【完結】私ではなく義妹を選んだ婚約者様

水月 潮

文字の大きさ
上 下
7 / 9

第7話

しおりを挟む
「それはだな…10月24日だろう?」

 セリーヌの問いに答えるべく、必死に思い出そうとするも全く思い出せない。

「違いますわ。6月2日です。正解するなんて微塵も思っていなかったから別に間違えてもいいのです。それくらいお父様が私に関心がないと発覚しただけですわ。正解出来なかったお父様、今日は何月何日ですか?」

 父は娘の誕生日すらわからず、正解出来なかったので少々気まずげな表情だ。

「今日は6月25日だ。それが一体何だと言うんだ?」

「先日の6月2日に私は誕生日を迎え、18歳になりました。そう、成人しましたの。成人してすぐヴォクレール伯爵になる為の手続きを完了させました。カトリーヌお母様の遺言書を預かった弁護士さんにお手伝いして頂きましたが、無事私は伯爵となり、伯爵家の権利一切は私に帰属することになりました。つまり、もういつでもお父様達を伯爵家から追い出しても良いのです」

(結婚式の準備の為に我が家はゴタゴタしていて、誰も私の動向なんて気にしていなかったから、楽に事を運べましたわ。自分の誕生日がたまたま結婚式の準備期間に被って運が良かった。この点だけはあの二人に感謝です)


「今日はめでたくもミリィとイアン様の結婚式。ミリィの門出を祝って、ミリィ・お父様・お義母様にはこの後早速伯爵家から出て行ってもらいますわ」

 セリーヌの言葉に三人は顔を真っ青にして土下座して謝罪する。


「セ、セリーヌ、今まで悪かった! 謝るから伯爵家から出て行けなんて言わないでくれ!」

「私達が悪かったわ! これからはちゃんとするわ! だからこれからも伯爵家にいさせてちょうだい!」

「今までごめんなさい、お姉様! お姉様になんてことをしてしまったのか……今では反省しているわ。だからイアン様と私、それからお父様とお母様も一緒にこの伯爵家で生活させて!」

 三人の謝罪と懇願に、セリーヌは今日一番の笑顔で告げる。

「お断りさせて頂きます。三人とも渋々謝っているのが丸わかりですわ。頭を下げるのとこれからの生活を天秤にかけて頭を下げる方を選んだだけでしょう? 先程自分達がいい思いをする為に、ミリィに伯爵家を譲れと主張していたのに、私がもうすでに伯爵でいつでも追い出せると言った途端これですわ。誰がこんな謝罪を受け入れますの?」

 セリーヌが断りを告げた瞬間、三人は悪態をつく。


「くそっ、いきなり出て行けと言われても……住むところはどうしたらいいんだ? それに生活する金は?」

「ちっ、私達の生活費は当然あんたがくれるのよね?」

「追い出されるのだから、私とイアン様の新居を建てる用のお金と私達の生活費は貰うわ!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

君のためだと言われても、少しも嬉しくありません

みみぢあん
恋愛
子爵家の令嬢マリオンの婚約者、アルフレッド卿が王族の護衛で隣国へ行くが、任期がながびき帰国できなくなり婚約を解消することになった。 すぐにノエル卿と2度目の婚約が決まったが、結婚を目前にして家庭の事情で2人は……    暗い流れがつづきます。 ざまぁでスカッ… とされたい方には不向きのお話です。ご注意を😓

純白の牢獄

ゆる
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」 華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。 王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。 そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。 レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。 「お願いだ……戻ってきてくれ……」 王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。 「もう遅いわ」 愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。 裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。 これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。

【完結】裏切ったあなたを許さない

紫崎 藍華
恋愛
ジョナスはスザンナの婚約者だ。 そのジョナスがスザンナの妹のセレナとの婚約を望んでいると親から告げられた。 それは決定事項であるため婚約は解消され、それだけなく二人の邪魔になるからと領地から追放すると告げられた。 そこにセレナの意向が働いていることは間違いなく、スザンナはセレナに人生を翻弄されるのだった。

【完結】私の事は気にせずに、そのままイチャイチャお続け下さいませ ~私も婚約解消を目指して頑張りますから~

山葵
恋愛
ガルス侯爵家の令嬢である わたくしミモルザには、婚約者がいる。 この国の宰相である父を持つ、リブルート侯爵家嫡男レイライン様。 父同様、優秀…と期待されたが、顔は良いが頭はイマイチだった。 顔が良いから、女性にモテる。 わたくしはと言えば、頭は、まぁ優秀な方になるけれど、顔は中の上位!? 自分に釣り合わないと思っているレイラインは、ミモルザの見ているのを知っていて今日も美しい顔の令嬢とイチャイチャする。 *沢山の方に読んで頂き、ありがとうございます。m(_ _)m

婚約を破棄したいと言うのなら、私は愛することをやめます

天宮有
恋愛
 婚約者のザオードは「婚約を破棄したい」と言うと、私マリーがどんなことでもすると考えている。  家族も命令に従えとしか言わないから、私は愛することをやめて自由に生きることにした。

どうかそのまま真実の愛という幻想の中でいつまでもお幸せにお過ごし下さいね。

しげむろ ゆうき
恋愛
ある日、私は婚約者であるアルタール・ロクサーヌ殿下に婚約解消をされてしまう。 どうやら、殿下は真実の愛に目覚めたらしい……。 しかし、殿下のお相手は徐々に現実を理解し……。 全五話

【完結】愛することはないと告げられ、最悪の新婚生活が始まりました

紫崎 藍華
恋愛
結婚式で誓われた愛は嘘だった。 初夜を迎える前に夫は別の女性の事が好きだと打ち明けた。

婚約者の初恋を応援するために婚約解消を受け入れました

よーこ
恋愛
侯爵令嬢のアレクシアは婚約者の王太子から婚約の解消を頼まれてしまう。 理由は初恋の相手である男爵令嬢と添い遂げたいから。 それを聞いたアレクシアは、王太子の恋を応援することに。 さて、王太子の初恋は実るのかどうなのか。

処理中です...