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第6話
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「セリーヌ、お前どうしてこんな大事なことを黙っていたんだ!? これじゃあミリィと幸せになれないじゃないか!」
「そうですよ! いくら私が嫌いでもこんな意地悪するなんて……」
子爵夫妻とは対照的にイアンとミリィが激しく主張する。
「私はあの日、あなた達二人が退室する前に一応伝えようとは思っていましたわ。でも、伝える前に退室したのはあなた達です。婚約者がいながら義妹と浮気して子まで作ったイアン様と私に虐められた事実もないのに虐められたと嘘をつき、婚約者を略奪したミリィ。ここまで虚仮にされて、親切に教えてさし上げる義理もございません」
「そうだとしてもお前はミリィの姉だろう? ミリィの幸せの為に伯爵家を譲ってあげるくらいしてもいいんじゃないか? そう思うよな、ミリィ?」
「私に伯爵家を譲って頂戴、お姉様?」
「そうだ! お前は姉なのだからミリィに譲れ!」
「姉なら妹に譲るのは当たり前よ! 早く譲ると言いなさい!」
イアンの発言に、ミリィ、父、義母が勢いよく続く。
その様子を見てクレマン子爵夫妻とファビアンとその妻はドン引きしている。
イアンがこんな愚かな発言をすると思っていなかったのだろう。
イアンが言ってることは、自分達の幸せの為に”姉は妹の為に譲るのが当然”という屁理屈でセリーヌに自分の権利を放棄せよと言っているのと同義だ。
格下の子爵家の息子でしかないイアンが、伯爵家の正当な血をひくセリーヌに対して言っていいことではない。
この発言をした時点で子爵夫妻とファビアンはイアンに静かに見切りをつけた。
イアンが結婚相手を変更したことで平民になってしまったことの責任の一端は自分達にもあると思い、イアン達が何か困ったことがあったら助けるくらいの気持ちはあったが、そんな気持ちは綺麗に消え去った。
「お父様、お義母様、ミリィ。どうして私があなた達の言うところの”姉だから妹に譲るのが当たり前”なんていう言葉に従って伯爵家を譲らなければならないのかしら? ましてやミリィの幸せの為に。あなた達三人が私にしたことを考えたらこれっぽっちも譲りたいだなんて思えないわ」
セリーヌはひと呼吸おいて続ける。
「お父様は私が生まれた時から無関心。お義母様は私に母らしいことは一つもしてくれたことはなく、ミリィは何かにつけては私を陥れることばかりする。私はあなた達三人を自分の家族だなんて思えないわ。私にとっての家族は亡くなったカトリーヌお母様だけ」
セリーヌにはこの伯爵家での幸せな記憶はカトリーヌが生きていた頃だけで、後は良い思い出や幸せな出来事は何一つない。
「ところで、お父様。私の誕生日、何月何日か覚えていらっしゃいますか? お父様はミリィの誕生日パーティーは毎年お客様を招いて主催しておられましたけれど、私の誕生日パーティーはお母様が亡くなって以来一度として主催して下さったことがありませんものね。そんなお父様に私の誕生日がわかる訳ございませんわね」
セリーヌは微塵も期待していない表情で尋ねた。
「そうですよ! いくら私が嫌いでもこんな意地悪するなんて……」
子爵夫妻とは対照的にイアンとミリィが激しく主張する。
「私はあの日、あなた達二人が退室する前に一応伝えようとは思っていましたわ。でも、伝える前に退室したのはあなた達です。婚約者がいながら義妹と浮気して子まで作ったイアン様と私に虐められた事実もないのに虐められたと嘘をつき、婚約者を略奪したミリィ。ここまで虚仮にされて、親切に教えてさし上げる義理もございません」
「そうだとしてもお前はミリィの姉だろう? ミリィの幸せの為に伯爵家を譲ってあげるくらいしてもいいんじゃないか? そう思うよな、ミリィ?」
「私に伯爵家を譲って頂戴、お姉様?」
「そうだ! お前は姉なのだからミリィに譲れ!」
「姉なら妹に譲るのは当たり前よ! 早く譲ると言いなさい!」
イアンの発言に、ミリィ、父、義母が勢いよく続く。
その様子を見てクレマン子爵夫妻とファビアンとその妻はドン引きしている。
イアンがこんな愚かな発言をすると思っていなかったのだろう。
イアンが言ってることは、自分達の幸せの為に”姉は妹の為に譲るのが当然”という屁理屈でセリーヌに自分の権利を放棄せよと言っているのと同義だ。
格下の子爵家の息子でしかないイアンが、伯爵家の正当な血をひくセリーヌに対して言っていいことではない。
この発言をした時点で子爵夫妻とファビアンはイアンに静かに見切りをつけた。
イアンが結婚相手を変更したことで平民になってしまったことの責任の一端は自分達にもあると思い、イアン達が何か困ったことがあったら助けるくらいの気持ちはあったが、そんな気持ちは綺麗に消え去った。
「お父様、お義母様、ミリィ。どうして私があなた達の言うところの”姉だから妹に譲るのが当たり前”なんていう言葉に従って伯爵家を譲らなければならないのかしら? ましてやミリィの幸せの為に。あなた達三人が私にしたことを考えたらこれっぽっちも譲りたいだなんて思えないわ」
セリーヌはひと呼吸おいて続ける。
「お父様は私が生まれた時から無関心。お義母様は私に母らしいことは一つもしてくれたことはなく、ミリィは何かにつけては私を陥れることばかりする。私はあなた達三人を自分の家族だなんて思えないわ。私にとっての家族は亡くなったカトリーヌお母様だけ」
セリーヌにはこの伯爵家での幸せな記憶はカトリーヌが生きていた頃だけで、後は良い思い出や幸せな出来事は何一つない。
「ところで、お父様。私の誕生日、何月何日か覚えていらっしゃいますか? お父様はミリィの誕生日パーティーは毎年お客様を招いて主催しておられましたけれど、私の誕生日パーティーはお母様が亡くなって以来一度として主催して下さったことがありませんものね。そんなお父様に私の誕生日がわかる訳ございませんわね」
セリーヌは微塵も期待していない表情で尋ねた。
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