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逃走
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「や……きょう……さん……」
泣きながら八京の名を呼ぶナオキの肩にレイはそっと手を置いた。
「ナオキ……辛いだろうが早くここを離れよう。兵士たちが集まってくる」
「……うぅ……」
しかしナオキに動く気配はない。
「ナオキ……」
「オニイチャン……」
レイの言うことは分かる。留まればそれだけナオキ達のリスクは大きくなる。頭では理解しているが心が追い付いてこない。
パァン!!
悲しみにふけるナオキの頬を乾いた音と共に何かが当たった。
ベルだ。ナオキの正面にいたベルがナオキの頬を引っ叩いたのだ。
「しっかりしてください! ナオキさん。アナタが今やらなければならないのはこの方の傍で泣いて悲しむことですか? それでこの方は喜びますか!?」
ベルに叩かれた頬が今になってジンジンと痛みを帯びてきた。それと共にベルの言葉が時間差で頭に響いた。
ベルは八京を握っていた手を更に覆うように握った。ベルの手からは八京が失った温もりが伝わってくる。
「ナオキさんが悲しいのはわかります。でも、今やるべきことをやりましょう。悲しむのはその後でも遅くありません」
「ベルさん……」
「ナオキ。ベルの言う通りだ。いつまでもここにいてもこいつは喜びやしない。行こう!」
「レイ……」
「オニイチャン、イコウ! オニイチャンヒトリジャナイ!」
「クー……」
そうだ。悲しんでばかりいられない。こうしているうちに危険がドンドン迫ってくる。それはここにいる仲間にも及ぶ。そんなことあってはならない。
ナオキは八京の手を八京の胸元に置き、ベルを、そしてレイとクーを見た。
「皆。ありがとう。もう大丈夫だ」
「ナオキ」
「ナオキさん」
「オニイチャン」
皆がナオキの顔を見て落ち着きを取り戻したことを悟った。
ナオキは八京の手に握られていたネックレスを手に取り自身の首に付けた。
「行こう! 全員無事にここを脱出するんだ!」
「その通りだ」
レイが嬉しそうにナオキの肩を抱いた。
「いたぞ! まだ生きている! 捕らえろ!!」
100mほど先で戻ってきた兵士の叫び声がした。兵士の後ろには20人ほどの兵士もいる。
「やべ! 見つかった」
「よし! 逃げるぞ!」
兵士達に背を向け走り出そうとした。その時――
「ダメ! ソッチジャナイ!」
クーがナオキの背中を掴んで止めた。
「クー。そっちじゃないって……」
「コッチ! コッチ、ニゲル!」
掴んでいた手を離し、クーは別の方向を指差した。
「そっちって……町の方向じゃないか。どうして……」
「ダイジョウブ。シンジテ」
クーの瞳には迷いが無かった。
「……よし。こっちだ。クーを信じよう」
「マジかよ。本当に大丈夫か?」
「兄さま。迷ってる暇はありません。兵士が迫ってきます」
「あぁわかったよ! チビを信じるよ」
「よし! クー。道はわかるか?」
「ウン」
クーは町を目掛けて走り出した。3人はクーを先頭に走り出す。
「アイツ等町の方へ行ったぞ! 逃がすな!」
後ろからは兵士の叫び声がする。
ナオキ達は必死に逃げるが、クーが先導をしていて中々スピードが上がらない。
「おいチビ! もっとスピードを上げろよ! 兵士たちが近づいて来ちまう」
「コレ、ゼンリョク!」
「チィッ」
クーの後ろを走っていたナオキがクーの脇を抱き抱えた。
「こっちのほうが速いだろ! クー、指示をしてくれ」
「ワカッタ」
身体中痛みが走り、魔力が尽き、もうナオキも限界だった。だからって兵士たちは待ってはくれない。身体に鞭打ってナオキはひたすら走った。
泣きながら八京の名を呼ぶナオキの肩にレイはそっと手を置いた。
「ナオキ……辛いだろうが早くここを離れよう。兵士たちが集まってくる」
「……うぅ……」
しかしナオキに動く気配はない。
「ナオキ……」
「オニイチャン……」
レイの言うことは分かる。留まればそれだけナオキ達のリスクは大きくなる。頭では理解しているが心が追い付いてこない。
パァン!!
悲しみにふけるナオキの頬を乾いた音と共に何かが当たった。
ベルだ。ナオキの正面にいたベルがナオキの頬を引っ叩いたのだ。
「しっかりしてください! ナオキさん。アナタが今やらなければならないのはこの方の傍で泣いて悲しむことですか? それでこの方は喜びますか!?」
ベルに叩かれた頬が今になってジンジンと痛みを帯びてきた。それと共にベルの言葉が時間差で頭に響いた。
ベルは八京を握っていた手を更に覆うように握った。ベルの手からは八京が失った温もりが伝わってくる。
「ナオキさんが悲しいのはわかります。でも、今やるべきことをやりましょう。悲しむのはその後でも遅くありません」
「ベルさん……」
「ナオキ。ベルの言う通りだ。いつまでもここにいてもこいつは喜びやしない。行こう!」
「レイ……」
「オニイチャン、イコウ! オニイチャンヒトリジャナイ!」
「クー……」
そうだ。悲しんでばかりいられない。こうしているうちに危険がドンドン迫ってくる。それはここにいる仲間にも及ぶ。そんなことあってはならない。
ナオキは八京の手を八京の胸元に置き、ベルを、そしてレイとクーを見た。
「皆。ありがとう。もう大丈夫だ」
「ナオキ」
「ナオキさん」
「オニイチャン」
皆がナオキの顔を見て落ち着きを取り戻したことを悟った。
ナオキは八京の手に握られていたネックレスを手に取り自身の首に付けた。
「行こう! 全員無事にここを脱出するんだ!」
「その通りだ」
レイが嬉しそうにナオキの肩を抱いた。
「いたぞ! まだ生きている! 捕らえろ!!」
100mほど先で戻ってきた兵士の叫び声がした。兵士の後ろには20人ほどの兵士もいる。
「やべ! 見つかった」
「よし! 逃げるぞ!」
兵士達に背を向け走り出そうとした。その時――
「ダメ! ソッチジャナイ!」
クーがナオキの背中を掴んで止めた。
「クー。そっちじゃないって……」
「コッチ! コッチ、ニゲル!」
掴んでいた手を離し、クーは別の方向を指差した。
「そっちって……町の方向じゃないか。どうして……」
「ダイジョウブ。シンジテ」
クーの瞳には迷いが無かった。
「……よし。こっちだ。クーを信じよう」
「マジかよ。本当に大丈夫か?」
「兄さま。迷ってる暇はありません。兵士が迫ってきます」
「あぁわかったよ! チビを信じるよ」
「よし! クー。道はわかるか?」
「ウン」
クーは町を目掛けて走り出した。3人はクーを先頭に走り出す。
「アイツ等町の方へ行ったぞ! 逃がすな!」
後ろからは兵士の叫び声がする。
ナオキ達は必死に逃げるが、クーが先導をしていて中々スピードが上がらない。
「おいチビ! もっとスピードを上げろよ! 兵士たちが近づいて来ちまう」
「コレ、ゼンリョク!」
「チィッ」
クーの後ろを走っていたナオキがクーの脇を抱き抱えた。
「こっちのほうが速いだろ! クー、指示をしてくれ」
「ワカッタ」
身体中痛みが走り、魔力が尽き、もうナオキも限界だった。だからって兵士たちは待ってはくれない。身体に鞭打ってナオキはひたすら走った。
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