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第3章

第287話 分岐点の街

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俺達が参加している商業旅団の馬車隊、と、ラドロが護衛しているところ、ロアン君が護衛しているところの馬車隊はそれぞれ別なので出発時間もばらけるのかと思っていたのだが、
どういうわけか、商業旅団の馬車隊が先頭になって、その後に街に足止めとなっていた馬車隊が、間を空けずに連なって行くことになったらしい。

「除雪魔導士の数が多いからかな。」

王都を出発する時みたいに、高々と雪を打ち上げるのを見上げて俺がいうと、ジョセフィンが頷いた。

「そうですね。‥‥他の馬車隊は未だ不安があるのかもしれないですけど。」
「不安?」
「街道の先にはまだアイスリザードが出るかもしれませんし。」
「ああ‥‥。」

確かに押し寄せて来たアイスリザードは遮断したけど、街道内に入り込んだアイスリザードを全て討伐したわけじゃない。
砦門から先の道は主街道ではなかったのまって、アイスリザードが残っているのを放置しているし、
主となっている街道だって、アイスワームの脅威がなくなったけど、アイスリザードについては、街道の先まで誰かが行って確認したわけじゃないのだ。
先頭の馬車に陣取っている除雪魔導士達が、雪を払いのけながら進み、アイスリザードがいたら初動は雪の壁で撥ね除け、後続の護衛冒険者が出動して倒すということに
なっている。

今までもその方針で進めば街に足止めもなかったのではないかとも思うけど、
アイスリザードが街道に侵入して来た原因がわかっていなかったり、アイスリザード自体が急所を狙わないとかなり頑丈で、先頭馬車で除雪魔導士がはね飛ばしても
討伐しきれないと後続の馬車が襲撃される可能性があり危険と判断されたらしい。

本当なら、先に街に到着していた馬車隊がいたのだから、その場車隊が前を往くのが当然なのだが、商業旅団の除雪魔導士が、討伐に参加しただとか、
といった噂と、商業旅団が馬車隊の中では規模が大きいということもあって、後ろについて言った方が安全だと判断されたみたいだ。

それってある意味オンブ便というか、戦闘力の便乗な状態になってはいるのだが、ドルートルさんは特に意義を申し立てたりはしていないようだ。
非常時だからかな。
それとも貸しを作っているのかもしれない。

細かい事情はわからないけど、馬車隊は長い列を連ねているにしては短めの休憩を取った後、昼過ぎにネーダベルクに到着した。
ネーダベルクでロアン君達の護衛依頼が達成となるのだが、ロアン君達がラドロと合流するには昼休憩の間に護衛依頼の達成報告を冒険者ギルドに提出しておく必要があるらしくて、
かなり慌ただしかった。
さらに、魔導科クラスのメンバーのうち女子二人はこの街で別の便に乗り換えるらしい。
もっと早く行ってくれれば、と思いつつ昼食の場を手配した。旅の間、基本的に宿が一緒でない時以外は魔導科クラスとは食事は別々にしていたのだが
アイスリザード騒動で落ち着きがない時間を過ごした後だったしね。

[大人数なのに良く席が確保できたっぺ。」
「だすだす。」

手配したのは、商人向けの宿の中ではちょっと高級な場所で、商人が会合などでつかったりする場所。宿の食堂と同じフロアにあって、頼めばそこで食事もできるのだ。

「しかも貸し切りなんて‥‥。」
「こんな場所があったのね。」
「‥‥もしかして高いんじゃ‥‥。」

魔導科クラスのメンバーは概ね満足そうだったのだが、クレイリーくんだけ不安そうな顔をしていた。

「大丈夫だよ。食事代だけだから。」

街に滞在できる時間が限られているから、あらかじめメニューは決めさせてもらっていて皆同じものだ。
だいたいの彼らの昼食の予算は知っていてその範囲内で収まっているはずだ。
値段をそっと告げると、ほっとしたのかクレイリー君の口もとが緩んだ。
ネーダベルクから、別のルートとなるのは、メイサ・ハーン嬢とエリーザ・フィッシャー嬢だ。乗り換えの馬車の便のチケットは取れているのかと聞いたら、
この街まで連なって来た別の馬車隊の乗り合い馬車に乗れそうだとのことだ。

「ふむ。ハーン領とフィッシャー領は同じ方面であるが、途中でそれぞれ一人になるであるか?」

マーギットさんが、令嬢二人に声をかけた。あまり表情を変えていないが、心配をしているようだ。
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