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第5話 シリル視点
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父上に強烈なビンタをもらって呆然とする俺に父上は容赦なく追撃をする。
「婚約者がいながら恋人を作って浮気。そしてその恋人を孕ませる。しかもお前の場合は家の家格はマイソン伯爵家よりエヴァンス侯爵家の方が上で、婿入りする立場だから明らかにあちらの方が力が上の立場だ。家格の件は抜きにしても、婚約者がいるのにそんな不義理をするなんて」
父上は一拍おいて続ける。
「お前はそこの令嬢と結婚して幸せになるなど夢見てるようだが、アイリーン嬢との婚約解消についての後始末やその後の影響を考えているか?」
「後始末?」
「ここに来る前、アイリーン嬢から私宛に早馬で手紙が届いた。手紙にはことの経緯や婚約解消はお前の有責での解消とすることが書かれていた。その上、お前達がエヴァンス侯爵家当主と侯爵夫人になり、お腹の中の子を跡取りにするからアイリーン嬢に侯爵家から出て行けという訳の分からないことまで言ったそうじゃないか。ちゃんと説明もあったのに、何をどうしたら元々侯爵家の人間ではないお前が当主になれるだなんて思えるのか不思議でならない。詳しい話は後日侯爵閣下と面会して話すが、エヴァンス侯爵家に対して慰謝料を払わなければならない。お前達二人の言い分は非常に不愉快だったようでその分の迷惑料も慰謝料に加算するそうだ。慰謝料はどうするつもりだ? お前が考えているよりずっと高額な慰謝料が請求されると思われるが」
「慰謝料? そう言えばそんなことアイリーンが言っていたな。それは父上が払ってくれるんでしょう?」
ちっ!
アイリーンめ、余計なことしやがって!
心の中で悪態をつく。
それにしても、アイリーンが言ってたこと、本当だったんだな。
てっきり口から出まかせかと思っていたが。
まぁ慰謝料はきっと父上がどうにかしてくれる。
自分の懐が痛まなければノーダメージだ。
「悪いが、私は全額払うつもりはない。親として監督不行き届きの責任は感じるが、もうお前は18歳だ。常識的にやってはいけないことをしない分別くらいは身についているだろうと思っていたが、これだ。4割~半分くらいはお前自身の金で払わないとお前がやったことの重大さが理解出来ないだろう」
「そんな……!」
当てが外れて俺はうろたえることしか出来ない。
「それにお前はこのマイソン伯爵家でそこの令嬢とお腹の子と私達と一緒に暮らすと考えているようだが、お前の居場所はこの家にはない。お前とは縁を切らせてもらう。マイソン伯爵家からお前を除籍する」
除籍!?
除籍されたら平民になってしまう!
まさかデビット兄上達も除籍に賛成なのか!?
「私も次期伯爵としてお前達二人をこの屋敷に住まわせることに反対ですし、除籍は賛成です」
期待もむなしくデビット兄上がきっぱり告げる。
「兄上、何故そんなことを……? 俺達は家族じゃないのか?」
「こんな非常識なことをしでかした弟なんて私は知らない。シリルがした今回のことについて、口さがない貴族達はすぐに噂を広める。たかが噂なんて思わないように。噂が命取りになる場合だってあるんだ。噂が広まって、私達までお前の同類と思われたらたまらない。マイソン伯爵家の評判に関わることだ。父上の意見に異論はない」
「僕も異論はないよ。僕の婚約者探しや就職とかの今後に影響があると困る。それにシリル兄上。兄上はこの家で一緒に住むつもりでいたみたいだけど、何をして過ごすつもりだったの?」
ハリーの質問に対して、答えに詰まった。
「へ……?」
「へ、じゃないでしょう。あのさ、貴族の二男・三男といった跡取りの長男以外の令息は、就職か結婚を機に家を出るものだ。妻と子を連れて実家に一緒に住むなんて聞いたことないよ。まさか働きもせず一緒に住むつもり? お金を伯爵家に入れず一緒に暮らすなんて単なる穀潰しじゃないか。なおさら同居なんて認められないよ。まぁ、そう言っても除籍だから関係ないけどね」
俺が働いたりしなくても父上や兄上が面倒をみてくれるんじゃないのか!?
「シリルより年下のハリーの方がよくわかっているじゃないか。弟にわかることがお前はわからない。お前は情けなくないのか? ……まぁ、よい。別に返事が聞きたい訳ではない。先程お前は除籍だと言ったが、除籍だから当然身分は平民となる。そして、そこの令嬢はお前の子を妊娠しているとのことだから、平民になったとしても妻とし、ちゃんと父親としての責任は持つこと。男としてのけじめだ」
「婚約者がいながら恋人を作って浮気。そしてその恋人を孕ませる。しかもお前の場合は家の家格はマイソン伯爵家よりエヴァンス侯爵家の方が上で、婿入りする立場だから明らかにあちらの方が力が上の立場だ。家格の件は抜きにしても、婚約者がいるのにそんな不義理をするなんて」
父上は一拍おいて続ける。
「お前はそこの令嬢と結婚して幸せになるなど夢見てるようだが、アイリーン嬢との婚約解消についての後始末やその後の影響を考えているか?」
「後始末?」
「ここに来る前、アイリーン嬢から私宛に早馬で手紙が届いた。手紙にはことの経緯や婚約解消はお前の有責での解消とすることが書かれていた。その上、お前達がエヴァンス侯爵家当主と侯爵夫人になり、お腹の中の子を跡取りにするからアイリーン嬢に侯爵家から出て行けという訳の分からないことまで言ったそうじゃないか。ちゃんと説明もあったのに、何をどうしたら元々侯爵家の人間ではないお前が当主になれるだなんて思えるのか不思議でならない。詳しい話は後日侯爵閣下と面会して話すが、エヴァンス侯爵家に対して慰謝料を払わなければならない。お前達二人の言い分は非常に不愉快だったようでその分の迷惑料も慰謝料に加算するそうだ。慰謝料はどうするつもりだ? お前が考えているよりずっと高額な慰謝料が請求されると思われるが」
「慰謝料? そう言えばそんなことアイリーンが言っていたな。それは父上が払ってくれるんでしょう?」
ちっ!
アイリーンめ、余計なことしやがって!
心の中で悪態をつく。
それにしても、アイリーンが言ってたこと、本当だったんだな。
てっきり口から出まかせかと思っていたが。
まぁ慰謝料はきっと父上がどうにかしてくれる。
自分の懐が痛まなければノーダメージだ。
「悪いが、私は全額払うつもりはない。親として監督不行き届きの責任は感じるが、もうお前は18歳だ。常識的にやってはいけないことをしない分別くらいは身についているだろうと思っていたが、これだ。4割~半分くらいはお前自身の金で払わないとお前がやったことの重大さが理解出来ないだろう」
「そんな……!」
当てが外れて俺はうろたえることしか出来ない。
「それにお前はこのマイソン伯爵家でそこの令嬢とお腹の子と私達と一緒に暮らすと考えているようだが、お前の居場所はこの家にはない。お前とは縁を切らせてもらう。マイソン伯爵家からお前を除籍する」
除籍!?
除籍されたら平民になってしまう!
まさかデビット兄上達も除籍に賛成なのか!?
「私も次期伯爵としてお前達二人をこの屋敷に住まわせることに反対ですし、除籍は賛成です」
期待もむなしくデビット兄上がきっぱり告げる。
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「こんな非常識なことをしでかした弟なんて私は知らない。シリルがした今回のことについて、口さがない貴族達はすぐに噂を広める。たかが噂なんて思わないように。噂が命取りになる場合だってあるんだ。噂が広まって、私達までお前の同類と思われたらたまらない。マイソン伯爵家の評判に関わることだ。父上の意見に異論はない」
「僕も異論はないよ。僕の婚約者探しや就職とかの今後に影響があると困る。それにシリル兄上。兄上はこの家で一緒に住むつもりでいたみたいだけど、何をして過ごすつもりだったの?」
ハリーの質問に対して、答えに詰まった。
「へ……?」
「へ、じゃないでしょう。あのさ、貴族の二男・三男といった跡取りの長男以外の令息は、就職か結婚を機に家を出るものだ。妻と子を連れて実家に一緒に住むなんて聞いたことないよ。まさか働きもせず一緒に住むつもり? お金を伯爵家に入れず一緒に暮らすなんて単なる穀潰しじゃないか。なおさら同居なんて認められないよ。まぁ、そう言っても除籍だから関係ないけどね」
俺が働いたりしなくても父上や兄上が面倒をみてくれるんじゃないのか!?
「シリルより年下のハリーの方がよくわかっているじゃないか。弟にわかることがお前はわからない。お前は情けなくないのか? ……まぁ、よい。別に返事が聞きたい訳ではない。先程お前は除籍だと言ったが、除籍だから当然身分は平民となる。そして、そこの令嬢はお前の子を妊娠しているとのことだから、平民になったとしても妻とし、ちゃんと父親としての責任は持つこと。男としてのけじめだ」
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