1 / 10
第1話
しおりを挟む
ブロワ公爵邸の見事な薔薇園に設置されたベンチにこの公爵邸の主たるジュリアンとその妻フルールは腰掛け、夫婦の時間を楽しんでいる。
「お話には聞いておりましたが、どれも素晴らしい薔薇ですわね。珍しい紫色の薔薇や青い薔薇まであって驚きましたわ」
「フルールが一番好きな花が薔薇だと聞いて、用意したのです。お気に召してもらえたようで何よりです」
ジュリアンはそう言って、美しい顔でふんわりと微笑む。
胸までの長さの淡い金色の髪を左耳の下でリボンで一つに緩くまとめ、いつもは少しつり目気味の青空のように澄んだ水色の瞳はフルールに対して愛を如実に語っていた。
ジュリアンの微笑みがあまりに美しくて、見つめられたフルールはつい赤面してしまう。
自分が好きな花を覚えていてくれただけでなく、珍しい色の薔薇まで見せてもらえてフルールは感激した。
そうやって二人は二人の世界に浸っていたところに、執事のクロヴィスが慌てた様子で駆けつけてくる。
「ご歓談中のところ、失礼致します。旦那様の幼馴染のキャシー様がお見えになられて。私が偶々席を外していた為に彼女に対応したのが新人の使用人で、屋敷内に通してしまい、旦那様と会うまでは帰らないと仰られております。大変申し訳ございませんが、応接室までお願い致します」
「わかった。会いたくないけれど、会わないと帰ってくれないなら仕方ない。その新人には私からも注意をするが、クロヴィスからも指導を頼む」
「かしこまりました」
ジュリアンはフルールに向き合う。
「フルール。今から私は客人に会わなくてはならなくなりました。大変申し訳ありませんが、フルールもついてきて下さいませんか? キャシーとは誓って男女の仲だったことはなく、むしろ迷惑な存在だったけれど、私が女性と二人で話をするのはフルールもモヤモヤすると思いますので」
「わかりましたわ。同席させて頂きます」
「ありがとうございます、フルール」
それから二人は薔薇園から応接室へ移動する。
道中、フルールはキャシーについてジュリアンから説明を受ける。
キャシー・ボナリー子爵令嬢。
年齢は16歳で、ジュリアンの4歳年下。
両親が商会を営んでおり、四年程前に両親が隣の国バンベルクに商会の支店を出店し、その立ち上げ・運営の為に一家で移住することになったが、恐らくその支店の経営が軌道に乗った為、もう彼女の両親がバンベルクにいる必要がなくなったのでこちらの国に戻ってくることになったのではないかとのこと。
応接室のドアをクロヴィスがノックして、入室する。
「旦那様と奥様のフルール様がお見えになられました」
「はーい! 入ってもらって!」
中にいた客人はジュリアンが入室するなり、フルールのことなど眼中になく、ダッシュでジュリアンの方へ駆けつけて抱きつく。
(え? クロヴィスはちゃんと私のことも妻のフルールと言いましたし、来てるって今言いましたわよね? 妻の前で夫に抱きつくなんて非常識ですわ)
ジュリアンに抱きついたキャシーは猫撫で声でねっとりと話しかける。
「ジュリアン。私、やっとこの国に戻って来れたわ! 婚約してから長らく待たせてごめんなさいね。さぁ、私と結婚しましょう!!」
「何を言ってるのですか? 私とキャシーが婚約関係にあったことはないですし、男女の仲だったこともありません。それに私はフルールと既に結婚しています」
抱きついてきたキャシーを強引に剥がしつつ、ジュリアンは冷ややかに告げる。
キャシーはジュリアンの返答に納得出来なかったのか、頬を膨らませる。
「じゃあ、そのフルールとやらと離婚して私と再婚しなさい!! これは命令よ!!」
(……何故あなたの言いなりに離婚しなくてはならないのかしら?)
「お話には聞いておりましたが、どれも素晴らしい薔薇ですわね。珍しい紫色の薔薇や青い薔薇まであって驚きましたわ」
「フルールが一番好きな花が薔薇だと聞いて、用意したのです。お気に召してもらえたようで何よりです」
ジュリアンはそう言って、美しい顔でふんわりと微笑む。
胸までの長さの淡い金色の髪を左耳の下でリボンで一つに緩くまとめ、いつもは少しつり目気味の青空のように澄んだ水色の瞳はフルールに対して愛を如実に語っていた。
ジュリアンの微笑みがあまりに美しくて、見つめられたフルールはつい赤面してしまう。
自分が好きな花を覚えていてくれただけでなく、珍しい色の薔薇まで見せてもらえてフルールは感激した。
そうやって二人は二人の世界に浸っていたところに、執事のクロヴィスが慌てた様子で駆けつけてくる。
「ご歓談中のところ、失礼致します。旦那様の幼馴染のキャシー様がお見えになられて。私が偶々席を外していた為に彼女に対応したのが新人の使用人で、屋敷内に通してしまい、旦那様と会うまでは帰らないと仰られております。大変申し訳ございませんが、応接室までお願い致します」
「わかった。会いたくないけれど、会わないと帰ってくれないなら仕方ない。その新人には私からも注意をするが、クロヴィスからも指導を頼む」
「かしこまりました」
ジュリアンはフルールに向き合う。
「フルール。今から私は客人に会わなくてはならなくなりました。大変申し訳ありませんが、フルールもついてきて下さいませんか? キャシーとは誓って男女の仲だったことはなく、むしろ迷惑な存在だったけれど、私が女性と二人で話をするのはフルールもモヤモヤすると思いますので」
「わかりましたわ。同席させて頂きます」
「ありがとうございます、フルール」
それから二人は薔薇園から応接室へ移動する。
道中、フルールはキャシーについてジュリアンから説明を受ける。
キャシー・ボナリー子爵令嬢。
年齢は16歳で、ジュリアンの4歳年下。
両親が商会を営んでおり、四年程前に両親が隣の国バンベルクに商会の支店を出店し、その立ち上げ・運営の為に一家で移住することになったが、恐らくその支店の経営が軌道に乗った為、もう彼女の両親がバンベルクにいる必要がなくなったのでこちらの国に戻ってくることになったのではないかとのこと。
応接室のドアをクロヴィスがノックして、入室する。
「旦那様と奥様のフルール様がお見えになられました」
「はーい! 入ってもらって!」
中にいた客人はジュリアンが入室するなり、フルールのことなど眼中になく、ダッシュでジュリアンの方へ駆けつけて抱きつく。
(え? クロヴィスはちゃんと私のことも妻のフルールと言いましたし、来てるって今言いましたわよね? 妻の前で夫に抱きつくなんて非常識ですわ)
ジュリアンに抱きついたキャシーは猫撫で声でねっとりと話しかける。
「ジュリアン。私、やっとこの国に戻って来れたわ! 婚約してから長らく待たせてごめんなさいね。さぁ、私と結婚しましょう!!」
「何を言ってるのですか? 私とキャシーが婚約関係にあったことはないですし、男女の仲だったこともありません。それに私はフルールと既に結婚しています」
抱きついてきたキャシーを強引に剥がしつつ、ジュリアンは冷ややかに告げる。
キャシーはジュリアンの返答に納得出来なかったのか、頬を膨らませる。
「じゃあ、そのフルールとやらと離婚して私と再婚しなさい!! これは命令よ!!」
(……何故あなたの言いなりに離婚しなくてはならないのかしら?)
606
あなたにおすすめの小説
「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。
あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。
「君の為の時間は取れない」と。
それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。
そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。
旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。
あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。
そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。
※35〜37話くらいで終わります。
初耳なのですが…、本当ですか?
あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た!
でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。
政略結婚だからと諦めていましたが、離縁を決めさせていただきました
あおくん
恋愛
父が決めた結婚。
顔を会わせたこともない相手との結婚を言い渡された私は、反論することもせず政略結婚を受け入れた。
これから私の家となるディオダ侯爵で働く使用人たちとの関係も良好で、旦那様となる義両親ともいい関係を築けた私は今後上手くいくことを悟った。
だが婚姻後、初めての初夜で旦那様から言い渡されたのは「白い結婚」だった。
政略結婚だから最悪愛を求めることは考えてはいなかったけれど、旦那様がそのつもりなら私にも考えがあります。
どうか最後まで、その強気な態度を変えることがないことを、祈っておりますわ。
※いつものゆるふわ設定です。拙い文章がちりばめられています。
最後はハッピーエンドで終えます。
【完結】新婚生活初日から、旦那の幼馴染も同居するってどういうことですか?
よどら文鳥
恋愛
デザイナーのシェリル=アルブライデと、婚約相手のガルカ=デーギスの結婚式が無事に終わった。
予め購入していた新居に向かうと、そこにはガルカの幼馴染レムが待っていた。
「シェリル、レムと仲良くしてやってくれ。今日からこの家に一緒に住むんだから」
「え!? どういうことです!? 使用人としてレムさんを雇うということですか?」
シェリルは何も事情を聞かされていなかった。
「いや、特にそう堅苦しく縛らなくても良いだろう。自主的な行動ができるし俺の幼馴染だし」
どちらにしても、新居に使用人を雇う予定でいた。シェリルは旦那の知り合いなら仕方ないかと諦めるしかなかった。
「……わかりました。よろしくお願いしますね、レムさん」
「はーい」
同居生活が始まって割とすぐに、ガルカとレムの関係はただの幼馴染というわけではないことに気がつく。
シェリルは離婚も視野に入れたいが、できない理由があった。
だが、周りの協力があって状況が大きく変わっていくのだった。
〖完結〗王女殿下の最愛の人は、私の婚約者のようです。
藍川みいな
恋愛
エリック様とは、五年間婚約をしていた。
学園に入学してから、彼は他の女性に付きっきりで、一緒に過ごす時間が全くなかった。その女性の名は、オリビア様。この国の、王女殿下だ。
入学式の日、目眩を起こして倒れそうになったオリビア様を、エリック様が支えたことが始まりだった。
その日からずっと、エリック様は病弱なオリビア様の側を離れない。まるで恋人同士のような二人を見ながら、学園生活を送っていた。
ある日、オリビア様が私にいじめられていると言い出した。エリック様はそんな話を信じないと、思っていたのだけれど、彼が信じたのはオリビア様だった。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
【完結】私の小さな復讐~愛し合う幼馴染みを婚約させてあげましょう~
山葵
恋愛
突然、幼馴染みのハリーとシルビアが屋敷を訪ねて来た。
2人とは距離を取っていたから、こうして会うのは久し振りだ。
「先触れも無く、突然訪問してくるなんて、そんなに急用なの?」
相変わらずベッタリとくっ付きソファに座る2人を見ても早急な用事が有るとは思えない。
「キャロル。俺達、良い事を思い付いたんだよ!お前にも悪い話ではない事だ」
ハリーの思い付いた事で私に良かった事なんて合ったかしら?
もう悪い話にしか思えないけれど、取り合えずハリーの話を聞いてみる事にした。
《完結》氷の侯爵令息 あなたが子供はいらないと言ったから
ヴァンドール
恋愛
氷の侯爵令息と言われたアラン。彼は結婚相手の伯爵令嬢にとにかく冷たい態度で接する。
彼女は義姉イライザから夫が子供はいらないと言ったと聞き、衝撃を受けるが気持ちを切り替え生きていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる