近で振り返る。
「皆様、今までお世話になりました。皆様と楽しく学園生活を送れたことは私の人生の宝物ですわ。皆様、またお会いする日まで。ご機嫌よう」
そして再び会えることを暗示する挨拶を残して退場する。
86
お気に入りに追加
6,537
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢が残した破滅の種
八代奏多
恋愛
妹を虐げていると噂されていた公爵令嬢のクラウディア。
そんな彼女が婚約破棄され国外追放になった。
その事実に彼女を疎ましく思っていた周囲の人々は喜んだ。
しかし、その日を境に色々なことが上手く回らなくなる。
断罪した者は次々にこう口にした。
「どうか戻ってきてください」
しかし、クラウディアは既に隣国に心地よい居場所を得ていて、戻る気は全く無かった。
何も知らずに私欲のまま断罪した者達が、破滅へと向かうお話し。
※小説家になろう様でも連載中です。
9/27 HOTランキング1位、日間小説ランキング3位に掲載されました。ありがとうございます。
公爵令嬢を虐げた自称ヒロインの末路
八代奏多
恋愛
公爵令嬢のレシアはヒロインを自称する伯爵令嬢のセラフィから毎日のように嫌がらせを受けていた。
王子殿下の婚約者はレシアではなく私が相応しいとセラフィは言うが……
……そんなこと、絶対にさせませんわよ?
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【短編】捨てられた公爵令嬢ですが今さら謝られても「もう遅い」
みねバイヤーン
恋愛
「すまなかった、ヤシュナ。この通りだ、どうか王都に戻って助けてくれないか」
ザイード第一王子が、婚約破棄して捨てた公爵家令嬢ヤシュナに深々と頭を垂れた。
「お断りします。あなた方が私に対して行った数々の仕打ち、決して許すことはありません。今さら謝ったところで、もう遅い。ばーーーーーか」
王家と四大公爵の子女は、王国を守る御神体を毎日清める義務がある。ところが聖女ベルが現れたときから、朝の清めはヤシュナと弟のカルルクのみが行なっている。務めを果たさず、自分を使い潰す気の王家にヤシュナは切れた。王家に対するざまぁの準備は着々と進んでいる。
私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。
火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。
王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。
そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。
エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。
それがこの国の終わりの始まりだった。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる