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第7話
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拷問によりエレオノールが罪を認めてしまった為、事件の犯人はエレオノールになった。
毒の入手経路は騎士団が引き続きあちこち調査をしているが、依然としてわからないままだ。
あの場では毒についての調査をしていたが、よく考えてみたら毒入りの紅茶がエレオノールの苦手なハーブティーであったことも引っ掛かると指摘した者がいた。
ハーブティーは白の悪魔の香りを誤魔化すのにも都合は良いが、マリアン付きのメイドを脅して実行させたのならば、自分が苦手な紅茶に毒を仕込み、毒入り紅茶はそのままマリアンに飲ませ、自分はこの紅茶は苦手と言って毒入り紅茶を回避することが出来る。
事件が起きた経緯を確認すると、マリアンはサミュエルの後妻で自分の母ルイズにお願いして紅茶を用意したと言っていたという証言がある。
その際、事前にメイドがルイズにハーブティーを選ぶよう口利きして上手く誘導すれば、用意されるのはハーブティーになるだろう。
犯人とされるエレオノールは白の悪魔の特徴を知っており、なおかつ自分が苦手なハーブティーを毒入り紅茶にすれば、これ以上なく都合が良い。
謎は残るが、エレオノールの机から見つかった毒の小瓶、メイドの証言、動機などを考えるとエレオノールが犯人であることが最も自然で、エレオノールが罪を認めたので、これ以上の調査は打ち切りとなった。
シモンはエレオノールに極刑を処すつもりだ。
政略的な都合で婚約していた婚約者であっても手心を加えるつもりは毛頭ない。
愛しいマリアンを毒殺しようとしたエレオノールに容赦はしない。
シモンは側近一同と回復したマリアンを王宮内のシモンの執務室に呼び出す。
「エレオノールは極刑に処すことにした。だが、その前に明後日に学園の卒業パーティーがあるだろう? そこでエレオノールの罪を詳らかにして断罪し、その後に処刑する」
「これでやっとお義姉様から解放されるのね……」
「殿下。エレオノール嬢を断罪した後は、やはりマリアンとの婚約も同時に発表ですか?」
側近のダミアンが尋ねる。
「そうするつもりだ。悪を断罪し、真実の愛で結ばれた私達を皆祝福してくれるだろうからな」
「シモン様……!」
そして、迎えた学園の卒業パーティーの日。
この日はバケツをひっくり返したかのような大雨だった。
空は黒い雲に覆われており、大雨だけでなく今にも雷まで落ちてきそうな悪天候の日だ。
まるで今から悪いことが起きることを暗示しているかのようである。
卒業パーティーは学園の制服ではなく、ドレスや礼装といった社交界で着用するような正装で参加することになっている為、会場は色とりどりだ。
参加者はそれぞれ自分の友人と集まり、学園生活を振り返った思い出話をしたり、卒業後も変わらぬ付き合いを約束し合ったりと和やかに過ごしているが、シモン王太子殿下の婚約者であるエレオノールがいないことが気になっていた。
そんな中、シモン王太子殿下はマリアンをエスコートし、側近一同を引き連れて、パーティー会場のステージに登壇する。
「皆、卒業おめでとう。今日のこのめでたい日にこんなことを言わねばならぬのが残念だが、聞いて欲しい。近衛よ、連れてこい」
これから何が起きるのかパーティーの参加者は不安になる。
婚約者をエスコートせず、その義妹をエスコートする王太子殿下。
これが意味するところはエレオノールに何かあったのだろうかということだ。
近衛が連れてきたのは手首を鎖で繋がれたエレオノールだった。
いつもより窶れており、いつも艶めいていた金髪も今日は心なしかその輝きが失われている。
そしてその身に纏うのは普段の彼女は絶対に着ないような質素なドレスだった。
「さて、私の婚約者のエレオノールだが、彼女は自分の義妹であるマリアンをずっと公爵邸で虐めており、つい先日彼女を毒殺しようとした。結果的に未遂だが、結果論に過ぎずその罪は重い。殺人未遂の罪によって、エレオノール。お前には死刑を言い渡す」
シモンが告げた内容にざわめきが起こる。
エレオノールをよく知る者達は一様に彼女がそんなことをするはずがない、何かの間違いだと囁き合っている。
彼らは学園でのエレオノールしか知らないが、仮に本当に彼女がマリアンを嫌っているならば、彼女がシモンとマリアンに注意していた場面も常識的な範囲での対応ではなく、自分が悪にならないよう周囲をうまく利用して追い詰めることだって可能だ。
しかし、シモン王太子殿下が言い渡しているところに一貴族の者として証拠もない状態で反論は許されない。
「……、はい、シモン王太子殿下」
処刑を言い渡したシモンに間を開けて返事をしたエレオノール。
聴衆にはこの間が全てを物語っているように感じた。
「近衛よ、連れて行け」
近衛兵に連れられ、会場の出入り口の扉まで来た時、エレオノールは会場の方へ体を向ける。
「皆様、今までお世話になりました。皆様と楽しく学園生活を送れたことは私の人生の宝物ですわ。皆様、またお会いする日まで。ご機嫌よう」
そう告げたエレオノールは優雅で気品のあるカーテシーをする。
そのカーテシーはシモン王太子殿下の婚約者であったブロワ公爵家の令嬢として恥じない最期だった。
――こうしてエレオノールはオルレーヌ王国の社交界の表舞台から退場する。
毒の入手経路は騎士団が引き続きあちこち調査をしているが、依然としてわからないままだ。
あの場では毒についての調査をしていたが、よく考えてみたら毒入りの紅茶がエレオノールの苦手なハーブティーであったことも引っ掛かると指摘した者がいた。
ハーブティーは白の悪魔の香りを誤魔化すのにも都合は良いが、マリアン付きのメイドを脅して実行させたのならば、自分が苦手な紅茶に毒を仕込み、毒入り紅茶はそのままマリアンに飲ませ、自分はこの紅茶は苦手と言って毒入り紅茶を回避することが出来る。
事件が起きた経緯を確認すると、マリアンはサミュエルの後妻で自分の母ルイズにお願いして紅茶を用意したと言っていたという証言がある。
その際、事前にメイドがルイズにハーブティーを選ぶよう口利きして上手く誘導すれば、用意されるのはハーブティーになるだろう。
犯人とされるエレオノールは白の悪魔の特徴を知っており、なおかつ自分が苦手なハーブティーを毒入り紅茶にすれば、これ以上なく都合が良い。
謎は残るが、エレオノールの机から見つかった毒の小瓶、メイドの証言、動機などを考えるとエレオノールが犯人であることが最も自然で、エレオノールが罪を認めたので、これ以上の調査は打ち切りとなった。
シモンはエレオノールに極刑を処すつもりだ。
政略的な都合で婚約していた婚約者であっても手心を加えるつもりは毛頭ない。
愛しいマリアンを毒殺しようとしたエレオノールに容赦はしない。
シモンは側近一同と回復したマリアンを王宮内のシモンの執務室に呼び出す。
「エレオノールは極刑に処すことにした。だが、その前に明後日に学園の卒業パーティーがあるだろう? そこでエレオノールの罪を詳らかにして断罪し、その後に処刑する」
「これでやっとお義姉様から解放されるのね……」
「殿下。エレオノール嬢を断罪した後は、やはりマリアンとの婚約も同時に発表ですか?」
側近のダミアンが尋ねる。
「そうするつもりだ。悪を断罪し、真実の愛で結ばれた私達を皆祝福してくれるだろうからな」
「シモン様……!」
そして、迎えた学園の卒業パーティーの日。
この日はバケツをひっくり返したかのような大雨だった。
空は黒い雲に覆われており、大雨だけでなく今にも雷まで落ちてきそうな悪天候の日だ。
まるで今から悪いことが起きることを暗示しているかのようである。
卒業パーティーは学園の制服ではなく、ドレスや礼装といった社交界で着用するような正装で参加することになっている為、会場は色とりどりだ。
参加者はそれぞれ自分の友人と集まり、学園生活を振り返った思い出話をしたり、卒業後も変わらぬ付き合いを約束し合ったりと和やかに過ごしているが、シモン王太子殿下の婚約者であるエレオノールがいないことが気になっていた。
そんな中、シモン王太子殿下はマリアンをエスコートし、側近一同を引き連れて、パーティー会場のステージに登壇する。
「皆、卒業おめでとう。今日のこのめでたい日にこんなことを言わねばならぬのが残念だが、聞いて欲しい。近衛よ、連れてこい」
これから何が起きるのかパーティーの参加者は不安になる。
婚約者をエスコートせず、その義妹をエスコートする王太子殿下。
これが意味するところはエレオノールに何かあったのだろうかということだ。
近衛が連れてきたのは手首を鎖で繋がれたエレオノールだった。
いつもより窶れており、いつも艶めいていた金髪も今日は心なしかその輝きが失われている。
そしてその身に纏うのは普段の彼女は絶対に着ないような質素なドレスだった。
「さて、私の婚約者のエレオノールだが、彼女は自分の義妹であるマリアンをずっと公爵邸で虐めており、つい先日彼女を毒殺しようとした。結果的に未遂だが、結果論に過ぎずその罪は重い。殺人未遂の罪によって、エレオノール。お前には死刑を言い渡す」
シモンが告げた内容にざわめきが起こる。
エレオノールをよく知る者達は一様に彼女がそんなことをするはずがない、何かの間違いだと囁き合っている。
彼らは学園でのエレオノールしか知らないが、仮に本当に彼女がマリアンを嫌っているならば、彼女がシモンとマリアンに注意していた場面も常識的な範囲での対応ではなく、自分が悪にならないよう周囲をうまく利用して追い詰めることだって可能だ。
しかし、シモン王太子殿下が言い渡しているところに一貴族の者として証拠もない状態で反論は許されない。
「……、はい、シモン王太子殿下」
処刑を言い渡したシモンに間を開けて返事をしたエレオノール。
聴衆にはこの間が全てを物語っているように感じた。
「近衛よ、連れて行け」
近衛兵に連れられ、会場の出入り口の扉まで来た時、エレオノールは会場の方へ体を向ける。
「皆様、今までお世話になりました。皆様と楽しく学園生活を送れたことは私の人生の宝物ですわ。皆様、またお会いする日まで。ご機嫌よう」
そう告げたエレオノールは優雅で気品のあるカーテシーをする。
そのカーテシーはシモン王太子殿下の婚約者であったブロワ公爵家の令嬢として恥じない最期だった。
――こうしてエレオノールはオルレーヌ王国の社交界の表舞台から退場する。
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