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第8話
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エレオノールが退場した後もシモンとマリアン、側近一同は依然としてステージの上に立っている。
「私の婚約者であったエレオノールは死刑に処すので、私の婚約者の座は空席となった。そこで、私はこのマリアンを新たな婚約者として迎えることにする。マリアンは私の恋人で真実の愛で結ばれた相手だ。結婚式はエレオノールと挙式する予定だった日付通り、一ヶ月後に行う。盛大な結婚式を予定しているので、是非、皆、真実の愛の証人として出席して欲しい。私からは以上だ」
「悪を倒して真実の愛で結ばれた私達の結婚式。皆さん、是非来てくださいね!」
シモンはエレオノールに処断を言い渡した時の情の感じられない冷酷な表情から一転して、マリアンのことは穏やかな笑顔で宣言し、マリアンはにこやかに笑って告げる。
サイモンとマリアンは意気揚々と発表したが、この発表を聞かされた卒業パーティーの参加者は怪訝な顔をする。
あの評判の良いエレオノールがマリアンを毒殺しようとしたこと自体が信じられない上、エレオノールの婚約者であったシモンは己の婚約者だったエレオノールを躊躇いもなく死刑にした。
しかも婚約者の後釜に据えたのはエレオノールの義妹。
マリアンが所属するのは成績最下層のクラスで、卒業までずっと首席だったエレオノールとは雲泥の差だ。
”真実の愛で結ばれた”なんて綺麗に聞こえるように言っているが、つまるところシモンはエレオノールがいながら彼女の義妹マリアンを恋人にした浮気者、マリアンは義姉の婚約者に言い寄って略奪した性悪女である。
そんな二人がエレオノールを悪と決めつけて、エレオノールを陥れたのではないか?
あんな笑顔全開で自分達の結婚について発表するなんて、二人の障害になるエレオノールが死刑になって喜んでいるようにしか見えない。
死刑とは言え、エレオノールの喪も明けぬ内に結婚式という慶事を行おうとするなんて正気の沙汰ではない。
パーティーの参加者はシモンに対して不信や疑念を募らせ、シモンがマリアンと結ばれたことに心から祝福する者は一人もいなかった。
エレオノールは卒業式の一週間後に処刑が執行された。
彼女の処刑方法は毒杯で、父親のサミュエルが直々に処刑現場である王宮の地下牢の独房へ赴き、彼女はサミュエルの前で毒杯を煽った。
翌日サミュエルによって彼女の遺体が納められた棺桶は王宮の地下牢から運び出されてブロワ公爵家の者が代々眠る墓地へと丁重に埋葬される。
埋葬された日は王太子殿下の婚約者だった彼女を弔う鐘の音が王宮に鳴り響き、処刑が執行されたことが伝わった。
学園の卒業パーティーから時は過ぎ、シモンとマリアンの結婚式が行われた。
この日の空模様は辛うじて雨は降っていないがどんよりとした曇り空。
二人は王族が代々結婚式で使用している歴史のある大聖堂で国中の貴族達を招き盛大な結婚式を挙げようとしていたが、結果的に大聖堂では行われず、こじんまりとした教会で結婚式を挙げることになった。
何故ならば、参列者がほぼいないからだ。
国内のほぼ全ての貴族の家に招待状を送ったが、参加・欠席の返信として届くのは欠席ばかり。
卒業パーティーでの断罪・マリアンとの婚約発表により、シモンの周りからは波が引いたかのように人が離れていった。
パーティーの参加者からその参加者の兄弟や親へ。
その兄弟から兄弟の夫や妻、義理家族へ。
夫人から他家の夫人へ。
燃え盛る炎のように誰にも止められない勢いで広まっていき、最早貴族社会でこのことを知らない者がいない状態にまでなった。
この頃にはエレオノールを慕っていた者達の中では独自に事件を調査しようとしている者まで現れ始めていた。
エレオノールの処刑という結論に至るまでの過程に国王陛下夫妻が絡んでいないことは分かっている。
国王陛下夫妻が外国から帰国したのは全てが終了した後だった。
宰相のサミュエルはシモンのやることに”自分は口を挟まないから殿下が思うように進めてよいとは言ったが、積極的にエレオノールを処刑するよう私から殿下に働きかけてはいない”と主張する。
なので、処刑はほぼシモンの独断により行われたと思われている。
参列者がほぼいないのにわざわざ多額の出費をして大聖堂で盛大な結婚式を挙げられようはずもない。
王太子殿下の結婚式とは思えぬほど侘しい式になった。
参列者は国王陛下夫妻とマリアンの母・ルイズ、側近一同だけだ。
参加はしているが、この結婚を心から喜び祝福しているのはルイズだけである。
国王陛下夫妻はこの時点で既にシモンを王太子の資格なしとして見限っている。
だから本来王太子と結ばれるはずもない身分のマリアンとの結婚を許可したのだ。
サミュエルはエレオノールの喪が明けていないということで参加を辞退している。
誓いのキスの為に、シモンはベールをそっとめくる。
マリアンが着ている白いウエディングドレスは本来ならばエレオノールが着るはずだったドレスをマリアンのサイズにリメイクしているものだ。
「マリアン、盛大な結婚式を挙げると言ったのに、こんなに小さな式になってごめん。でも君のことは必ず幸せにするから」
「シモン様のせいではないですよ。だから気を落とさないで下さい。私はお祝いしてくれる人にだけお祝いしてもらったから満足です」
シモンとマリアンは誓いのキスを交わし、ここに二人の結婚が成立する。
これからエレオノールの処刑という毒が回り始めることに幸せの世界にいる二人は全く気づかなかった――。
「私の婚約者であったエレオノールは死刑に処すので、私の婚約者の座は空席となった。そこで、私はこのマリアンを新たな婚約者として迎えることにする。マリアンは私の恋人で真実の愛で結ばれた相手だ。結婚式はエレオノールと挙式する予定だった日付通り、一ヶ月後に行う。盛大な結婚式を予定しているので、是非、皆、真実の愛の証人として出席して欲しい。私からは以上だ」
「悪を倒して真実の愛で結ばれた私達の結婚式。皆さん、是非来てくださいね!」
シモンはエレオノールに処断を言い渡した時の情の感じられない冷酷な表情から一転して、マリアンのことは穏やかな笑顔で宣言し、マリアンはにこやかに笑って告げる。
サイモンとマリアンは意気揚々と発表したが、この発表を聞かされた卒業パーティーの参加者は怪訝な顔をする。
あの評判の良いエレオノールがマリアンを毒殺しようとしたこと自体が信じられない上、エレオノールの婚約者であったシモンは己の婚約者だったエレオノールを躊躇いもなく死刑にした。
しかも婚約者の後釜に据えたのはエレオノールの義妹。
マリアンが所属するのは成績最下層のクラスで、卒業までずっと首席だったエレオノールとは雲泥の差だ。
”真実の愛で結ばれた”なんて綺麗に聞こえるように言っているが、つまるところシモンはエレオノールがいながら彼女の義妹マリアンを恋人にした浮気者、マリアンは義姉の婚約者に言い寄って略奪した性悪女である。
そんな二人がエレオノールを悪と決めつけて、エレオノールを陥れたのではないか?
あんな笑顔全開で自分達の結婚について発表するなんて、二人の障害になるエレオノールが死刑になって喜んでいるようにしか見えない。
死刑とは言え、エレオノールの喪も明けぬ内に結婚式という慶事を行おうとするなんて正気の沙汰ではない。
パーティーの参加者はシモンに対して不信や疑念を募らせ、シモンがマリアンと結ばれたことに心から祝福する者は一人もいなかった。
エレオノールは卒業式の一週間後に処刑が執行された。
彼女の処刑方法は毒杯で、父親のサミュエルが直々に処刑現場である王宮の地下牢の独房へ赴き、彼女はサミュエルの前で毒杯を煽った。
翌日サミュエルによって彼女の遺体が納められた棺桶は王宮の地下牢から運び出されてブロワ公爵家の者が代々眠る墓地へと丁重に埋葬される。
埋葬された日は王太子殿下の婚約者だった彼女を弔う鐘の音が王宮に鳴り響き、処刑が執行されたことが伝わった。
学園の卒業パーティーから時は過ぎ、シモンとマリアンの結婚式が行われた。
この日の空模様は辛うじて雨は降っていないがどんよりとした曇り空。
二人は王族が代々結婚式で使用している歴史のある大聖堂で国中の貴族達を招き盛大な結婚式を挙げようとしていたが、結果的に大聖堂では行われず、こじんまりとした教会で結婚式を挙げることになった。
何故ならば、参列者がほぼいないからだ。
国内のほぼ全ての貴族の家に招待状を送ったが、参加・欠席の返信として届くのは欠席ばかり。
卒業パーティーでの断罪・マリアンとの婚約発表により、シモンの周りからは波が引いたかのように人が離れていった。
パーティーの参加者からその参加者の兄弟や親へ。
その兄弟から兄弟の夫や妻、義理家族へ。
夫人から他家の夫人へ。
燃え盛る炎のように誰にも止められない勢いで広まっていき、最早貴族社会でこのことを知らない者がいない状態にまでなった。
この頃にはエレオノールを慕っていた者達の中では独自に事件を調査しようとしている者まで現れ始めていた。
エレオノールの処刑という結論に至るまでの過程に国王陛下夫妻が絡んでいないことは分かっている。
国王陛下夫妻が外国から帰国したのは全てが終了した後だった。
宰相のサミュエルはシモンのやることに”自分は口を挟まないから殿下が思うように進めてよいとは言ったが、積極的にエレオノールを処刑するよう私から殿下に働きかけてはいない”と主張する。
なので、処刑はほぼシモンの独断により行われたと思われている。
参列者がほぼいないのにわざわざ多額の出費をして大聖堂で盛大な結婚式を挙げられようはずもない。
王太子殿下の結婚式とは思えぬほど侘しい式になった。
参列者は国王陛下夫妻とマリアンの母・ルイズ、側近一同だけだ。
参加はしているが、この結婚を心から喜び祝福しているのはルイズだけである。
国王陛下夫妻はこの時点で既にシモンを王太子の資格なしとして見限っている。
だから本来王太子と結ばれるはずもない身分のマリアンとの結婚を許可したのだ。
サミュエルはエレオノールの喪が明けていないということで参加を辞退している。
誓いのキスの為に、シモンはベールをそっとめくる。
マリアンが着ている白いウエディングドレスは本来ならばエレオノールが着るはずだったドレスをマリアンのサイズにリメイクしているものだ。
「マリアン、盛大な結婚式を挙げると言ったのに、こんなに小さな式になってごめん。でも君のことは必ず幸せにするから」
「シモン様のせいではないですよ。だから気を落とさないで下さい。私はお祝いしてくれる人にだけお祝いしてもらったから満足です」
シモンとマリアンは誓いのキスを交わし、ここに二人の結婚が成立する。
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